【オススメネット小説】幻獣少女えるふ&幻獣になったオレ

猫パンチ

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第四章 ハルピュイアと悲劇の少女

第三話 最後の目撃証言

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 オレはいきなり行き詰った。
何から調査をすれば良いのだろうか? 
調査資料と現場写真を見たくらいで謎が解けたら、警察だって苦労はしない。
素人のオレには何から調査をすれば良いかも分からないのだ。

しかも、当時の状況で怪死扱いなのに、二年後の今事件の謎を解くのは厳しい。
ヒントでもなければ調査方法さえも分からない。
オレはそう思って遠野さんを見る。
遠野さんは、オレの不安そうな顔を見てアドバイスをくれる。

「あー、えっと、とりあえず食糧が本当に確保できていたかを調べてみましょうか? 
食糧の確保先とか、住んでいる人が少ないからスーパーの店長とかは覚えているかもしれませんよ! 
もしかしたら、有力情報が見付かる可能性さえあります! 
警察は食糧がある事を確認したかもしれませんが、スーパーに行って事情聴取はしていないかもしれませんから……」

「なるほど。確かに、被害者はかなりの美少女。
もしかしたら誰か店員が覚えているかもしれないな。
しかも、旅行者は多くても、地元の人は少ない。
小さい頃から、そこのスーパーを利用していれば、顔馴染みくらいにはなっているかもしれないな!」

「はい。警察も立ち寄ったかもしれませんが、事件性は無いという事で簡単に済ませてしまったかもしれませんし、詳しく訊いてみる必要はありそうです! 
スーパーの店員や店長も、警察の人には質問以外の余計な事は話さないのが普通ですから、全ての情報を話しているとは限りません。
行ってみる価値はあると思います!」

遠野さんにそう言われ、オレ達二人はスーパーに行く事にする。
ひばりさんに場所を教えてもらい、見送られながら目的地に向かって歩いて行く。
かれこれ一時間ほど歩いて、ようやくスーパーマーケットに着いた。
自転車を使えば速いかもしれないが、帰り道は傾斜の急な坂道地獄になる。
オレ達はそのため、歩いて向かう事を選択した。

多少は時間がかかるが、自然な景色を見ながらの散歩は気分の良い物だった。
週一程度なら、このくらいの距離を歩いて登るのは嫌な気はしない。
荷物も一人なら重いが、二人なら生活用品を必要な分だけ買って帰って来る事は出来る。オレ達はそれを確認し、スーパーの店員に話を訊いてみる事にする。
何かしらの情報は手に入るのだろうか?

 オレと遠野さんは、スーパーの店員さんに訊き込みを開始する。
一番年配の女性を見付けて、話を訊いてみる事にした。
こう言う女性は長く同じ仕事場に居続け、同じ部署のプロフェッショナルとなっている。
おまけに年齢的にうわさ好きの傾向がある。
そのため、あまり顔見知りでも無い女子高生でも、かなり詳しい情報を教えてくれるのだ。

警察の前では、こういうプロフェッショナルの方は職場内の暗黙の領域で大人しくするように、上司が画策する傾向にある。
仕事時間をずらしたり、事情聴取に応じない様に教育したりする。
職場内の情報流失を未然に防ぐという点では、上司は素晴らしい働きかもしれない。

しかし、事件を解決するという一点においては、警察にとって素晴らしい人材を埋もれさせている事になるのだ。
できる警察官や有能な探偵は、このような人にこそ詳しい情報が訊き出せる事を知っている。

遠野さんもその知識を持っており、オレにあの人が話し易いとアドバイスをしてくれた。
休み時間を利用し、なるべく仕事場の邪魔にならない時間に訊き込みを開始する。
同じ部署にいるため、仕事のほとんどを任せられている大物だ。
他の人を手伝うと言う名目で中断される可能性が一番高い。

何とか、プリンやケーキ・飲み物を用意し、情報を聞き出しやすい環境を整えた。
このようにすると、他の女性職員なども話し合いに参加し始め、訊き出さなくとも必要な情報が手に入る事もあるのだ。
もちろん、話が脱線する危険性も高い。

聞込みのプロは、話を脱線しない様に話題を提案したり、話を戻したりするのだ。
素人のオレでは、弾丸トークを交わす年配女性には敵わない。
遠野さんがちょくちょく助けを出し、何とか必要な情報を聞き出すことに成功した。
オレ達は被害者の写真を見せ、従業員から情報を聞き出す。

