【オススメネット小説】幻獣少女えるふ&幻獣になったオレ

猫パンチ

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第四章 ハルピュイアと悲劇の少女

第一話 ハルピュイアという敵キャラ

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 オレ達四人は、電車内で起こった事件を解決し、目的地の静岡県まで来た。
しかし、オレはそこで起きた事件をまだ知らない。
昼食の時に、遠野さんから事件の説明をしてもらう事にする。
遠野さんは、昼食に茶そばを食べつつ、事件の話をし始める。

「私もメールで内容を聞いただけなので、現場に行って見ない事には分からないのですが、ハーピー(ハルピュイア)が大学生の女性を殺したそうです。
大学内は一時期、そのうわさを恐れる生徒が続出しましたが、警察はただの病死として処理したようです。

しかし、彼女と仲の良かったお姉さんはまだ納得しておらず、私がメールしテ連絡を取った所、ぜひ調査して欲しいと言って来ました。
お姉さんが今日と明日まで時間の都合が付いたので、現場の住宅で待っているそうです。何とか二日間で事件を解決できればいいのですが……」

オレは遠野さんの話を聞き、自分の知っている情報を思い巡らした。
そういえば幻住学校に、ハーピーの彫刻像が立ってるくらいは知っている。
偉い可愛いハーピーだったが、遠野さんに教えられたハーピーとは違う事が発覚した。
さすがに、学校の敷地内に老婆の姿のハーピーはショッキングでしかない。

(ハーピーね……。
腕が翼になっている鳥人間というくらいしか知らないな……。
歌がうまいのは、セイレーンだったかな?)

オレは幻獣について良く知らないので、遠野さんにハーピーの事を訊いてみる。
遠野さんは快く幻獣を教えてくれる。
ハーピーとは、どんな幻獣なのだろうか?

「ハーピーとは、上半身が美しい女性、下半身が鷲(わし)という怪物です。
ハルピュイアと呼ばれる事もあり、ラテン語で略奪者を意味します。
とても人気のある幻獣なので、いろいろ違う点がありますが、一般的には、不潔な生き物であり、他人から食事を奪い取り、さらに食卓に汚物を撒き散らすという迷惑極まりない習性を持ちます。

容姿は諸説あり、身体は魅力的な女性ですが、老婆の様な醜い顔を持ち、腕の部分には鷲の羽根が生えているという説や、上半身は美しい女性で背中に羽根があるという説などがあります。
性格は野蛮であり、高地に好んで住んでいます。

有名な話は、ギリシャ神話のアルゴ探検隊の物語で、罪を犯した予言者ピネウス王への罰としてハルピュイアが送り込まれました。
彼女達はピネウス王の食事を毎食奪ったり汚したりして、王を餓死寸前にまで追い込みました。

ピネウス王の予言を必要としていたアルゴ探検隊は、予言を得る交換条件としてハルピュイアを追い払い、ピネウス王を救出する事ができました。
今回の事件は、この物語に関係しているようです。
ちなみに、私は悪い方のハーピーをハルピュイアと呼ぶ事にしています。
良いハーピーもいますからね!」

確かに、ハーピーの中には魅力的でかわいいキャラクターもいる。
萌えキャラや、お姉様度の高い美女キャラもいる。
悪い方の不潔で醜い怪物を別の名前で呼びたいというのも、幻獣好きには必要なこだわり。
ハーピーを魅力的な美女にして、この世の中に留めておきたい。
これも幻獣好きの暗黙の掟なのだ。

敵キャラは、不潔で醜く恐ろしくても、味方キャラは、美女でなければならない。
オレも、遠野さんの意見に賛成だった。
敵キャラで不潔な生き物である以上、ハルピュイアと呼ばせてもらう事に同意する。
味方で魅力的なキャラを、ハーピーと呼ぶ事にする。
これは、後々に大きな意味を持って来るからだ。

遠野さんも幻獣の説明をする事は出来ても、今回の事件の内容をあまり知らない。
とにかく現場に行って見ない事には、調査も事件の内容も知る事は出来ない。
オレ達は急いで昼食を食べ、現場に向かった。
現場は山奥の別荘であり、いかにもハーピーが出て来そうな壮大な景色が広がっていた。

その景色の中心に、富士山がそびえ立っている。
どうやらこの景色を見るために建てられた別荘だった。
そのため、交通は不便で、買い物も一キロほど歩かなければならない距離にスーパーマーケットがある。

それでも、芸術家や写真家には労力を使ってでも、ここに住みたい雄大な景色が広がっているのだ。
空気もうまく、静かな環境だった。
バスは出ているようだが、不便な事に変わりない。
数少ないバスに乗り、オレ達はかなり遅刻をして現場に辿り着いた。
一応、二時間以上遅れる事は報告していたので、被害者のお姉さんは時間を潰していたようだ。
電車内での事件さえなければ、無事に時間通り辿り着いていた事だろう。

茶髪のロングヘアーで、ちょっと大人しい感じの女性だった。
遠野さんと似たタイプの様だが、どこかに違和感がある。
妹さんが亡くなった時のショックで声が上手く出なくなったそうだ。
そのため、あらかじめ用意していた文章と筆談で事件の説明をしてくれる。
優しく笑っているが、心の傷はまだ治っていないのだろう。
オレは、妹さんの事件を解決してあげたいと考えた。

