貴方がここに来ないから~婚約破棄予定の聖女見習いは静かに微笑む~

ハギレ

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「あの……、あっ恐れ入ります。そろそろ学園へ登園された方がよろしいのではないでしょうか?」

侍女の一人が、おずおずと言葉を発した。
一番下っ端みたい、他の侍女に肘でつつかれていた。

私は侍女が何か言いかけた時、じろりと睨みつけた。
領分を超えての発言だから。

「なぜ?」
「え?」

侍女達は不思議そうな顔をした。

「なぜ、私が一人で学園へ向かわなければ行けないのかしら?」

まるで押しかけるように勧めるなんて。

「王太子殿下の婚約者ですから、卒業パーティのパートナーとしてこうして装いました。でも、殿下から音沙汰ないと言う事は、必要とされていないのでしょう」

「ご卒業なのですよね?」

侍女達は呆れたような顔をした。

そんな顔をした侍女達にこちらが呆れた。
だいたい、卒業式に参加していないのよ。
宰相あたりに聞いているか、察していると思っていた。

「私は、昨年飛び級で学園を卒業しています。卒業式には欠席しましたが、後ほど卒業の証書が送られて来ました。だから、今回の卒業式はあくまで殿下の卒業式。私ではないわ。それなのに押しかけるなんて、淑女の風上にも置けないわよね。そう思わない?」

憮然とされた。
貴女達にしたら、娯楽が減ったのかしらね?
いつもは用が済んだら、直ぐにいなくなっていたもの。

「ご理解頂けたかしら?」



そんな話をしている時、体に不快な衝動が走った。


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