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第七章 獲物を呼び寄せるセイレーン
第九話 セイレーン殺人事件の結末
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遠野さんは、一瞬苦しそうな表情をしたが、すぐに笑顔を取り戻した。
どうやら犯人を追い詰める要素ができたらしい。
真犯人の青木久雄(あおきひさお)の手から本を奪い取り、説明し始めた。
本を隠される可能性もあったが、百科事典はその一冊だけなので目立つ。
「墓穴を掘りましたね。
確かに、あなたの指紋はほとんど付いてないのでしょうが、買った当時はそこまで考えていなかったでしょう。
だから、この百科事典の会社を調べれば、誰に売ったかの記録が残っています。
空野ツバサさんがこの百科事典を購入していなければ、犯行が可能だった人物はあなたしかいません。
当然、あなたの家にある百科事典は、この一冊分だけが抜けている事でしょう。
もう言い逃れはできませんよ。
人に貸すにしても一冊だけでは不自然ですし、あまり役にも立ちません。
誰も持っていかない本だからと、この本を選んだのでしょうが、購入者の特定も簡単なのです。
彼女に対する愛情の点でもあなたの負けですからね。
船乗さんは愛情たっぷりに彼女を愛していました。
手紙に自分の血を付着させない様に、注意を払って扱っていた様です。
その為、手紙に入って気の血も付着されていませんでした。
まあ、空野ツバサさんを犯人にしようとした時点で、あなたの恋は終了しました。
正直に自首することをオススメします。」
真犯人の青木久雄(あおきひさお)はしばらく俯いていたが、観念した様に話し始めた。
「ふふ、完璧だと思っていたのにバレてしまうとは……。
探偵役を高校生にやらせれば、すぐにストーカー男を犯人にしてくれると思っていたのに……。
油断し過ぎましたね。
これなら病死を信じ込ませた方が良かったです。
それなら確実に成功したはずですからね!」
「確実に成功する犯罪なんてありません!
たとえ誰にもバレなくても、幸せな人生なんて送れませんよ。
人を殺したという犯罪がずっと付いて回ります。
今逮捕されて、完全犯罪を暴露される方が幸せです。
たとえ仕事を無くし、周囲の人から殺人犯だと言われ続けたとしてもね。
見た感じ最初の数年は、逮捕されて罪を罰せられる方が辛いですが、刑務所を出る頃には晴れ晴れとした表情をしていますよ。
逆に、ずっと逮捕されなければ、数年で死んでしまう場合さえあるのです。
あなたはついていますよ。
たった数年で自分の犯した罪を償えるんですから……。
その後は、頑張って仕事を探して、人々の役に立てる様に頑張り続けてください。
きっと空野ツバサさんも歌で応援してくれる事でしょう!」
「ふっ、彼女を幸せにする資格なんて、俺には無かったということか?」
「いえ、あなたの助けが無ければ、彼女は今の地位にいません。
きっとあなたが困っている時には同じ様に助けてくれることでしょう。
それまでは、私が助力して彼女を少しは助けてあげたいと思います。
では、ブタ箱で精神を鍛えてきてくださいね」
青木久雄(あおきひさお)は、野村警部に連れられて、警察署まで連行された。
かなりの屈辱と挫折、偏見などを経験するだろうが、数年後は穏やかに出てこれるだろう。
心配すべき事は、そういう人達の将来が中々難しい事だ。
復帰して頑張ろうと決意しても、社会が活躍の場を与えてくれない。
なるべくそうした人も仕事が見付けやすい様にしないと、また犯罪に走る可能性がある。
工場作業でも良いから、それなりに信頼を踏める段階を作ってあげたいものだ。
刑務所でも、出所した人を推薦する様な制度を設けた方が親切だろう。
それが再発防止につながる。
「でも、今回の事件の功労者は、木霊ですね。
青木久雄(あおきひさお)を油断させる事ができなければ、古本屋に来る事もなかったでしょうし、そのまま毒針付きの本が放置され続けた可能性もあります。
お疲れ様です!」
遠野さんは、ニッコリ笑いながら、エルフモードを解除する。
ふっわっと良い匂いが漂って来た。
黒い髪の毛がカーテンの様に、彼女の後ろを一瞬遮った。
制服の白いラインがより強調され、自然とスカートに目が移る。
「いや、そんな対した事はしてないよ。
遠野さんにアドバイスされた通りに話しただけだよ。
上手くいったのは、やっぱり遠野さんの実力だよ。
まあ、度胸は少し付いた気がするけど……」
オレがそう言うと、釈放されていたストーカー男が同意する。
彼もこの事件の功労者として優遇された様だ。
「はあ、はあ、はあ、俺も空野ツバサさんが悪い男に騙されないで良かったです。
これからも影ながら彼女を見守っていきます!」
「お前、彼女の恋人が死んで、彼女のマネージャーが逮捕されて、自分が勝者になった気でいるんじゃないやろうな?
