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第七章 獲物を呼び寄せるセイレーン
第八話 セイレーン殺人事件の真犯人逮捕!
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ネコーズ達が派手にストーカー男を逮捕してから一時間が経過した。
オレ達は、空野ツバサさんを慰めてから帰ることにする。
さりげなく空野ツバサさんから本人とマネージャーさんの予定を聞くことができた。
その予定から、次に犯人が起こす行動を予測するのだ。
「辛い事がありましたけど、落ち込まずに頑張って下さい。
私で良ければ、喫茶店『ドライアド』に来た時に、作曲のお手伝いをしますよ。
アルバイトのスケジュールはこんな感じなので、都合が良ければお店の方に来て下さい。
もちろん都合が合えば別のところで打ち合わせすることも出来ますよ。
これが私の電話番号です!」
「ありがとう。
十歳も歳が離れているけど、姉妹みたいに感じてしまうわ。
また、お店の方にも寄らせて貰うわね。
今日は、ライブ会場に来てくれてありがとう!」
「では、また!」
オレ達は、空野ツバサさんを見送って、会場を後にした。
しかし、今日の活動はまだ終わっていない。
急いで、船乗さんが亡くなった古本屋へ直行する。
野村警部も準備を整え、既に待機していた。
この時間帯に、船乗さんを殺害した真犯人が店に訪れる可能性が高いと言う。
オレ達は変装し、古本屋で来た客を一人一人チェックしていた。
すると、遠野さんがこう合図をする。
「来ました。
逮捕は野村警部に任せ、私達は大人しくしていましょう」
そう言われ、オレが来た客を見ると、地味な黒っぽい服を着た人物が現れた。
帽子に、黒っぽいマスク、黒っぽいコートを着ている。
サングラスは、他の人に疑われるためしていなかったが、黒縁のメガネをかけている。
店を物色する事もなく、一直線にある場所へ向かっていた。
そこは、大型版の図鑑が並んでいるコーナーで、どの本も厚いカバーに入っている。
その人物は、皮の丈夫な手袋をはめていて、ある本のカバーを必死に外そうとしていた。
手袋を外せば、すぐに出せるにもかかわらず、手袋をはめたまま必死でカバーを外そうと、本を横に振っていた。
「青木久雄(あおきひさお)、船乗栄一殺害の容疑で逮捕する!」
突然、野村警部に捕らえられ、その人物は驚いた表情を見せる。
逃げようとする仕草をするが、腕をガッチリと捕まえられている為に逃げられない。
犯人は帽子を取り、マスクを外した。
そして、自分が誰なのかを明かす。
犯人や怪しい人物でない事をアピールしているようだ。
「ちょっと待って下さいよ!
私ですよ、空野ツバサのマネージャー青木久雄(あおきひさお)ですよ。
確かに、可笑しな格好で古本屋に来たことは認めますが、それは私自身もそれなりに有名だからです。
それを殺人犯呼ばわりは酷いですよ!」
遠野さんが言った通り、青木久雄(あおきひさお)が古本屋に現れた。
自分の犯行が完璧である事を確信しているのだろう。
あっさりと自分の正体を明らかにした。
遠野さんは、ゆっくりと青木久雄(あおきひさお)に近付いて行き、自分の推理を語り始める。
「あなたの犯行は既にバレています。
このまま自首する事をオススメしますよ。
さもないと、野村警部と鏡野真梨が強制的に取り押さえ、腕や腹に不必要な怪我を負ってしまうかもしれません。
あなたの犯行が明るみに出た以上、全て無駄な抵抗になります」
「何の話ですか?
私は、ここに古本を買いに来ただけですよ。
それで日本の法律では罪に定められてしまうのですか?
これは人権侵害ですよ。
さあ、早く手を離して下さい!
