ファンタジー世界なのに無双もできない微オタク転生女子ですが、どうやら悪役令嬢になったらしいのでそれなりに頑張ってみます。

らおぴん

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ちょっと待って!

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机上には、本の山。
盛り盛りだ。
いずれ学問所に叩き込むつもりでいたのなら、暇をもて余していた時分に予習させといて欲しかった。

とは言え私はさほど勤勉ではない、一夜着けタイプ。
夏休みの宿題はギリギリまでできなかったクチだ。
いくら暇でも、こうした義務を課されると、多分直前まで怠けていたことだろう。

あきらめて、一番上の薄い一冊を手にとってみる。
うん、やっぱりつまんない。
とりあえず数冊、パラパラと拾い読みしてみる。

前世みたいに複雑怪奇な理論や数式なんかがあるわけではなく、身分とか、作法とか、官位とお仕事の事とか……。
法律もあるけど、なんか、回りくどい割には稚拙な気がする。
こういう事務的な文書に、「輝ける太陽」とか「天より授かったなんちゃら」とか、権力におもねるような装飾を入れるなっての!
あ、自国と諸外国の歴史はわりと面白いかも。
自国と王家ヨイショの美辞麗句だらけで読みにくいけど、突っ込み所満載のお伽噺って感じ(笑)。

ふーん、この程度の幼稚な内容の癖に、「庶民や女には無理、不要」なんて言ってんの?
まあね、支配したり、都合よくモノ扱いするには、バカ相手の方がいいもんね。
とはいえ、将来の王の側近ともなると、傍目に見ての聡明さが必要になるわけだ。

王妃候補かあ……。
面倒くさそう。

それに、転生して、令嬢とくれば、前世でよくあったアレじゃない?
ほら、乙女ゲームってやつ。
本体の乙女ゲーム自体はやったこともなければ、正直、興味もなかったし。
でも、少しでも活字が好きなら、悪役令嬢モノの小説や漫画と全く無縁ではいられないくらい、一時期、創作界を賑わしていた題材だ。
ゲームを知らない私でも、結構色々と読み込んだものだ。

というか、たいがいゲーム自体に転生設定はなかったはずだ。
そのゲームや小説の世界の中に転生して、入り込むのがデフォルトなのだ。
ここがどういうストーリーの世界なのかはわからないけど、転生して来ちゃってる時点で、本編ではなく悪役令嬢モノなのはほぼ確定だろう。
せめて知ってるストーリーなら良かったんだけど、ウェルディアナ・ハーンなんて名前の令嬢に、心当たりは全くなかった。

何にせよすとそもそもの現在の立ち位置がよくわからない。

これが乙女ゲームの世界なら、ヒロインか、悪役令嬢、さもなくば全くのモブ。
判別の基準は婚約の有無だが、まだ候補の段階でしかない。

とにかく、ゲーム世界か小説世界かはわからないけど、ここでいわゆる「学園」もどきが出てきたってことは、いよいよ物語が動き出すんだ……。

「カナ、この荷造りは何?」

ふと、周囲に積まれたトランクや衣装箱が目についた。

「お嬢様のお道具ですよ。ご不自由なく整えておりますのでご安心下さい」

「多くない?」

「むしろまだまだでございますよ?とりあえず、当座必要なものを準備いたしました」

ちょっと待って、まさか。

「私、あちらで暮らすのでしたっけ?」

「はい?」

カナが怪訝な顔をする。
今さら何を言ってんだ、とでも言いたげだ。

お父様……。
そりゃ、何の予定もない深窓の姫ですけどね、いきなり生活がまるっと変わるとかないでしょ?
まだ社交界にお披露目もされていないので、親族と、当家にお客様としていらしたほんのわずかの方々としか、面識もないというのに。

……それとも……、門扉より外の世界を知らないままに、ある日突然他家に、ともすれば他国に嫁いだりするのが当たり前の貴族の娘なら、これも普通の扱いなのか。

何も知らなければ、比べて嘆く事もない。
知らなければ、権利を掲げる事もない。
ただ、従うだけだ。

伴侶となる男すら、そうだ。
誰とも出会わなければ、突き付けられた現実が全てだ。


そんな風潮がある中で、私は、この館から出て行く事になったらしい。


お父様の扱いは酷いが、それでも、婚約すらまだの娘を同年代の子女と共に学ばせるとは、この世界では前衛的な方なのだろう。
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