はっきり言って、ストーカー男なんて真っ先に恋人候補から外されるんが落ちやで!
まずは、大学卒業して、仕事しろや!
ストーカーは犯罪やで!」
「はあ、はあ、はあ、こんなに俺を心配してくれるなんて……。
分かりましたよ。
次は、あなたに付いていきます!
恋人として、死んでもあなたを守り抜きます!」
「うわあ、要らんわ!
付いて来るな!」
ストーカー男の恋の対象は、鏡野真梨に移った。
要らん世話好きだし、実は押しに弱い。
努力次第では、両想いも可能だろう。
新たな目標に向かって頑張れ、ストーカー男よ!
次の日、新聞にオレの事が出ていた。
轟木霊君、勇み足でミステリーという見出しだった。
父親と兄貴のコメントが載っていた。
「失敗など良くある、重要なのは学ぶ事だ。
萎縮せず、努力を続ければ、いずれは成功し始めるだろう。
普通は、失敗したから止めるという人が多いのが現状だがな。
努力を止めない事が重要だ。
彼には、もっと幅広い活動をして失敗してほしい。
それが今後の成長に繋がるのだ!」
「犯人を追い詰めるのに必要なのは、幅広い視野と発想力だ。
いくつもの可能性を考慮し、真犯人を追いつめていくのだ。
失敗と試行を繰り返し、何十年もかけて一人前になるのだ。
半人前を激しく叩くのは、半人前以下の奴らだけだ」
編集者はこう書いてまとめている。
「まあ、派手なパフォーマンスを失敗しましたが、度胸と勇気は立派な様です。
真犯人は、この後すぐに捕まった様なので、彼の活躍によって奮起された警官もいたという事でしょう。
今後の成長に期待というところですね!」
その新聞を見ていた人物の一人が、オレに興味を持ち始めた。
新聞を真上に投げ捨て、青色の太刀で新聞を粉々に切り裂いていた。
相当の技術が無ければ、紙のような軽い物を切ることはできない。
彼はその道のプロなのだ。
「ふーん、俺の妹に恋心を抱かせた男は、相当頑張っているようだな!
面白い、いずれは俺が直々に相手をしてやろう。
妹を奪って行くと言うのなら、俺を倒せるほどの実力でなければ許さない。
死闘をするのが楽しみだな!」
机に落ちた紙切れは、オレの姿を写した写真を綺麗に切り取っていた。
寸分の狂いもなく、定規では買って切ったかのごとき正確さである。
ふっと風が吹き、オレの写真をどこかへ吹き飛ばしてしまった。
まるで、オレが敗北する事を予告しているかのようだった。
どうやら犯人を追い詰める要素ができたらしい。
真犯人の青木久雄(あおきひさお)の手から本を奪い取り、説明し始めた。
本を隠される可能性もあったが、百科事典はその一冊だけなので目立つ。
「墓穴を掘りましたね。
確かに、あなたの指紋はほとんど付いてないのでしょうが、買った当時はそこまで考えていなかったでしょう。
だから、この百科事典の会社を調べれば、誰に売ったかの記録が残っています。
空野ツバサさんがこの百科事典を購入していなければ、犯行が可能だった人物はあなたしかいません。
当然、あなたの家にある百科事典は、この一冊分だけが抜けている事でしょう。
もう言い逃れはできませんよ。
人に貸すにしても一冊だけでは不自然ですし、あまり役にも立ちません。
誰も持っていかない本だからと、この本を選んだのでしょうが、購入者の特定も簡単なのです。
彼女に対する愛情の点でもあなたの負けですからね。
船乗さんは愛情たっぷりに彼女を愛していました。
手紙に自分の血を付着させない様に、注意を払って扱っていた様です。
その為、手紙に入って気の血も付着されていませんでした。
まあ、空野ツバサさんを犯人にしようとした時点で、あなたの恋は終了しました。
正直に自首することをオススメします。」
真犯人の青木久雄(あおきひさお)はしばらく俯いていたが、観念した様に話し始めた。
「ふふ、完璧だと思っていたのにバレてしまうとは……。
探偵役を高校生にやらせれば、すぐにストーカー男を犯人にしてくれると思っていたのに……。
油断し過ぎましたね。
これなら病死を信じ込ませた方が良かったです。
それなら確実に成功したはずですからね!」
「確実に成功する犯罪なんてありません!