今なら勘違いで許してあげますから……」
「手荒な真似はしませんが、手を離すことはしません。
順を追って説明しましょう。
まず、あなたはずっと空野ツバサさんが好きだった。
男女間の間柄ですから、そういう感情が芽生えても不思議はないでしょう。
しかし、仕事上の都合でそれを押し殺していました。
ところが、彼女に別の男性が現れてしまったんです。
それが船乗栄一さんです。
あなたは怒りと苛立ちを彼に感じ始めましたが、すぐに破局するものと思って放置していたのでしょう。
巧みに、彼らを誘導し、連絡の間にあなたが入ることができた。
それならば、二人の間を上手くコントロールする事ができれば、恋愛に発展し難いと考えたのでしょう。
しかし、あなたの思惑は外れ、二人は親密な関係に発展していった。
元々忙しい二人ですからね、数度会うだけで満足していたのでしょう。
更に、空野ツバサさんには盗聴器を仕掛けるほどのストーカー男まで現れた。
事務所に盗聴器が仕掛けられている事を機械か何かで偶然知ったのでしょう。
あなたはそれを空野ツバサさんには知らせずに、自分で犯人を探す事にした。
盗聴器に態と、船乗さんの存在を匂わせ、秘密の手紙交換を教えたのです。
ストーカー男は、まんまとあなたの策略にハマり、自分から姿を見せ始めた。
その時に発生したのが、今回の結婚発表ライブコンサートです。
空野ツバサさんの提案により、ライブ会場で正式に結婚発表をすると言うもの。
あなたは焦ったはずです。
どうにか結婚発表をやめさせて、二人の関係を破壊できないかと模索し始めた。
そこで思い付いたのが今回の事件です。
あなたは、いつも通りの取引方法で、船乗栄一さんを古本屋に呼び寄せた。
そして、場所と日時を知ったストーカー男もそこに訪れるようにし、万が一の殺人犯役にする事にした。
仮に、警察が殺人と疑っても、殺人動機のあるストーカー男を逮捕させる為です。
元々誰にもバレないように取引していたあなたですから、相当の自信もあったのでしょう。
あなた達の秘密の取引方法はこうです。
まず、場所と時間を決めて、特定の古本屋に呼び寄せます。
これは、電話でも良いですし、誰かにバレても空野ツバサさんと付き合っている事まで特定されません。
そして、百科事典の一冊を使い、本の中に手紙を挟んでおきます。
一冊くらいなら無断で本を置いてもバレませんし、百科事典の一冊なので手に取る人もいません。
そこを利用して、船乗さんと空野ツバサさんの手紙交換を黙認していたのです。
しかし、今回は違いました。
暗殺者が良く用いる毒針を本に仕込み、カバーを外そうとして指を中に入れると刺さるようにセットされていました。
船乗さんは、指を怪我しましたが、気が付かずにカバーを外して手紙を入手したようです。
その後、店内で具合が悪くなり、毒が回って死にました。
あなたがそうなるように仕組んだのです。
その後、ストーカー男が現れ、船乗さんを介抱するふりをして手紙とライブチケットを盗んで行きました。
おそらく、そこまで具合が悪いとは思っていなかったのでしょう。
一時期は犯人扱いされていましたが、私があなたの犯行を見抜き、敢えてライブ会場で逮捕させたのです。
そして、あなたは自分の犯行がバレないように、この本を回収しに来たというわけです。
良心の呵責から、毒が付着しているかもしれない針を確認しようとしたのが仇となりましたね」
「いや、この本を取りに来たのは、空野ツバサさんに言われて来たからですよ。
もしかしたら彼女が毒殺しようとした犯人かもしれませんよ!
自分は、彼女に言われて本を置きに来ただけなんです。
毒針が入っていた事なんて知りませんでしたよ。
この方法なら、彼女にも殺害は可能ですよね?」
真犯人の青木久雄(あおきひさお)は、苦し紛れに空野ツバサさんを犯人にし始めた。
確かに、この方法ならば彼女にも殺害は可能だった。
手紙を仕込んだ本を届けただけなら、毒針の存在を知らなかったと言っても辻褄が合う。
最低の男と成り下がっていたが、明確な証拠がない以上は逮捕する事ができない。
遠野さんは、どうやって彼を犯人と特定するのだろうか?
オレ達は、空野ツバサさんを慰めてから帰ることにする。
さりげなく空野ツバサさんから本人とマネージャーさんの予定を聞くことができた。
その予定から、次に犯人が起こす行動を予測するのだ。
「辛い事がありましたけど、落ち込まずに頑張って下さい。
私で良ければ、喫茶店『ドライアド』に来た時に、作曲のお手伝いをしますよ。
アルバイトのスケジュールはこんな感じなので、都合が良ければお店の方に来て下さい。
もちろん都合が合えば別のところで打ち合わせすることも出来ますよ。
これが私の電話番号です!」
「ありがとう。
十歳も歳が離れているけど、姉妹みたいに感じてしまうわ。
また、お店の方にも寄らせて貰うわね。
今日は、ライブ会場に来てくれてありがとう!」
「では、また!」
オレ達は、空野ツバサさんを見送って、会場を後にした。
しかし、今日の活動はまだ終わっていない。
急いで、船乗さんが亡くなった古本屋へ直行する。
野村警部も準備を整え、既に待機していた。
この時間帯に、船乗さんを殺害した真犯人が店に訪れる可能性が高いと言う。
オレ達は変装し、古本屋で来た客を一人一人チェックしていた。
すると、遠野さんがこう合図をする。
「来ました。
逮捕は野村警部に任せ、私達は大人しくしていましょう」
そう言われ、オレが来た客を見ると、地味な黒っぽい服を着た人物が現れた。
帽子に、黒っぽいマスク、黒っぽいコートを着ている。
サングラスは、他の人に疑われるためしていなかったが、黒縁のメガネをかけている。
店を物色する事もなく、一直線にある場所へ向かっていた。
そこは、大型版の図鑑が並んでいるコーナーで、どの本も厚いカバーに入っている。
その人物は、皮の丈夫な手袋をはめていて、ある本のカバーを必死に外そうとしていた。
手袋を外せば、すぐに出せるにもかかわらず、手袋をはめたまま必死でカバーを外そうと、本を横に振っていた。
「青木久雄(あおきひさお)、船乗栄一殺害の容疑で逮捕する!」
突然、野村警部に捕らえられ、その人物は驚いた表情を見せる。
逃げようとする仕草をするが、腕をガッチリと捕まえられている為に逃げられない。
犯人は帽子を取り、マスクを外した。
そして、自分が誰なのかを明かす。
犯人や怪しい人物でない事をアピールしているようだ。
「ちょっと待って下さいよ!
私ですよ、空野ツバサのマネージャー青木久雄(あおきひさお)ですよ。
確かに、可笑しな格好で古本屋に来たことは認めますが、それは私自身もそれなりに有名だからです。
それを殺人犯呼ばわりは酷いですよ!」
遠野さんが言った通り、青木久雄(あおきひさお)が古本屋に現れた。
自分の犯行が完璧である事を確信しているのだろう。
あっさりと自分の正体を明らかにした。
遠野さんは、ゆっくりと青木久雄(あおきひさお)に近付いて行き、自分の推理を語り始める。
「あなたの犯行は既にバレています。
このまま自首する事をオススメしますよ。
さもないと、野村警部と鏡野真梨が強制的に取り押さえ、腕や腹に不必要な怪我を負ってしまうかもしれません。
あなたの犯行が明るみに出た以上、全て無駄な抵抗になります」
「何の話ですか?
私は、ここに古本を買いに来ただけですよ。
それで日本の法律では罪に定められてしまうのですか?
これは人権侵害ですよ。
さあ、早く手を離して下さい!
今なら勘違いで許してあげますから……」
「手荒な真似はしませんが、手を離すことはしません。
順を追って説明しましょう。
まず、あなたはずっと空野ツバサさんが好きだった。
男女間の間柄ですから、そういう感情が芽生えても不思議はないでしょう。
しかし、仕事上の都合でそれを押し殺していました。
ところが、彼女に別の男性が現れてしまったんです。
それが船乗栄一さんです。
あなたは怒りと苛立ちを彼に感じ始めましたが、すぐに破局するものと思って放置していたのでしょう。
巧みに、彼らを誘導し、連絡の間にあなたが入ることができた。
それならば、二人の間を上手くコントロールする事ができれば、恋愛に発展し難いと考えたのでしょう。
しかし、あなたの思惑は外れ、二人は親密な関係に発展していった。
元々忙しい二人ですからね、数度会うだけで満足していたのでしょう。
更に、空野ツバサさんには盗聴器を仕掛けるほどのストーカー男まで現れた。
事務所に盗聴器が仕掛けられている事を機械か何かで偶然知ったのでしょう。
あなたはそれを空野ツバサさんには知らせずに、自分で犯人を探す事にした。
盗聴器に態と、船乗さんの存在を匂わせ、秘密の手紙交換を教えたのです。
ストーカー男は、まんまとあなたの策略にハマり、自分から姿を見せ始めた。
その時に発生したのが、今回の結婚発表ライブコンサートです。
空野ツバサさんの提案により、ライブ会場で正式に結婚発表をすると言うもの。
あなたは焦ったはずです。
どうにか結婚発表をやめさせて、二人の関係を破壊できないかと模索し始めた。
そこで思い付いたのが今回の事件です。
あなたは、いつも通りの取引方法で、船乗栄一さんを古本屋に呼び寄せた。
そして、場所と日時を知ったストーカー男もそこに訪れるようにし、万が一の殺人犯役にする事にした。
仮に、警察が殺人と疑っても、殺人動機のあるストーカー男を逮捕させる為です。
元々誰にもバレないように取引していたあなたですから、相当の自信もあったのでしょう。
あなた達の秘密の取引方法はこうです。
まず、場所と時間を決めて、特定の古本屋に呼び寄せます。
これは、電話でも良いですし、誰かにバレても空野ツバサさんと付き合っている事まで特定されません。
そして、百科事典の一冊を使い、本の中に手紙を挟んでおきます。
一冊くらいなら無断で本を置いてもバレませんし、百科事典の一冊なので手に取る人もいません。
そこを利用して、船乗さんと空野ツバサさんの手紙交換を黙認していたのです。
しかし、今回は違いました。
暗殺者が良く用いる毒針を本に仕込み、カバーを外そうとして指を中に入れると刺さるようにセットされていました。
船乗さんは、指を怪我しましたが、気が付かずにカバーを外して手紙を入手したようです。
その後、店内で具合が悪くなり、毒が回って死にました。
あなたがそうなるように仕組んだのです。
その後、ストーカー男が現れ、船乗さんを介抱するふりをして手紙とライブチケットを盗んで行きました。
おそらく、そこまで具合が悪いとは思っていなかったのでしょう。
一時期は犯人扱いされていましたが、私があなたの犯行を見抜き、敢えてライブ会場で逮捕させたのです。
そして、あなたは自分の犯行がバレないように、この本を回収しに来たというわけです。
良心の呵責から、毒が付着しているかもしれない針を確認しようとしたのが仇となりましたね」
「いや、この本を取りに来たのは、空野ツバサさんに言われて来たからですよ。
もしかしたら彼女が毒殺しようとした犯人かもしれませんよ!
自分は、彼女に言われて本を置きに来ただけなんです。
毒針が入っていた事なんて知りませんでしたよ。
この方法なら、彼女にも殺害は可能ですよね?」
真犯人の青木久雄(あおきひさお)は、苦し紛れに空野ツバサさんを犯人にし始めた。
確かに、この方法ならば彼女にも殺害は可能だった。
手紙を仕込んだ本を届けただけなら、毒針の存在を知らなかったと言っても辻褄が合う。
最低の男と成り下がっていたが、明確な証拠がない以上は逮捕する事ができない。
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