(理由は違うようだけど、遠野さんみたいに少し人付き合いが苦手そうだな。
オレで良ければ力になってあげたいな。
まあ、事件を解決するのは、遠野さんなんだろうけど……)

オレがそう思って遠野さんを見ると、オレに何かを期待しているようで、遠野さんは目を輝かせながらオレにこう語り掛ける。

「木霊君、今日の私はサポートに徹します。
この事件の解決は、木霊君にお任せします。
私もエルフモードでアドバイスをしますし、もうすでにある程度まで警察が調査した後の事件なので、気軽に調査すれば大丈夫ですからね」

遠野さんは笑ってそう言った。
部員を鍛えるための合宿なのだろうか? 
オレと遠野さん、鏡野真梨とメアリーの2グループで調査が開始される。
まずは、事件の内容を聞いておかないと調査も推理も出来ない。

オレは少しやる気になっていた。
名探偵は、男子がなりたい職業の上位を占めるのだ。
野球選手、名探偵、機械のエンジニアこの辺が今の上位だろう。
オレ達四人は、別荘のリビングに通された。

そして、ソファーに座り話を聞く。
被害者のお姉さんは、ゆっくりと筆談しながら名前を教えてくれる。
長文は、パソコンを使って音声を出しているそうだ。
筆談では、さすがに限界があるからね。

「私の名前は、鷲野ひばり(わしのひばり)。
亡くなった妹の名前は、鷲野つばめ(わしのつばめ)です。
事件の内容は、ここにまとめてあります」

ひばりさんはそう言って、調査資料を渡してくれる。
綺麗にデコレーションしてある爪が光っていた。
ネイルアートとか、オレにはよく分からないけど、お金をかけてある事だけはよく分かる。
事件の捜査が開始され、遠野さんは髪の毛を縛ってポニーテールにする。
どうやら俺のサポートにっ徹する気だが、それでも手を抜く気はないのだ。

もらった資料を、遠野さんは朗読してくれる。
要点をオレに教えてくれるように読んでいた。
事件の内容と奇妙な点はよく理解できる。
遠野さんは記事を読み始めた。

「これは二年前に起きた事件です。
私の妹・鷲野つばめ(当時十八歳)は、この別荘に一人で数十日ほど生活していました。
美術部だった妹は、夏休みを利用し、この別荘で力作を描いていました。
私と両親は沖縄に旅行していました。

妹だけになったのは、どうしても夏休みの内に美術部の作品を完成させたいと言って来たからです。
妹一人だけ別荘に残すのは忍びなかったのですが、妹がどうしてもと言うのと、定期的に掃除の人が来るので良いかと思い、夏休み中の妹の滞在を許可したのです。
数日は何事も無く過ぎて行きました。
電話やメールで連絡を取り合ったりしていました。

異変があったのは、一週間ほどした時です。
製作作業に集中するからと、電話は全くできなくなりました。
それでも、メールはしばらくしたら連絡が来るので安心していたんです。
しかし、メールの返信もだんだん来なくなり始め、二、三日経って返信が来るという事もしばしばありました。
私と両親は好くある事と心配していなかったのが悪いのです。

私達が沖縄から帰ると、妹が亡くなったという知らせを警察から聞きました。
死亡推定時刻は詳しく分からず、私が最後にメールを受け取った時間を頼りに死亡推定時刻が決まりました。
定期的に掃除に来ていた人が妹の遺体を発見し、死亡が確認されたそうです。

警察は病死という事で簡単に処理してしまいました。
でも、妹の死因は変なんです。
まるでハーピー(ハルピュイア)に殺されたとしか思えないような死に方なんです。
どうか、私に妹の死んだ原因を教えてください」

遠野さんの朗読を聞き、ひばりさんは涙を流しているようだった。
仲の良い妹が亡くなったのだ。
さぞかし自分を責めているだろう。
あの時、無理にでも旅行に誘っていればとか、自分も別荘に居ればと……。

しかし、悔やんでも仕方ない。
悲しい事だが、こういう事件はまれに発生するのだ。
せめて、オレ達にできる事はこの事件を解決し、ひばりさんに納得してもらうしかない。
こういう親族の死は、心が癒されるまで数十年もかかるものだと、遠野さんは言う。

遠野さんも自分が経験した事は無いが、知識からそう語るのだ。
鏡野真梨は、事件の話を聞くまでやる気が無かったようだが、ひばりさんの悲しい表情を見て、やる気の炎が灯ったようだ。
被害者のつばめさんが死んだ状況を詳しく教えるように催促する。

「で、妹さんが亡くなった時の状況を教えてもらえますか? 
ウチら、こう見えても、数件の難事件を解決しているんやで。
少しは力になれると思うで!」

鏡野真梨の自信に満ちた顔を見て、オレは不思議に思った。
自分は事件を解決した事も無いのに、どこからそんな自信が来るのだろうかと……。
確かに、直接犯人を逮捕するなら自信があるのだろうが、事件の謎なんて全く解いた事がないはずなんだ。
遠野さんの解いた事件を、自分の解いた事件として脳内で処理しているのだろうか? 

たとえ素人探偵とはいえ、自信に満ちた表情は他人に何かを期待させる。
ひばりさんも鏡野真梨を中心にして、発見当時の様子を語り始めた。
オレも負けない様に喰らい付いて行く。
今回は、オレが事件を解決すると決めたのだ。
気を緩めるわけにはいかない!
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