たとえ誰にもバレなくても、幸せな人生なんて送れませんよ。
人を殺したという犯罪がずっと付いて回ります。
今逮捕されて、完全犯罪を暴露される方が幸せです。
たとえ仕事を無くし、周囲の人から殺人犯だと言われ続けたとしてもね。
見た感じ最初の数年は、逮捕されて罪を罰せられる方が辛いですが、刑務所を出る頃には晴れ晴れとした表情をしていますよ。
逆に、ずっと逮捕されなければ、数年で死んでしまう場合さえあるのです。
あなたはついていますよ。
たった数年で自分の犯した罪を償えるんですから……。
その後は、頑張って仕事を探して、人々の役に立てる様に頑張り続けてください。
きっと空野ツバサさんも歌で応援してくれる事でしょう!」
「ふっ、彼女を幸せにする資格なんて、俺には無かったということか?」
「いえ、あなたの助けが無ければ、彼女は今の地位にいません。
きっとあなたが困っている時には同じ様に助けてくれることでしょう。
それまでは、私が助力して彼女を少しは助けてあげたいと思います。
では、ブタ箱で精神を鍛えてきてくださいね」
青木久雄(あおきひさお)は、野村警部に連れられて、警察署まで連行された。
かなりの屈辱と挫折、偏見などを経験するだろうが、数年後は穏やかに出てこれるだろう。
心配すべき事は、そういう人達の将来が中々難しい事だ。
復帰して頑張ろうと決意しても、社会が活躍の場を与えてくれない。
なるべくそうした人も仕事が見付けやすい様にしないと、また犯罪に走る可能性がある。
工場作業でも良いから、それなりに信頼を踏める段階を作ってあげたいものだ。
刑務所でも、出所した人を推薦する様な制度を設けた方が親切だろう。
それが再発防止につながる。
「でも、今回の事件の功労者は、木霊ですね。
青木久雄(あおきひさお)を油断させる事ができなければ、古本屋に来る事もなかったでしょうし、そのまま毒針付きの本が放置され続けた可能性もあります。
お疲れ様です!」
遠野さんは、ニッコリ笑いながら、エルフモードを解除する。
ふっわっと良い匂いが漂って来た。
黒い髪の毛がカーテンの様に、彼女の後ろを一瞬遮った。
制服の白いラインがより強調され、自然とスカートに目が移る。
「いや、そんな対した事はしてないよ。
遠野さんにアドバイスされた通りに話しただけだよ。
上手くいったのは、やっぱり遠野さんの実力だよ。
まあ、度胸は少し付いた気がするけど……」
オレがそう言うと、釈放されていたストーカー男が同意する。
彼もこの事件の功労者として優遇された様だ。
「はあ、はあ、はあ、俺も空野ツバサさんが悪い男に騙されないで良かったです。
これからも影ながら彼女を見守っていきます!」
「お前、彼女の恋人が死んで、彼女のマネージャーが逮捕されて、自分が勝者になった気でいるんじゃないやろうな?
はっきり言って、ストーカー男なんて真っ先に恋人候補から外されるんが落ちやで!
まずは、大学卒業して、仕事しろや!
ストーカーは犯罪やで!」
「はあ、はあ、はあ、こんなに俺を心配してくれるなんて……。
分かりましたよ。
次は、あなたに付いていきます!
恋人として、死んでもあなたを守り抜きます!」
「うわあ、要らんわ!
付いて来るな!」
ストーカー男の恋の対象は、鏡野真梨に移った。
要らん世話好きだし、実は押しに弱い。
努力次第では、両想いも可能だろう。
新たな目標に向かって頑張れ、ストーカー男よ!
次の日、新聞にオレの事が出ていた。
轟木霊君、勇み足でミステリーという見出しだった。
父親と兄貴のコメントが載っていた。
「失敗など良くある、重要なのは学ぶ事だ。
萎縮せず、努力を続ければ、いずれは成功し始めるだろう。
普通は、失敗したから止めるという人が多いのが現状だがな。
努力を止めない事が重要だ。
彼には、もっと幅広い活動をして失敗してほしい。
それが今後の成長に繋がるのだ!」
「犯人を追い詰めるのに必要なのは、幅広い視野と発想力だ。
いくつもの可能性を考慮し、真犯人を追いつめていくのだ。
失敗と試行を繰り返し、何十年もかけて一人前になるのだ。
半人前を激しく叩くのは、半人前以下の奴らだけだ」
編集者はこう書いてまとめている。
「まあ、派手なパフォーマンスを失敗しましたが、度胸と勇気は立派な様です。
真犯人は、この後すぐに捕まった様なので、彼の活躍によって奮起された警官もいたという事でしょう。
今後の成長に期待というところですね!」
その新聞を見ていた人物の一人が、オレに興味を持ち始めた。
新聞を真上に投げ捨て、青色の太刀で新聞を粉々に切り裂いていた。
相当の技術が無ければ、紙のような軽い物を切ることはできない。
彼はその道のプロなのだ。
「ふーん、俺の妹に恋心を抱かせた男は、相当頑張っているようだな!
面白い、いずれは俺が直々に相手をしてやろう。
妹を奪って行くと言うのなら、俺を倒せるほどの実力でなければ許さない。
死闘をするのが楽しみだな!」
机に落ちた紙切れは、オレの姿を写した写真を綺麗に切り取っていた。
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