「ああ、この子か……。
二年前の夏休み直前に、このスーパーに寄ったよ。
警察に尋ねられて、従業員全員で確認したから間違いないよ。
防犯カメラもチェックしたからね」

「夏休みの時には、毎年来ていたから覚えているよ。
美術部で才能あるけど、毎年選外佳作ばっかりって言って、今年こそ金賞を取るって張り切っていたわね。
お姉さんはあんまりこの別荘に来た事なさそうだけど、二年前は来ていたかしらね……。初めて顔を見た気がするわ」

「そうね。お姉さんも美人だったみたいだけど、美術関係や写真関係には興味なさそうな人だから、こんな山奥の別荘には来ない人だったみたいね。
大人しい人で、あんまりしゃべる事は無かったし……」

遠野さんは、自分の携帯電話で撮ったお姉さんの写真も、従業員に確認してもらう。

「この人でしょうか?」

「そうそう、この人よ。
あんまり似て無いけど、美人姉妹よね。
妹さんは明るい感じの子、お姉さんは落ち着いた感じの子だったわ。
腕を組んだりして、本当に仲の良い姉妹だったのが分かったわ」

「妹さんが亡くなってからショックだったのか、一、二度くらい友達と一緒にここへ来たわね。
友達の方が相当妹さんの事を尋ねて来て、友人にも恵まれていたのが分かったわ……。
本当に良い子だったのに……」

従業員のおばさん達がしんみりし出したので、オレ達は話を切り上げ、別荘に帰る事にする。
食糧もここで大量に買って帰れば、一ヶ月くらいは、冷蔵庫と冷凍庫の保存で何とかなると言う。
食糧が無くなっていて、妹さんが餓死という線は消えた。

 捜査経験の無いオレは、またどうすればいいのか分からなくなった。
病死の可能性もあるが、検死をしたのは警察の関係者。
捜査素人のオレ達では、資料を見せてもらう事も聞込みをする事さえもできない。
それどころか誰が検死したかも分からない。
被害者の死因が、病死と判断された以上、オレではどうする事も出来ない。

一応専門家のメアリーでさえ怪死と判断していた。
被害者の病気の有無を知る事は不可能に近い。
後は、この怪死の状況を人為的に起こせるかどうかを検討するだけだ。
オレは別荘への帰り道で、いろいろと自分の推理を遠野さんに告げていく。
遠野さんはその推理が可能だったかを教えてくれる。

「うーん、被害者の死因は、餓死だよな……。
そして、リビングのソファーの上で力尽きた。
何か、物を食べる事ができなかった理由でもあるのかな? 
例えば、ロープに縛られていたとか、冷蔵庫が開けられなかったとか……」

「うーん、良い線言っていると思うけど、ロープで縛られていた後は無いし、冷蔵庫は普通の物だったよ。
被害者に目立った外傷は無いから、脚が不自由していた可能性も低い。
仮に、冷蔵庫や冷凍庫が開けられなかったとしても、外のスーパーまで行けば食料は調達できたよ。

別荘の鍵は、内側から自由に開け閉めできるタイプのものだから、オートロックがかかって内側に締め出された可能性も低い。
別荘の鍵自体は、被害者が持っていたし、鍵も壊されていなかったことから清掃会社の社員が来るまで誰かが侵入した形跡も低いです。
まあ、締め出したという殺害方法はありそうですけど……。
被害者のボロボロの爪から見て、私も監禁を疑っていました」

「じゃあ、被害者を監禁した犯人がいるとなると、鍵を持っている人物が犯人の可能性が高いな。
家族以外だと、清掃会社の社員が怪しいけど……」

「さすがに、清掃会社の社員が犯人なら、警察が逮捕しているでしょう。
清掃会社の人に不審な点は無かったと思いますよ」

「そうなると、被害者のお姉さんが怪しく思えて来るな……。
別荘の鍵も持っているし、何らかの工作をして被害者を餓死させたのかも……」

「その可能性もありますが、お姉さんは夏休み開始後から、すぐ沖縄旅行に行っています。
そして、夏休み終了ギリギリで静岡に帰って来ているそうです。
彼女の両親の証言と写真の日付からアリバイは完璧だったようです。
彼女のお姉さんが犯人の可能性は低いですよ」

「そうか……。とりあえず別荘に戻って、もう少し調査をしないといけないな」

「そうですね。
妹さんの交友関係とか、別荘で監禁できそうな場所とかを調査しましょう!」

オレと遠野さんは、別荘を調査していくことにした。
更に、交友関係も可能な限り調べていく。
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