15 / 40
第一章
12
しおりを挟むこの場の空気が険悪になってると、気不味そうに聖職者の服を着た男性が近付いてくる。
「あの~、準備が整ったのですが洗礼を行っても宜しいでしょうか?」
「あぁ、空気が悪くて済まないね。始めてくれ」
う~ん。
聖職者の階級ってどんなだったかな?
司祭が一般の聖職者で、その上が司教だっけ?
神父も居るよね?
他の宗教?
それとも司教より上の立場を神父って言うの?
分からない………
今の私は喋れないから問題ないかな?
周りの様子を見てたらわかるよね?
神殿の中に入るとステンドグラスに光が当たり、とても神秘的な風景で圧倒される。
「お待ちしておりました。聖女様、ジェイミー殿下、本日はおめでとう御座います。お2人のご息女の洗礼に携わる事が出来るこの日を待ちわびておりました」
「司教様大袈裟ですよ。あまり期待し過ぎだら娘が可哀想です。私は聖女ですけど、娘は何の取り柄もない普通の娘でしょうから、この子にプレッシャーを与えないであげて欲しいです」
お母さんの言葉でこの場が一瞬でピリッとする。
お父さんは深く頷いてるけど、他の人達は不愉快に感じたのか険しい顔をする。
確かにお母さんの発言は色々と問題だよね。
周りに期待されすぎて、潰れてしまわないか心配してるようにも聞こえるけど、自分と違って子供には価値がないって言ってるようにも聞こえる。
お母さんが私に関心があるとは思えないから、絶対に後者だよね。
お母さんって絶対に周りにマウントをするタイプだよね。
聖女って身分がお母さんを付け上がらせてる気がする。
この人を見てると、この人の他の子供たちが心配になる。
兄か姉か分からないけど3人いるらしいから、その子達の精神面が心配になる。
私みたいに転生者なら諦めることも出来るけど、普通の子供だったら母親を求めるよね?
母親の愛情が欲しいのに、子供に愛情を持てないこの人が親では可哀想過ぎる。
そう考えると、私は前世の記憶を持ったまま転生して良かった。
「ご息女がどんな能力を持ってるかは、神のみぞ知ってることですから、諦めるのはまだ早いですよ。それでは洗礼を始めましょうか」
司教様は雰囲気を変える為に、明るく提案をしてくれる。
この人とても良い人だ。
多分ここにいる聖職者の中で一番偉い人だよね?
ファンタジーとかで聖職者が出てくるけど、司教様の性格って2パターンに分類される気がする。
神様に一生を捧げて神様の下僕になってる人と、神様の名前を使って金儲けや人を操ったりする人のイメージがある。
この人は絶対に良い人だよね。
「洗礼ってどんな事をするんですか~、時間掛かったりするの?」
「聖女様もこの世界に来た時にしたと思いますが、泉に体を沈めるんです」
「あぁ~、覚える。とても綺麗な泉だよね。あれ以来1度も行ってないけど、まだ見れるなんて嬉しい~」
泉に体を沈めるの!?
まさか1人でじゃないよね?
ミリーに抱っこをされながら、私達はどんどん神殿の奥に進むと、部屋の中に泉があった。
部屋の中に何で泉があるの?
「それでは姫様だけをこの泉に入れて手を離してください」
「だ、大丈夫何ですか!?姫様は泳げませんので、補助がないと溺れてしまいます!!」
「大丈夫ですよ。この泉は特別なんです。この泉で王族が死ぬことは絶対にありません。ですから安心して姫様を泉に入れてください」
「………はい」
〝はい〟じゃないから!!
溺れるって!!
まだ死にたくない!!
『ばぁ~~~、いにゃ~~』
必死にミリーにしがみ付いて抵抗をする。
「姫様」
ミリーは私の悲痛な叫びに動揺をする。
私を絶対に離さないで~
126
あなたにおすすめの小説
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる