お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理

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 キッチンで朝食を作っていると、お父さんがリビングにやってきた。
「おはよう、朱里。鼻唄を歌うなんて、やけにご機嫌だな」
「おはよう、お父さん」
お兄ちゃんと文化祭を回れたり、今週末はお兄ちゃんと海にいく予定があったり。最近、お兄ちゃんと一緒にいられる機会が多くて嬉しい。どうやら、そんな気持ちが自然と溢れ出してしまっていたらしい。でも、お父さんに正直に話して、私の気持ちがばれてしまって、それがお兄ちゃんに伝わってしまっては困る。

 まだ、お兄ちゃんに好きな人がいる以上、私は振られてしまうことが確定している。それなのに、気持ちを暴露されて、家の中で振られることほど悲しい振られ方はないと思うから。

 というわけで、結局、
「今日は卵焼きがいつもよりうまく巻けたの」
と誤魔化すことになった。実際に、うまく巻けたんだし、嘘はついてないよね。

 「おっ、今日はじゃことねぎの卵焼きか」
「うん」
ちなみに、お味噌汁の具は、しめじとわかめだ。

 お父さんのぶんの、ご飯とお味噌汁をよそって、お父さんの前におく。
「いただきます」
お父さんが食べながら、テレビのスイッチを入れた。丁度、朝の天気予報をやっている。

 『××日に発生した台風の影響で週末は激しい雨や高波に──』
「うそっ!」
天気予報では、今週末は雨だった。しかも、極めつけのようにとても激しい雨マークが示されている。

 そんなぁ。めちゃくちゃ楽しみにしてたのに。私の日頃の行いが悪いからだろうか。
「どうした、週末何かあったのか?」
がっくりと肩を落とした私に、お父さんが心底不思議そうな顔をしている。
「ちょっとね……、出かける用事があったんだ」
「そうか、それは残念だったな。まあ、そういう日もある」
お父さんが、私の肩に、ぽん、と手を置いた。うう、他人事だからって。いや、他人事だけどさ。


 お父さんを見送って、起きてきたお兄ちゃんに、泣きそうな気分になりながら報告する。
「台風で今週末雨なんだって。だから……」
海には行けないね。するとお兄ちゃんはきょとん、とした顔をした後、笑った。
「だったら、海は来週にしようか」
「……え?」
思わぬ提案に瞬きをする。

 「来週には、台風も去ってるでしょ。まあ、朱里にも予定がなかったら、だけど」
「行く! 行きたい!」
私が思わず前のめりになって強く頷くと、お兄ちゃんは笑った。
「じゃあ、来週、行こうか」




 私は、海に向けて、大量にてるてる坊主を作り、晴れ乞いの呪文を唱えたりとできうる限りの雨対策を行った。結果、天気予報通り、今日は晴れた。

 「やった! 晴れた、晴れたよ!」
子供のように、空を指差して笑う私に、お兄ちゃんは笑った。
「朱里、海のために頑張ってたもんね」
違う。私が頑張ってたのは海のためじゃない。お兄ちゃんと、海にいくために頑張ったのだ。けれど、そんな告白も同然のこと言うわけにもいかず、私はうん、と頷くに留めた。

 電車に乗って海に行く。海は秋だからか、人気はほとんどなかった。たまに、犬の散歩にくる人たちくらいだ。

 静かな海を、お兄ちゃんとシーグラスを探しながら、歩く。
「あった」
と、いきなり水色のシーグラスをお兄ちゃんが発見した。見つけたシーグラスをはい、どうぞ。と私に渡してくれる。水色のシーグラスは、淡く色づいていて、とても綺麗だ。歩いていると、定番の水色や緑色のもののほかに、オレンジ色のものも見つけた。

 たまに、シーグラスを見つけて話すだけで和気あいあいと話すっていう感じではなかったけれど、無言も気まずい無言ではなく、穏やかな時間として流れた。

 お兄ちゃんと過ごすこういう時間、好きだな。

 「あっ!」
歩いていると、特徴的な形をしたシーグラスを見つけた。少しいびつな三角にもハート型にも見える、シーグラスだ。

 「見て、ハート型だよお兄ちゃん!」
しゃがみこんで、シーグラスを指差す。
「どれ?」
「これだよ、これ」
振り向くと、お兄ちゃんが思ったよりも近くにいて、どぎまぎしてしまう。そんな私に気づいてないお兄ちゃんは、もっと近寄る。

 「っ!」
うわわわ。思わず赤面してしまった。
「ほんとだ、ハート型」
お兄ちゃんは、無邪気に微笑む。

 「……朱里?」
と、赤い顔の私に気づかれてしまった。
「まさか、風邪でも引いたんじゃ……」
「ち、違う、違う。な、何でもないから、大丈夫」
「そう?」
「うん」

 それでも、私のことを心配したお兄ちゃんにより、帰ることになってしまった。でも、今日は、お兄ちゃんと出掛けられて良かったな。

 「お兄ちゃん、今日はありがとう」
「僕も楽しかったよ」


 家に帰って、集めたシーグラスを眺める。シーグラスは、美術の時間で写真立てを作るときに使おう。また、お兄ちゃんとお出掛けしたいな。そう思いながら、目を閉じた。
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