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澄花と司 編
司は澄花に嫉妬される
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旧校舎の一角に位置する生徒会室。その扉を開けて足を踏み入れると、中世西欧を思わせるような内観が視界に広がる。
無数の書類が並べられた棚が連なって置かれ、その隣の壁には先代生徒会長が仕入れたらしい額縁が彩って飾られる。
一般階級からすれば非日常的に思える空間。ティーカップと茶葉が収納された生活感のある食器棚に目を瞑れば、まるで貴族の世界に飛び込んだ錯覚に陥るだろう。
中央には革製のソファが中央のテーブルを介して向き合い、更にその先では客人を迎え入れるようにアンティーク調の机と椅子が置かれている。
生徒会長の特等席であるその場所は部屋の扉と向かい合わせになっており、誰かが訪ねてきた際にはすぐに対応できるよう配置されているのだ。
しかし、今、生徒会室にいる人物はただ一人。
ソファの一角に腰掛け、膝の上に両肘を置き、頬に両手を添えながらぼんやりと黄昏れている。
その視線の先にあるのはティーポット。湯気と共に香ばしい匂いが部屋中に広がるものの、彼女は気にする余裕なく思索に耽っていた。
いや、思索に耽ると表現するにはかなり語弊がある。今の彼女の頭を支配しているのは、今朝の自分がいかに愚かな行為をしてしまったのかという自責の念だけだった。
放心したまま、彼との別れ際にした自らの行いが何度も脳内再生され、そして次第に口元に力が籠っていく。
熱くなる顔に気づいた瞬間、押さえつけていた感情が爆発。沸騰したように内側から溢れ出してしまう。
「うぁあああああ~~~~~~っ!?」
ぶり返してきた羞恥心に襲われ、澄花は堪らず両手で顔全体を覆う。
次いでソファに横たわると、ジタバタと上半身を身動ぎさせてしまうのであった。
「(私、なんで司にあんなことしちゃったの!? 身体を寄せて耳元で囁くなんて……まるで私が誘惑してるみたいじゃない! 違うのに! 別れるのが寂しかっただけで、はしたないことがしたかったわけじゃないのに……!)」
あの時の自分はどうかしていた。
司がいてくれる安心感とこれから放課後まで離れ離れになる寂しさのせいで、理性と呼べるブレーキが全て壊れてしまっていた。
以前までならいくらでも我慢できていたのに、どうして今の自分はこの程度の自制すらできないのだろうか。
「(今朝だってキ、キスしちゃったし……それも三回も……。これじゃあ、盛り過ぎって言われても言い訳できない……っ!)」
どうしようどうしようと動揺しているうちに、気がつけば司が生徒会室にやってくる時間。
逸る気持ちを落ち着かせ、どうにかして冷静さを取り繕うとする。
「(だ、大丈夫。これまでずっと恋心を隠していられた実績があるんだから、大丈夫に決まってる……)」
既に形骸化している実績に身を委ね、澄花はゆっくり深呼吸をする。
スーハ―スーハ―と繰り返して、ようやく落ち着いたと思ったその瞬間―――
「―――失礼します」
「ひゃうんっっ!?!?」
「うお! び、びっくりした……」
突然開かれた扉と共に現れた司に、澄花は思わず驚愕の声を上げてしまった。
「珍しいな、澄花が奇声を上げるなんて……」
「何のことでしょうか? 私には理解しかねます」
「そのメイド口調止めろ。しらばっくれてもお見通しなんだよ」
「うぅ……だって急に司が来たから……っ」
「ちょちょちょ! い、いきなり泣くなって!?」
入室早々に情緒不安定な澄花の介護を迫られた司。慌てふためきながらもどうにか彼女を落ち着かせようと画策するが、内心では動悸が収まらずにいた。
それもそうだろう。今朝の澄花による大胆な行為に加え、その後の雅との出来事。
この場をどう乗り切るか、司の脳内はそれしか考えられなかったのだ。
「(やっべぇッ!? 他の女子の大事なところ触ったって悟られないよな? 大丈夫だよな!? )」
内心バックバクだが、目の前に座りながら潮垂れる澄花は自分のことで精一杯。大丈夫だ、多分、きっと―――
「……他の女の匂い?」
「―――……ッ!?!?」
やば!? き、気づかれた!?
