【オススメネット小説】幻獣少女えるふ&幻獣になったオレ

猫パンチ

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第七章 獲物を呼び寄せるセイレーン

第六話 セイレーンを誘き寄せろ!

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遠野さんは髪型をロングヘアーに戻し、ドヤ顔で幻獣の説明を始めた。
事件の真相を話すかと思いきや、いきなり趣味の幻獣説明だ。
事件と関係あるのかもしれないが、オレ以外は適当に相槌を打っていた。
ストーカー男は、意味が分からない為に固まっている。
しかし、遠野さんが事件を解決するまでには重要なプロセスなのだ。

「今回の事件の犯人はセイレーンですね。
セイレーンとは、紺碧色をした地中海に浮かぶある小さな島、その岩の上には鳥に似た生き物が棲んでいる。
下半身は鳥なのだが、上半身はうら若き娘達であり、憂いをおびた表情は男達を惑わすのだが、惑わすのはそれだけではありません。
彼女らは美しい声で幻妙なる音楽を奏で始めます。

この世のものとは思えないその甘い歌声を聞くと、男達は聞き惚れて陶然とします。
その時、歌を突然やめたセイレーン達は、男共に飛びかかります。
鳥の爪で喉首を切り裂くと、絶命した男達の腹を食いちぎり、内臓をついばみ始めます。
美しい娘の口元は人間の血で真っ赤に染まり、彼女達はニッと不気味に笑います。
セイレーンは、人間を食らう食肉鳥であり、彼女達の歌う妙なる調べは、男達を誘い込む悪魔のプレリュードだったのです!」

ストーカー男は、遠野さんが語る幻獣が空野ツバサさんを指すと思い込み、遠野さんの首を絞め始めた。
確かに、セイレーンと言われて思い付く人物は、空野ツバサさんしかいない。

「このお、空野ツバサさんが犯人だと言うのか!」

「うう、苦しい……」

遠野さんの首を絞めるストーカー男に、鏡野真梨の一撃が炸裂した。
誤解を与えた遠野さんも悪いが、ストーカー男は存在自体が悪い。
鏡野真梨に蹴られて、壁に激突していた。
これでしばらくは大人しくなる。

「ごっほ、犯人は空野ツバサさんではありません。
しかし、その魅力を利用しようとしたのも事実です。
ただ、犯人を追い詰める証拠がありません。
このままでは、ストーカー男さんが犯人になってしまいます。
後、ストーカー男さんには、私に対する暴力行為も加えておくので覚悟して下さい」

「ウチが奴をボコボコにしたから、窃盗罪以外は免除してあげてんか?
あんなんでも大学卒業しようと奮闘しているさかい!」

「じゃあ、私への暴行は無かったことにしておきます。
まあ、窃盗罪は野村警部さんの説得でなんとか乗り切って下さい」

「おおきに! おおきにな!」

ストーカー男は、なぜか関西弁で感謝を示す。
関西人でもないのに、関西弁を話されるとイラッと来るようだ。
鏡野真梨の激しいツッコミがストーカー男を襲う。

「何、ウチの真似しとんねん!」

「ぐっほ!」

オレは、ストーカー男が鏡野真梨の影響でマゾにならないかと心配になった。
ストーカーの上にマゾでは始末に負えない。
究極のモンスターが誕生してしまうかもしれないのだ。
鏡野真梨を見る目が潤んでいればその可能性もあったが、彼は意識を保つことさえ困難になってした。
とりあえずは大丈夫らしい。

「犯人は、空野ツバサさんのマネージャーです。
えっと、名前は忘れましたけど……、その人が犯人です!」

犯人の名前を指名できなかったが、オレもよく思い出せないからセーフ!
専属の探偵でもないのに、一度会ったくらいで名前を覚えられるわけがない。
プロの野村警部は、資料を見ながら犯人の名前を特定した。
警察といえども、全員の名前を正確に覚えられる人は少ないのだ。
まあ、それが覚えられるほどの実力を持っているからキャリア組なんだろうけど。

「えっと、青木久雄(あおきひさお)さんの事だね。
まあ、ツバサさんのマネージャーで人物は特定できたから問題ないけどね。
必要な情報があったら言ってよ。
可能な限りは答えることができると思うから……」

「ありがとうございます。
私もうっかりしていました。
エルフモードになっていれば、名前も覚えていたのですけど……。
太古に眠りし知識の英知よ、今ここに甦り知識を示せ。覚醒・エルフモード!」

「うお、いきなり変身し始めたぞ。
この対抗心はなんなんだ!
意外に負けず嫌いだな?」

遠野さんは話しながら、携帯電話を弄り音楽を流していた。
突然の変身に、野村警部や鏡野真梨はびっくりする。
音楽と合わせて変身し、髪型を変えてエルフモードになっていた。
これで事件の真相が明らかになるのだ。

