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第7章 少年パティシエは世界を変える
第7話 七つの海が待っている
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<京旗? たまにはおねーちゃんのゆーこと、聞きなさい?>
――うわーうわーうわー!!
はばかりながら、あの声が耳について、こっぱずかしくって頭を抱えてごろごろと転がり回ってしまう。
アッタのマンションで、何故かときどき発狂したようにうわうわと奇声をあげて頭を抱えている主人を、ムサはまた、びくびくと物陰から見守っていた。
結局、身をよじって七転八倒したあげく、京旗は兆胡に電話をかけた。
『ふぅうううう~ん? いいのぉ~~~お? まっ、京旗くんの人生だから、あたしは応援するだけだけどぉ?』
その後も、それでもゴロゴロ、ジタバタを続け、数日後、竹邑京旗は、空港ではなく海港に、立っていた。
「負けた……負けたっすよ……ぜぇはぁ……」
何故か気分は負け犬である。
沖に浮かぶ、サファイア・プリンセス号の優美で巨大な船影。その船影から、小さな連絡挺が荒波に航跡を流して近付いてくる。
――くっそう、このクソ女、いつか絶対勝ってやる!
横を見た。
海風に髪を煽らせて、魂の上では今でも魚屋の孫娘である十七歳が、肩に例の包丁サックを背負って立っている。さっぱりした顔だ。
海を眺めて横顔だったのが、見ている京旗に気付いて視線を転じ、へらり、と笑いかけた。
何かをはたと思い出したように、
「あ、そーだ。あのとき、何か言おうとしたか?」
――よくまあ気楽に聞いてくれるぜッ!
「してないしてないしてないしてないしてないっすよッ!!」
「そか、ならよかった♪」
ムキになって否定する京旗に、あゆは疑うこともせず、無邪気な極上の笑顔をひろげた。
後ろでわあわあと声がすると思ったら、見送りの黒山の人の群れ。日本人やワール国人、老若男女、ごちゃごちゃ、わいわいと手を振っている。笑顔だらけだ。
熱帯の陽光が、まぶしく世界を照らしている。
くっきりと、輪郭があざやかにうかびあがっている。
七つの海が、五つの大陸が、彼らの手のひらの上にあるかのようだった。
<END>
――
この物語はフィクションであり、実在の団体・個人・事件とは一切関係ありません
――
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。
「第5回 キャラ文芸大賞」に応募しています。ぜひ投票をお気軽にお願いします
感想もひとことお寄せ戴けると作者の創作モチベーションがアップします。
感想くれる人、大好き。
ーーー
次の作品は、『聖女館の方程式』というタイトルです。準備ができましたら、アップしていきます。ぜひぜひ検索など。
応援よろしくお願いします
面白い物語を書いていきますので、どうぞ読んでくださいね
――うわーうわーうわー!!
はばかりながら、あの声が耳について、こっぱずかしくって頭を抱えてごろごろと転がり回ってしまう。
アッタのマンションで、何故かときどき発狂したようにうわうわと奇声をあげて頭を抱えている主人を、ムサはまた、びくびくと物陰から見守っていた。
結局、身をよじって七転八倒したあげく、京旗は兆胡に電話をかけた。
『ふぅうううう~ん? いいのぉ~~~お? まっ、京旗くんの人生だから、あたしは応援するだけだけどぉ?』
その後も、それでもゴロゴロ、ジタバタを続け、数日後、竹邑京旗は、空港ではなく海港に、立っていた。
「負けた……負けたっすよ……ぜぇはぁ……」
何故か気分は負け犬である。
沖に浮かぶ、サファイア・プリンセス号の優美で巨大な船影。その船影から、小さな連絡挺が荒波に航跡を流して近付いてくる。
――くっそう、このクソ女、いつか絶対勝ってやる!
横を見た。
海風に髪を煽らせて、魂の上では今でも魚屋の孫娘である十七歳が、肩に例の包丁サックを背負って立っている。さっぱりした顔だ。
海を眺めて横顔だったのが、見ている京旗に気付いて視線を転じ、へらり、と笑いかけた。
何かをはたと思い出したように、
「あ、そーだ。あのとき、何か言おうとしたか?」
――よくまあ気楽に聞いてくれるぜッ!
「してないしてないしてないしてないしてないっすよッ!!」
「そか、ならよかった♪」
ムキになって否定する京旗に、あゆは疑うこともせず、無邪気な極上の笑顔をひろげた。
後ろでわあわあと声がすると思ったら、見送りの黒山の人の群れ。日本人やワール国人、老若男女、ごちゃごちゃ、わいわいと手を振っている。笑顔だらけだ。
熱帯の陽光が、まぶしく世界を照らしている。
くっきりと、輪郭があざやかにうかびあがっている。
七つの海が、五つの大陸が、彼らの手のひらの上にあるかのようだった。
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――
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