「え、どういうこと……? なんで司から女の匂いがするの……?」
「何言ってんだよ? 貴族層の奴らって香水の匂いが結構強いだろ? だから近づかなくてもブレザーに匂いが付いちゃったんだろうな~あははは」
すごい良い訳になってしまったが、事実として貴族層の生徒らは匂いに敏感だった。
澄花はそこまで貴族層に精通しているわけではない。このまま押し通そうとした。
が、司は忘れていた。澄花が大の香水好きだということを。
「柑橘系でも樹脂系でもない、明らかに香料じゃない香り……成分的に考慮しても適切な配合じゃない。しかもこれって―――」
「(え、怖。呪文じゃん)」
思わず身じろぐほどの高速詠唱。ブツブツと目を見開いて呟く姿は、とてもじゃないが恐怖を覚えた。
しかしこれはまだ序章に過ぎない。
解読を終えた澄花は鬼の形相で司を睨む。そこに涙の面影は一切ない。まさしく鬼だった。
「……司? 香水なんて嘘ついたのかな?」
「あ、と、その……ご、ごめんなさい」
「素直に白状したら許してあげたものの……ねえ?」
「ひぃッ!?」
突然にっこりと笑う澄花に思わず悲鳴が出てしまう。
めっちゃ怖い。鷹司以上に怖い。
全身の毛穴という毛穴から汗が噴き出すが、青ざめていた司にはもはや感覚がマヒしてそれどころではなかった。
「……はぁ」
しかし、澄花はため息をついていじけてしまう。
鬼の形相は何処へやら、毛先をいじりながら明らかに不貞腐れていた。
「お、怒らないの?」
「別に……司が裏切るなんて全く思ってないし。それに、私はちゃんと信じてるから」
とはいうものの、依然として不貞腐れている様子の澄花。
未だに不機嫌な彼女を見て、司は一瞬困惑してしまうが、すぐにハッとして答えた。
「もしかして……嫉妬してるの?」
「~~~っ!」
図星だったらしい。澄花はすごい可愛い顔になった。
「なんでそういう言い方……司ってデリカシーがないの!?」
「ご、ごめんって……あ、ちょっ、痛! な、殴らないで!」
「最悪! もう司とは喋んない!」
その言葉を最後に澄花にそっぽ向かれてしまう。
完全に怒らせてしまい、結局この日は彼女をなだめるために時間を割いたのであった。
無数の書類が並べられた棚が連なって置かれ、その隣の壁には先代生徒会長が仕入れたらしい額縁が彩って飾られる。
一般階級からすれば非日常的に思える空間。ティーカップと茶葉が収納された生活感のある食器棚に目を瞑れば、まるで貴族の世界に飛び込んだ錯覚に陥るだろう。
中央には革製のソファが中央のテーブルを介して向き合い、更にその先では客人を迎え入れるようにアンティーク調の机と椅子が置かれている。
生徒会長の特等席であるその場所は部屋の扉と向かい合わせになっており、誰かが訪ねてきた際にはすぐに対応できるよう配置されているのだ。
しかし、今、生徒会室にいる人物はただ一人。
ソファの一角に腰掛け、膝の上に両肘を置き、頬に両手を添えながらぼんやりと黄昏れている。
その視線の先にあるのはティーポット。湯気と共に香ばしい匂いが部屋中に広がるものの、彼女は気にする余裕なく思索に耽っていた。
いや、思索に耽ると表現するにはかなり語弊がある。今の彼女の頭を支配しているのは、今朝の自分がいかに愚かな行為をしてしまったのかという自責の念だけだった。
放心したまま、彼との別れ際にした自らの行いが何度も脳内再生され、そして次第に口元に力が籠っていく。
熱くなる顔に気づいた瞬間、押さえつけていた感情が爆発。沸騰したように内側から溢れ出してしまう。
「うぁあああああ~~~~~~っ!?」
ぶり返してきた羞恥心に襲われ、澄花は堪らず両手で顔全体を覆う。
次いでソファに横たわると、ジタバタと上半身を身動ぎさせてしまうのであった。
「(私、なんで司にあんなことしちゃったの!? 身体を寄せて耳元で囁くなんて……まるで私が誘惑してるみたいじゃない! 違うのに! 別れるのが寂しかっただけで、はしたないことがしたかったわけじゃないのに……!)」
あの時の自分はどうかしていた。
司がいてくれる安心感とこれから放課後まで離れ離れになる寂しさのせいで、理性と呼べるブレーキが全て壊れてしまっていた。
