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第五章
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緊張して顔をあげられないで居ると、向かいの席からため息が聞こえて私の体がビクッとする。
恐る恐る顔をあげると、ユーリ様が片手で顔を覆って居た。
「ユーリ様?」
「ごめん。予想もしてなかった話を聞いて混乱している」
「そうですわよね。簡単に信じてもらえないと思ってます。でもその可能性があると思って知ってもらいたいです」
ユーリ様の隣に座ってるお父様をチラッ見ると、お父様は難しい顔をしたまま腕を組んで目を瞑っていた。
娘がおかしくなったって考えてるのかしら?
今の時代に魔法なんてあり得ないものね。
「その可能性があったな」
「お父様?信じてくれるんですか?」
「イリーナが巫山戯てそんな事を言わないことぐらい理解しているよ。魅了魔法を使えるものが居るなんて信じられないが、確かに大昔に魅了魔法で国が滅びかけた歴史もある。今も同じような状態だ」
信じてもらえた。
信じてもらえた安心で私の目から涙から溢れてくる。
今は泣いてる場合じゃないと、必死に涙を拭うけど涙が止まらない。
まだ話し合いは終わってないと焦ってると、私の隣に誰かが座る。
「そんなに目を擦ったら腫れてしまうよ。イリーナ嬢はずっと不安だったんだね。1人でこの事を調べてたのかい?」
「いえ……、お兄様の婚約者であるレイチェル様が一緒に調べてくれてますわ」
「ふ~ん、ちょっと妬けるね。婚約者として1番に頼ってもらいたかったな」
「えっ!?いや…、あの~、レイチェル様が魅了魔法について気がついてくれて、だからその関係で2人で調べてました」
ユーリ様の予想外の発言に私の頭の中はパニック状態になる。
ユーリ様がレイチェルに嫉妬?
本当に?
「ごめんごめん。ちょっと冗談が過ぎたかな?でも1番に頼ってほしいって思ってるのは本当だよ。でもサフィナ公爵と同じタイミングで話してくれたってことは、私のことも信頼してくれてるって思って良いのかな?」
「ユーリ様のことは信頼してますわ」
「イリーナ嬢に信頼されて嬉しいよ」
恥ずかしい。
本人に直接信頼してるって言うのって、こんなにむず痒いものなのね。
「ユーリ……、お前は時と場所を考えろ。婚約者の父親の前でイチャイチャするなんて性格が悪いな。少しは私の気持ちになってくれ」
「私だって色々と我慢してるんだよ。イリーナ嬢と二人っきりで会わせてくれないのは貴方だろ?」
「獣と愛娘を二人っきりで会わせるわけ無いだろ。嫁に出すまでは絶対に許さん」
2人は何の話をしてますの?
「お父様失礼ですわよ。ユーリ様は紳士的な方なのだから、ユーリ様を獣なんて例えるなんて失礼ですわ」
私がそう言うと2人は苦笑いをした?
私の発言に何か間違いがあるんでしょうか?
「喜んで良いのか微妙ですね。信頼されて嬉しいって気持ちと、私を男として意識してないことを嘆くべきなのか……」
「これは………、教育をちょっと間違ったか?イリーナ、男は獣だと覚えておきなさい。どんなに紳士的でその要素が想像できないような人物でも、心の底では下心があるんだぞ」
「そんな大袈裟ですわよ。確かにそういう男性も居ますけど、お父様とお兄様みたいに紳士的な人もいっぱい居ますわ。ユーリ様もその1人ですわ」
自信満々に断言すると、2人は頭を抱えてしまった。
何故かお父様はユーリ様に謝っている?
「この話はまた今度話し合うとして、今は魅了魔法について話しましょう。イリーナ嬢の予想通りだとして、この時代に魔法を使えるものが居るのか疑問ですね」
「そうだな。500年前までなら昔の名残で、50年に1人はそういう人物が現れていたみたいだが、500年間は1人も現れていないはずだ」
「居ても隠していた可能性がありますね。もしも私も身内にそのような者が居たのなら、使える魔法によっては隠したはずです。何に利用をされるか分かりませんからね」
確かに私も力によっては隠したかも、実験台にされるのも嫌ですし、兵器扱いをされるのも絶対に嫌だもの。
「魔法とは限らない。魔導具を使ってる可能性のほうが高いと思う。あの子の亡くなった親は遺跡発掘調査等をしていたから、その時に魔導具を見つけたんじゃないか?」
遺跡発掘調査をしてたならあり得るかもしれないわね。
遺跡は昔の記録が残ってる場所ではあるけど、昔に使われていた道具なども発掘されることがよくある。
大抵はガラクタやもう使えない魔導具ばかりだけど、たまに凄いものが発掘されることがある。
国に献上をすればかなりの大金と引き換えになるから、遺跡発掘は危険でも挑戦する人が多いのよね。
「それなら国に献上をしてるんじゃないですか?」
「国に報告せずに裏取引をしてる可能性もある。物によっては国に献上するよりも大金になることもある。あの娘の父親ならやりそうなことだ」
テイラー伯爵令嬢の父親は、お金に汚い人だったみたいだから、その可能性が高いわね。
魔法を使ってるって考えるより、魔導具を使ってるほうが現実味があるわね。
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