ファンタジー世界なのに無双もできない微オタク転生女子ですが、どうやら悪役令嬢になったらしいのでそれなりに頑張ってみます。

らおぴん

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世間的では

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ほんの数人とは言え、家族と使用人しかいない世界で暮らしていた私にとって、ここでの他人との交流は貴重な体験だ。
殊にアフマディオ様は、微妙な立ち位置ながら、逆に言うならどちらにおいてもさして重要視されていないため、わりと気楽に自由を謳歌しており、何かと世間話が豊富。
権力には絶妙に遠いながらも、かといってないがしろにされるほどではなく、程よく権力を行使しながら多趣味多才を極めておいでの様子だ。
こういう人は、些事も有事も、色々な荒波をものらりくらりと乗り越えて、最後までちゃっかり生き残りそうだ。


彼、曰く
「身分はね、あればお得なちょっとしたスパイス」であるらしい。

そうは言っても、身分には相応の艱難がつきまとうもの。
私自身、そこそこ由緒正しき身分に生まれついた身であるが故に、その辺の実状は熟知している。
今は無駄に身分だけが高い彼だが、王家と将軍家、その何れにおいても次席の後継者であるというスペックは、それぞれの権威に集るアリ達にとっては、すこぶる甘い蜜なのだ。

だが、そんな背景を全く感じさせないアフマディオ殿下は、色々な意味で強い。
その一見無欲な風体は、この世知辛い権力社会での最強の防具となっているようだ。

「いやあ、あのお嬢さんがアレッソ殿に突撃してくれて、本当に良かった」

「あら、愛らしくて素敵な方ですのに、なぜ?」

「まあ、本来は私の立場をより気楽なものにしてくれるはずのお嬢さんだったのでしょうけど、うーん、そうだなあ……、ああいう類いの距離の近さは好きじゃないな」

そこで、ふと言葉を止めた。
視線の先は、セレニスタ嬢。
今は不躾にも席を立ち、アレッソ殿の背後からしなだれかかっている最中だ。

「殿下ぁ、それ、美味しそうです!」

「ん、そうか、ほら、あーんしろ」

ある意味微笑ましいが、高位家系の茶会で見るには、醜悪だ。

「でも、時と場合と相手にもよるかな」

そう言った後、アフマディオ殿下は爽やかな笑みを私に向けた。
際立った美貌はないが顔貌は充分そこそこに整ってはいる、その笑顔は健康的で、なんというか、ちょっと私はときめいた。

この人なら、許容できそうだ。
むしろ、この人をセレニスタ嬢のエサにするなんて、そんなことできない、もったいない。

政略結婚の趣旨的にはハズレなのかもしれないが、私自身、将軍家の御台所や王后陛下とか、暑苦しい立場に陥るのは正直、ごめん被りたいところだ。
このハズレの殿下と共に、政権の中央から一歩引いた場所で、お互い好きに生きて行ければ最適解だ。
他国の技術にも興味津々の彼になら、私の前世の記憶も役立ちそうだし。


それにしても、なんという退屈な茶会。
これから数ヶ月をかけて選ぶはずだったそれぞれの妃候補も決まってしまったも同然だし、もはや、部屋にどころか家に帰っちゃっても良いくらいではあるまいか。


「そろそろ疲れて参りましたわ」

パチリ、と盛大に扇の音を鳴らして宣ったのは、エスタレア様だった。
社交慣れなさっておいでだとは伺っていたが、有無を言わさぬ圧がある。
すかさず反応したのは、名目上、この場で最も身分が高い王世子殿下サンフレッチ様だ。

「それでは、私も失礼いたしましょうかな。エスタレア嬢、部屋まで送ろう」

その傍らで、アフマディオ殿下がさっさと席をたち、サンフレッチ殿下の椅子を引いた。
別にへりくだる必要があるわけではないが、王ばかりか将軍の継承にも近い身でありながら、あえて王世子にかしずいて、王家の立場を将軍家に見せつけているわけだ。

サンフレッチ殿下に手を取られて立つエスタレア嬢の椅子をも引いたアフマディオ殿下は、次いで、私の傍らで深々と頭を下げた。

「王家に連なる高貴な姫君ウェルディアナ嬢、私にエスコートの栄誉を頂戴できますでしょうか」

なるほど、便乗してさっさと逃げ出そうと言うわけだ。

考えてみれば、私と殿下は少し似ている。
顔じゃなく、立場が。

正直言って、容姿に関しては私が数段格上だという自負がある。

それはさておき、この学舎という茶番も、いち早く本来の役目を遂げた。
将軍家の思惑とは、ちょっと違っていそうだけれど。

立場は不安定ながらどちらにも転べる、私とアフマディオ殿下。
利発で抜け目なさそうな、エスタレア嬢とサンフレッチ殿下。
そして権力の座に違和感も疑問も抱かず幸せそうな、セレニスタ嬢とアレッソ殿。

ひとまずは、それぞれが似合いの相手に落ち着いたようではあるし。
何事もなく生きて行けても、時代に大波が押し寄せたとしても、アフマディオ殿下ならなんとなく身をかわしてくれそうだ。
そんな心配はしたくもないが、ここしばらく目の当たりにしてきたアレッソ殿とサンフレッチ殿下とを比べるにつけ、心の奥で何かがざわざわと騒ぐのだ。

いまこの手を添えた温かい腕も、気に入るかどうかは別として、あの2組の男女らも、家族の皆も、ただただ、穏やかに老いていける時代であればよいのだけれど。
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