以前までならいくらでも我慢できていたのに、どうして今の自分はこの程度の自制すらできないのだろうか。
「(今朝だってキ、キスしちゃったし……それも三回も……。これじゃあ、盛り過ぎって言われても言い訳できない……っ!)」
どうしようどうしようと動揺しているうちに、気がつけば司が生徒会室にやってくる時間。
逸る気持ちを落ち着かせ、どうにかして冷静さを取り繕うとする。
「(だ、大丈夫。これまでずっと恋心を隠していられた実績があるんだから、大丈夫に決まってる……)」
既に形骸化している実績に身を委ね、澄花はゆっくり深呼吸をする。
スーハ―スーハ―と繰り返して、ようやく落ち着いたと思ったその瞬間―――
「―――失礼します」
「ひゃうんっっ!?!?」
「うお! び、びっくりした……」
突然開かれた扉と共に現れた司に、澄花は思わず驚愕の声を上げてしまった。
「珍しいな、澄花が奇声を上げるなんて……」
「何のことでしょうか? 私には理解しかねます」
「そのメイド口調止めろ。しらばっくれてもお見通しなんだよ」
「うぅ……だって急に司が来たから……っ」
「ちょちょちょ! い、いきなり泣くなって!?」
入室早々に情緒不安定な澄花の介護を迫られた司。慌てふためきながらもどうにか彼女を落ち着かせようと画策するが、内心では動悸が収まらずにいた。
それもそうだろう。今朝の澄花による大胆な行為に加え、その後の雅との出来事。
この場をどう乗り切るか、司の脳内はそれしか考えられなかったのだ。
「(やっべぇッ!? 他の女子の大事なところ触ったって悟られないよな? 大丈夫だよな!? )」
内心バックバクだが、目の前に座りながら潮垂れる澄花は自分のことで精一杯。大丈夫だ、多分、きっと―――
「……他の女の匂い?」
「―――……ッ!?!?」
やば!? き、気づかれた!?
「え、どういうこと……? なんで司から女の匂いがするの……?」
「何言ってんだよ? 貴族層の奴らって香水の匂いが結構強いだろ? だから近づかなくてもブレザーに匂いが付いちゃったんだろうな~あははは」
すごい良い訳になってしまったが、事実として貴族層の生徒らは匂いに敏感だった。
澄花はそこまで貴族層に精通しているわけではない。このまま押し通そうとした。
が、司は忘れていた。澄花が大の香水好きだということを。
「柑橘系でも樹脂系でもない、明らかに香料じゃない香り……成分的に考慮しても適切な配合じゃない。しかもこれって―――」
「(え、怖。呪文じゃん)」
思わず身じろぐほどの高速詠唱。ブツブツと目を見開いて呟く姿は、とてもじゃないが恐怖を覚えた。
しかしこれはまだ序章に過ぎない。
解読を終えた澄花は鬼の形相で司を睨む。そこに涙の面影は一切ない。まさしく鬼だった。
「……司? 香水なんて嘘ついたのかな?」
「あ、と、その……ご、ごめんなさい」
「素直に白状したら許してあげたものの……ねえ?」
「ひぃッ!?」
突然にっこりと笑う澄花に思わず悲鳴が出てしまう。
めっちゃ怖い。鷹司以上に怖い。
全身の毛穴という毛穴から汗が噴き出すが、青ざめていた司にはもはや感覚がマヒしてそれどころではなかった。
「……はぁ」
しかし、澄花はため息をついていじけてしまう。
鬼の形相は何処へやら、毛先をいじりながら明らかに不貞腐れていた。
「お、怒らないの?」
「別に……司が裏切るなんて全く思ってないし。それに、私はちゃんと信じてるから」
とはいうものの、依然として不貞腐れている様子の澄花。
未だに不機嫌な彼女を見て、司は一瞬困惑してしまうが、すぐにハッとして答えた。
「もしかして……嫉妬してるの?」
「~~~っ!」
図星だったらしい。澄花はすごい可愛い顔になった。
「なんでそういう言い方……司ってデリカシーがないの!?」
「ご、ごめんって……あ、ちょっ、痛! な、殴らないで!」
「最悪! もう司とは喋んない!」
その言葉を最後に澄花にそっぽ向かれてしまう。
完全に怒らせてしまい、結局この日は彼女をなだめるために時間を割いたのであった。
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