41 / 143
第一章
40
しおりを挟むお母様の勝手な言い分に、お父様の顔がどんどん怖くなっていく。
お祖父様とお祖母様はさっきより顔色が悪い気がする。
「そんなにその娘が大事なら2人だけで暮せば良い。私達はオリガと縁を切ると決めている。これは私だけの意見ではない。イリーナとセミュンの願いでもある。お前はそれだけ2人を傷付けていたんだ。自覚しろ」
「何でそんなに冷たいことを言うの?ずっと家族として仲良くやってこれたでしょ?」
「それはその娘が来る前までの話だろ。その娘が来てからのお前は、家族の気持ちを蔑ろにし過ぎたんだ。我慢にも限度があるんだよ。お義父さん達には申し訳ありませんがこれ以上はもう無理です。私は妻より子供たちを優先したい」
お父様は言い切ると、私とお兄様の手をぎゅっと握ってくれる。
自分が居るから大丈夫だと言ってくれてるみたいで、不安だった気持ちが落ち着いていくのがわかった。
「イワン殿の選択は間違ってない。子供を第一に考えられない母親は必要ない。貴族としてそうしないといけない場面はあるかもしれないが、今回はオリガの私情で行動してるだけだから全く関係ない」
「そう言ってもらえると助かります。それと近いうちに噂が回ってくると思いますけど、イリーナが王太子の婚約者候補を辞退することになりました。イリーナの希望です」
「えっ!?あんなに夢中だったのに、イリーナは本当にそれで良いの?後悔したりしない?貴女なら王太子妃にもなれると私は思うわよ?」
凄い心配されてる………、
確かに前の私は王太子様に夢中だったからな。
流石に拗らせたりして周りに迷惑をかけたりはしなかったけど、盲目的に王太子様を好きだったのよね。
駄目なところを見ても、私がフォローしてあげないとって使命感に燃えていた。
何であんなに邪険にされていたのに、ずっと夢中だったのか前の私の唯一理解できない部分よね。
「目が覚めたといいますか………、何であんなに好きだったのか分からなくなってしまいました。公爵家としても王太子妃になっても、そこまで利点がないので、お父様と相談して辞退することにしました」
我が家はそこまで王太子妃って身分に執着してないのよね。
今の地位を維持できれば問題ない。
王族との関係も悪くないですし、お父様は宰相補佐だけど宰相になれなかったわけではない。
宰相の補佐をするほうがやり甲斐を感じることと、補佐の仕事のほうが家族との時間を作りやすいって考えてくれてることを知っている。
補佐の仕事でも忙しい時期は家に帰れないことはよくあるけどね。
「そんなの聞いてない!!イリーナがミハイルの婚約者じゃなくなったら、私はどうすればいいのよ!!接点がなくなるじゃない」
「何を言ってますの?私と王太子樣が婚約してようがしてなかろうが貴女には関係ないでしょ。貴女はこれからお母様と一緒にここから出て行かないといけないのですから。それと王族を呼び捨てにするなんて不敬ですわ。」
常識がないにも程があるわ。
婚約者候補を辞退することで、リリヤがここまで動揺するとは思わなかったわね。
「関係なくない!!何でこんなにおかしいことばかり起こるの!!今の時期にイリーナが婚約者候補から消えるなんておかしい。それに私がこの家から追い出されるなんて絶対にあり得ない!!私はこの家からミハイルが通ってる学園に通うはずなのに!!」
転生者確定ね。
予想通りだけどこの予想はハズレてほしかったな。
「妻と離縁するのに君がここに住み続けるわけ無いだろ。君には一緒に出て行ってもらう。私達が君を世話する理由はないからな」
「だったら離縁しなければ良い、そしたら皆が幸せになれるわ。私もこの家に居られるし、子供から母親を奪うなんていけないと思います」
「あの子達から母親を奪う原因になったお前が言うのか?オリガは元から人に甘いところはあったが、あそこまで話が通じず、子供を蔑ろにすることは今までなかった。お前が来てからオリガは変わってしまったんだ!!他人のお前が意見して良い話ではない!!」
お父様がこんなに怒ってるの初めて見たかもしれない。
本当はお父様もお母様と離縁したくなかったのかもしれない、だけど今のお母様では公爵家に迷惑かける未来しか想像できない、それに私とお兄様が今よりも傷付くことになるかもしれないから、私達のために離縁することを決めてくれたんだよね。
「お父様もう良いよ。あの子に何を言っても変わらないですわ。本人に理解する気持ちがないのだから時間の無駄です。私達にはお父様が居るからそれだけで良いです」
私にはお父様とお兄様がいる。
それだけで満足だわ。
お父様は嫌がるお母様に無理やり離縁届と親権放棄にサインを書かせる。
往生際悪く抵抗するお母様とリリヤを、お祖父様とお祖母様が責任持って連れて帰ってくれた。
二人が今後どうなるか知らないけど、後のことはお祖父様達に任せるしかない。
私とお母様達はもう他人なのだから
1,026
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
必要ないと言われたので、私は旅にでます。
黒蜜きな粉
ファンタジー
「必要ない」
墓守のリリアはある日突然その職を失う。
そう命令を下したのはかつての友で初恋相手。
社会的な立場、淡い恋心、たった一言ですべてが崩れ去ってしまった。
自分の存在意義を見失ったリリアに声をかけてきたのは旅芸人のカイだった。
「来る?」
そうカイに声をかけられたリリアは、旅の一座と共に世界を巡る選択をする。
────────────────
2025/10/31
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞をいただきました
お話に目を通していただき、投票をしてくださった皆さま
本当に本当にありがとうございました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる