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第六章 ドライアド怒りの一撃!

第七話 木霊に宿りしドライアド

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 オレと遠野さんは公園を後にし、オレの家に着いた。天草さんは、オレの家に来た事があり、自分で歩いて来るという。

「じゃあ、夏美ちゃんが来る前にお風呂を使わして下さい」

「うん、良いよ。これ、妹のパジャマ。
後、コンビニの下着で悪いけど、ブラとパンツだよ。新しいから、気兼ねなく使って。
お母さんの取って置いた下着だからサイズが合うと思う。それと、バスタオルね」

「木霊君、ありがとう」

遠野さんは、お風呂場に入って行った。オレは、その間に客間で寝る準備をしておく。
三人分の布団と、マッサージの用意をする。
遠野さんがお風呂から出る少し前に、天草さんがオレの家に辿り着いた。

遠野さんと入れ替わる様に、夏美さんはお風呂に入る。
下着やパジャマは用意してあるらしく、バスタオルだけ必要だという。

さて、夏美さんが風呂に入っている間に、遠野さんにマッサージを施す。
遠野さんは、腕や足が人間以外の生物に変化するほどの幻獣化をした後は、普段使っていない筋肉を急激に使うため、夜中のマッサージが必要なのだ。

今回は脚が変化しただけなので、それほど長くマッサージする必要はない。
せいぜい三十分といったところだ。

 遠野さんは、眠る布団に寝転がり、オレのマッサージを待っている。

「お願いします」

「じゃあ、始めるよ」

「はう、そこを揉むんですか……。ああ、気持ち良いです」

「だいぶ硬くなっているね。ここを押すと気持ち良いかな?」

「ああ、そこは……。くっう……、痛いのに、気持ち良いよ。はあ、変な感じ……」

「ちょっと緊張しているね。力抜かなきゃ、痛くしちゃうよ……」

「あん、もっと激しくして! 身体全体を解して……」

「ああ、こっちもすごい事になっているね。ちょっと痛いかもしれない」

「痛あ、もう少し優しく……」

「分かった。指先で叩くような感じにするからね」

「はん、気持ち良いよお……。
木霊君の指が触れている所が気持ち良過ぎて、私がおかしくなっちゃうよお。
はあああ……、あれ? ちょっと……」

「ごめん、オレも疲れて来ちゃった」

「うん、私だけ気持ち良くなっちゃっても悪いもんね。私も木霊君にしてあげる」

「はあ、そこは……」

「ふふふ、気持ち良い?」

「ああ、ちょっと痛い……」

「ぎこちない手つきでごめんね。指で挟んで、扱くようにすればいいのかな?」

「うん、気持ち良くなって来たよ。ああ……」

「うふ、木霊君が気持ち良さそうな顔していると、私も嬉しいよ……」

「さて、じゃあ、オレも攻めますか」

「ああ、そこは! ダメ、指でコリコリしちゃあ。ふぁ、気持ち良いよ」

「こっちも気持ち良さそうだね。じゃあ、遠野さんの一番弱い所を攻めさせてもらうよ」

「ちょっと待って!」

「いやなのかな?」

「いやじゃないけど、その前に気になった事があるの。木霊君には知っておいて欲しい!」

「何かな? 大切な事?」

「うん、私達、付き合っているんだよ。そろそろ名前で呼んで欲しい!」

遠野えるふさんは、オレの眼を見てそう訴えて来た。
真剣な顔で、オレは思わず目をそらす。

「あー、最初はちょっと恥ずかしいかもしれないけど、ちょっとずつ呼んでいくね。
えるふちゃん!」

「うん! ありがとう」

「じゃあ、続けるよ!」

「あああ、気持ち良い……。気持ち良いよお」

「ふふ、ちょっと涙が出ているよ。そんなに気持ち良いの?」

「はん、うん! 気持ち良くて幸せ。はあああ……」

「だいぶ柔らかくなったね。今日はこの辺にしておこうか。
えるふちゃんも眠いだろうし、天草さんももうすぐ来るよ」

「うん。ハア、ハア、気持ち良かった……」

えるふちゃんはしばらく余韻にひたっているようだった。
オレがえるふちゃんを座らせて、ぬるま湯を飲ませるとこう言った。

「気持ち良かったよ。ありがとう、木霊君!」

満面の笑顔をしているえるふちゃんを見ると、またマッサージをしてあげようという気になる。
オレ達がマッサージを終えてしばらくすると、ノックする音が聞こえて来た。

「あの、お風呂空きました。二人とも、私が入っても大丈夫ですか? 
服は着ていますか?」

「うん、入っても大丈夫だよ。
私はパジャマを着ているし、木霊君もこれからお風呂に入るから……」

「分かりました。じゃあ、入りますね」

天草さんは客間に入って来た。お風呂から出たばかりだからか、ほんのり顔が赤い。

「良い湯加減でしたから、木霊君も早めにお風呂に入ってくださいね」

「じゃあ、そうするよ」

オレは、えるふちゃんと天草さんを残し、お風呂に入りに行った。
天草さんは、オレがいなくなったのを見計らって、えるふちゃんに話しかける。

「やっぱり二人は付き合っているんだね。何回目なのかな? 気持ち良いの?」

「えーと、三回目かな。とっても気持ち良いよ! 
私、もう木霊君無しじゃ生きていけない……。夏美ちゃんもやってもらったら?」

「ええ! いや、私は遠慮しとくよ。えるふさんにも悪いし……」

「え、何で? 木霊君の妹の水霊(みずち)ちゃんもしてもらったのに」

「え? 本当に? 私、木霊君と一緒に寝て大丈夫かな? ちょっと危険がある? 
私、今日はえるふさんの隣で寝るね。えるふさんは、木霊君と私の間に入って寝てね」

「別に良いけど……。木霊君、魔術師(マジシャン)を目指しているから、小指もしっかり揉んでくれるんだよ。それがツボに入ってすっごい気持ち良いの!
夏美ちゃんもやってもらったらいいのにマッサージ……」

「マッサージ? どこを揉んでもらったの?」

「え? 普通に腕とか、脚とか、足の裏とかだよ!」

夏美さんはそれを聞き、慌てたような表情をする。

「そ、そうだよね。高校生だもん、普通のマッサージだよね。
それならまた今度お願いしようかな。仕事がきつい時とかに……」

「うん、そうしてもらいなよ。最初は痛いけど、だんだん気持ち良くなっていくんだ。
えへへ、これなら幻獣化も心配せずにできるよ」

「幻獣化? 何それ?」

「あー、私と木霊君の特技? 機会があったら見せてあげるよ」

「ああ、手品の一つなんだね」

 オレが風呂から出て、客間に来ると、夏美さんが緊張していた。
オレは異変を感じ訊く。

「あの、夏美さん」

「はあい? 何ですか?」

「あの、どうかした? さっきから様子が変だけど……」

「いえいえ、他人のお宅訪問で緊張しているだけです。気にしないでください」

夏美さんはそう言って、オレから目をそらした。本当にどうしたんだろうか? 
夏美さんは心の中でこう思っていた。

(あー、恥ずかしい……。
二人は健全に付き合っているのに、私が変な妄想してどうすんのよ! 
はあ、変な勘違いしたまま、木霊君にお願いしていたらどうなっていたんだろ。

変態女のレッテルを貼られているかも……。
えるふさんとか、木霊君の交友も怪しい感じに成っていたかもしれないし……)

 オレはしばらくそっとしておいた方がいいと思い、寝る事を提案する。

「じゃあ、一緒に寝ようか」

「は、一緒に……」

夏美さんは明らかに挙動不審に成っていた。

(私が言い出した事だけど、木霊君を男の子と意識し始めちゃったよ。
さっきまでは、お父さんみたいだと思っていたのに……。

そうか、えるふさんと一緒とはいえ、木霊君と寝るんだ……。
あわわ、なんか変な事を考え始めちゃっている)

夏美さんは、布団をかぶって寝た振りをする。
オレもえるふちゃんも疲れているため眠り始めた。
夏美さんだけ上手く眠れず、トイレに行って携帯電話のメールをチェックしていた。

(はあ、緊張して眠れないよ……。
私、もしかして木霊君の事が好きなのかも……。
あ、なんかメールが着ている。

木霊君だったりして。
夜眠れないから、ちょっと公園を散歩しませんか、とか……。
あははは、えるふさんがいるのに無理だよね)

夏美さんはメールを確認する。

「ウチ、鏡野真梨やけど。明日のバイト代わってくれへん? 
ウチの生活費がピンチやねん。
それと、ナツミンのケーキ評判良いから、特別キャンペーンの宣伝に使わしてもろうたわ。

来週中に最新オレンジケーキ二百個を作ってくれへん? 
百個は無料のキャンペーン商品。もう百個は、売り上げ重視の本格商品。
ナツミンのオレンジケーキを今月の目玉商品にする予定や。

まあ、明日はその試作品を作る準備期間という事で休暇にしてくれや。
ほな、よろしくな!」

「な! 勝手にそんな宣伝したの? 
しかも、ケーキ二百個って……。
はあ、鏡野さん、私をくだらない妄想から現実に戻してくれてありがとね。

今日は早く寝て、明日の朝から準備しないと……。えるふさんに手伝ってもらおう!」

夏美さんは一瞬オレに惚れかけたが、現実の厳しさを知り、あっさりとオレへの想いを捨て去っていた。

彼氏になるかもしれない男子より、確実に助けてくれる女友達を取ったのだ。
夏美さんはその事を悟ると、オレが部屋に居ようと、緊張する事なく眠りに着いた。





ヒロインは、五人出てきます。
え、なんで五人かって?
人気投票をさせ、一位から順に各衣服業界の服を着てもらうからです。
なので、実写化して欲しい。
実写化させて、ミステリーバスツアーに行かせたり、ファッションショーをさせたりしたいです。
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