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第十四話 王城

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「ここが王城か……」


 俺はナイジェルとの謁見のために、再び王都を訪れていた。


 スティーブンスと別れて自宅に帰った際に、アンリから手紙が来ていなかったか母に確認したところ、どうやら俺があの偽使者と出て行った日の夜に届いていたらしい。


 その手紙を見て両親はだいぶ混乱したようだった。


 ニアに関しても、ラルフを助けに行くと言って飛び出して行こうとしていたらしい。


 家族には心配をかけてしまって、本当に申し訳ない……


 俺が謝ると両親とニアは、俺が無事ならよかったと言ってくれた。


 改めて今後は気を引き締めていかないとな。


「それで、何でついてきてるんだ二人とも?」


「ん~?そんなの決まってるだろ~!俺も王城に入ってみたいからだぁ~!」


「謁見、ワクワク。」


 今回の謁見は俺だけで行く予定だったのだが、おもしろそうだからとニアとケントもついてきた。


 二人ともこう言ってるが、本当はこの前のオレ誘拐未遂の件もあり心配だったのだろう。


 ……泣けるぜ。


 二人を失わないためにも、今回の謁見はかなり重要だ。


 いつまたゲネシス教の奴らが、襲いかかってくるか分からない。


 それにナイジェルへの疑いも、白黒ハッキリさせないとな。
 

 そうこう考えていると、王城の門へ到着した。


「そこの三人!何者だァッ!」


 門番の兵士が長い槍を構えながら叫ぶ。


「僕はラルフと言います。この二人はニアとケントです。アンリ第二王女殿下からお手紙を頂戴して参上いたしました。これがそのお手紙です」


 俺はポケットからアンリの手紙を取り出し、門番へ見せた。


「確かにアンリ殿下からのようだ。しばし待たれよ」


 門番の兵士は手紙に目を通すと、奥へ確認に向かった。


 そして数分後、門番の兵士がこちらに戻ってきた。


「確認が取れた、入場を許可する!」


 門番の兵士が宣言すると、大きな城門がギギギと音を立てて開門した。


 門が開くと、正面に若い金髪の執事が立っていた。


「この度、ラルフ様御一行の案内役を務めさせて頂きます。ハリーと申します」


 そう言うと、執事のハリーは美しい礼を披露する。


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


「よろしくなー!」


「うむ、ヨロシク。」


 何故かニアがふんぞり返っているが、ハリーは特に気にする様子もない。


「それではご案内いたします」
 

 ハリーはそう言うと、コツコツと音を立てながら進み出した。


「それにしても王城ってのはでっかいな~!一日じゃ周りきれないんじゃねぇか~?」


「はい、王城は砦の役割も兼ねておりますから」


 ケントがアホな質問をして、ハリーが答える。


 そんなやりとりを数回していると、ハリーの足が止まった。


「それでは、こちらのお部屋でお待ちください」


「わかりました」


 ハリーがガチャっと音を立てて部屋を開ける。


 すると目の前には、とても平民には似合わない豪華な造りの部屋が広がっていた。


「うぉぉ!すげぇぇ!」


「勝ち組の部屋……!」


 部屋を見るなりニアとケントは大興奮だった。


「ラルフ!見ろよこのベット!デカすぎて俺たち三人寝転がっても全然余裕そうだぞ!」


「わっはっはー!わっはっはー!」


 ケントは見たことのない大きさのベットを見て、またアホな感想を言っている。


 ニアは我を忘れてベットで飛び跳ねていた。


「それでは、アンリ様にお知らせして参ります。しばらくお待ちくださいませ」


 そんな俺たちを見ても顔色ひとつ変えずに、ハリーは部屋の外へ出て行った。


 よく鍛えられた執事だ。


 もし俺が彼の立場だったら、少し態度に出てしまいそうなものだが。


 さすがは王城の執事といったところか。


 そして数十分後、部屋の扉をノックする音が響いた。


「失礼いたします」


 ようやくアンリの準備が完了したのか、ハリーが戻ってきた。


「アンリ様のご準備が整いましたので、ご案内いたします」


「はい、よろしくお願いします」


 ハリーの案内のもと、俺たちは一際大きな扉をした部屋の前に到着した。


「アンリ様、ラルフ様御一行をお連れしました」


 ハリーがそう言うと大きな扉がガチャっと開き、部屋の中から二名のメイドが俺たちを招き入れる。


「ラルフ!久しぶりね!」


 部屋の奥から聞き覚えのある声が聞こえる。


 声のした方向を見ると、相変わらず綺麗なドレスに身を包んだアンリがそこにいた。


「お久しぶりです、アンリ殿下。この度はナイジェル殿下との謁見の件、お取り次ぎ頂き感謝いたします」


 俺は挨拶と同時に、すかさず頭を下げる。


 ニアとケントも同様にしっかりと頭を下げている。


 俺の真似をするんだぞと、二人に事前に伝えておいてよかった……


「いいのよ、頭を上げて。そんなに畏まられても困っちゃうわ」


「ありがとうございます」


 俺たちはアンリの言葉を聞き、頭を上げる。


「とりあえず三人とも座って!今お茶菓子を用意させるから。マイン、お願いしてもいいかしら?」


「かしこまりました」


 恐らくアンリお付きのメイドであるマインは、綺麗なお辞儀を披露して準備へと向かった。


 そして数分後、マインは銀製のカートにお茶菓子を乗せて戻ってきた。
 

「失礼いたします」


 煌びやかなテーブルに、豪華なお茶菓子が並べられていく。


「ありがとうマイン、さっ!積もる話もあるでしょう!ナイジェルの準備が出来るまで付き合ってもらうわよー!」


 このアンリの掛け声を皮切りに、賑やかなお茶会が始まった。



 
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