「犯人は、青木久雄(あおきひさお)です。
まず、彼は空野ツバサさんがストーカー男に盗聴されている事を知っていました。
その人物を特定するよりも前に、船乗栄一さんがツバサさんと付き合い始め、結婚するまでの中に発展していきました。

ツバサさんのマネージャーとして恋心は隠していましたが、ツバサさんが船乗さんと結婚することを知り、殺意が芽生えました。
しかし、そのまま殺したのではすぐに警察に捕まってしまう。
そこで、盗聴しているストーカー男を利用する事にしたのです。

以前からしている秘密の取引方法をして、船乗さんにライブチケットの入った手紙を渡しますが、今回はそれに殺害の方法を加えたのです。
一応、ストーカー男さんに確認しておきますが、青木久雄(あおきひさお)と船乗栄一さんの秘密の取引方法を知っていましたか?」

「いいや、なんらかの方法で取引していたのは知っていますが、盗聴を警戒してなのか、その方法は語りませんでした。
取引の場所と時刻を指定し、船乗栄一がその場所に行っていたようです。
今回もそれで場所と時間が分かったので、古本屋を張っていたのですが……」

「取引の場所は、全て古本屋ではありませんでしたか?
場所や日時は変わっても、本屋さんであるなら秘密の取引方法も特定する事ができます。
どうですか?」

「ええ、そう言われてみればそうでした。
古本屋巡りが好きなのかと思っていましたけどね。
品揃えの良い本屋は駅前にあって、安くて大量買いするなら近くの本屋が良いとか、そういう個人的な理由だと思っていました。
ほら、マーケットは品揃えは悪いけど、半額セールを実地しているじゃないですか。
反面、オフは割高だけど、マニアックな漫画が全巻揃っている時もありますし……。
更に、コスプレ衣装や楽器なんかもお得に扱っていますからね!」

「そうですね、でもこれで殺害方法も分かりましたよ!
ただ、やはり証拠を見付けるのが難しくなりました。
芸能人のマネージャーだから目立たないようにしているでしょうし、防犯カメラの死角を利用しているので犯行も証明できません。
指紋も出ないようにしているでしょうし、古本屋なので多少の指紋は有っても問題にもなりません」

「そんな、それじゃあ逮捕できないんですか?」

「うーん、あなたがライブ会場で派手に逮捕されれば良いんですよ!
どうせ窃盗犯ですし、真犯人逮捕に協力したとなれば、警察も情状酌量を示してくれるんじゃないでしょうか?
それよりも、真犯人を逮捕できなかったという間抜けな探偵が必要になりますけどね。
はあ、その役は私がやりますよ。
提案者ですしね……」

遠野さんは、自分が汚れ役をやると提案する。
オレは、それに対して反対した。
彼女には名探偵でいて欲しい。
オレを助けてくれたし、失敗したのだと世間に思われたくなかった。
これはオレの我儘だった。

「そんな、遠野さんは名探偵でいて欲しいよ!
怪奇幻獣倶楽部の部長じゃないですか。
間違った推理をしたら、学校などから信用されなくなりますよ?」

「でも、真犯人を追い詰めるには、そういう荒療治も必要なんですよ。
いつも明確な証拠が出てくるわけではありませんから……」

「なら、その汚れ役はオレがやります!
手品師の父親を持っているから、世間にもそれなりに注目されますし、ピエロ役には慣れています!
多少父親には迷惑をかけますが、怪奇幻獣倶楽部の宣伝にもなりますし、イメージアップはできると思います!」

「そこまで言うなら、木霊に任せますけど……」

「ライブ会場で、派手にストーカー男を逮捕して見せますよ!
任せて下さい、部長!」

「はい、任せました♡」

遠野さんはニッコリ笑って、オレに大役を任せてくれた。
犯人役であるストーカー男を追い詰める動作を誤れば、真犯人逮捕もできなくなるのだ。
オレの意気込みに鏡野真梨も驚きを隠せない。
オレの方を見て褒め出した。

「なんや、木霊もカッコええやん!
なんか、惚れてまうわ!」

(うん、マジでやめて!)

オレは声に出さずにそう思った。
声に出したら最後、容赦のない蹴りが飛んでくるのだ。
鏡野真梨は冗談でそう言ったようだが、返し次第では冗談で済まなくなるのだ。
オレ達とストーカー男は、空野ツバサさんのライブ会場に向かう事にした。

開始までの時刻はギリギリ間に合う時間になっていた。
練習もなく、ぶっつけ本番でストーカー男を逮捕しなければならない。
遠野さんが書いた紙を見てセリフを覚える。
果たして、ストーカー男とオレは失敗せずに演技する事ができるのだろうか?
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