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お兄ちゃんは、婚約者様!!……だよね?
大学生編 そのいち
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今日から、待ちに待った大学生活。
「ふふ、朱里楽しそうだね」
期待に胸を膨らませていると、お兄ちゃんが、柔らかく微笑んだ。
「うん、だってこれからはお兄ちゃんと一緒に暮らせるもん」
私とお兄ちゃんは同棲を始めていた。お兄ちゃんは、院に進む予定なので、少なくとも、あと四年は一緒に暮らせる。一年間、寂しかったけれど、これからは毎日一緒なのだと思うと、嬉しい。
「そうだね、僕も嬉しいよ」
お兄ちゃんがそう言いながら、私の髪を整えてくれた。
鏡を確認する。入学式のために購入したスーツは、まだ着なれないけれど。いつかは、これを毎日着て働くことになるんだよね。何だかそう思うと、背筋が伸びる気がした。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
お兄ちゃんは、新入生にサークルのビラ配りをしないといけないらしく、たくさんのビラを持っている。そんなお兄ちゃんの隣を歩く。ヒールも履きなれないけれど、ちょっと大人に近づけたようで嬉しい。
お義母さんとお父さんは、入学式の会場で待ち合わせだ。
お義母さんたちは、まだかな、ときょろきょろしていると、誰かが私たちに向かって突進してきた。
「小鳥遊せんぱーい」
「!?」
この声は! よく知っている、けど、まさか。
振り向きたくない。いや、でも。そう葛藤しているうちに、声の主は私たちに近寄り、お兄ちゃんに抱きついた。
「えへへ、先輩を追いかけて、同じ大学にきちゃいました!」
「愛梨ちゃん!!!」
やっぱり、愛梨ちゃんだった。同じ大学だったなんて。まぁ、でも、愛梨ちゃんは頭がいいし、お兄ちゃんのことを諦めてなかったし、進路としてありうるなぁ、とは思ってた。でも、まさか、本当に同じ大学を受験していたなんて。
お兄ちゃんは、やんわりと愛梨ちゃんの腕を外した。
「やぁ、中原さん、入学おめでとう」
「ありがとうございます!」
お兄ちゃんと会うのも一年ぶりだからか、愛梨ちゃんはものすごくテンションが高い。そして、愛梨ちゃんの視界にはどうやら私は入っていないようだ。
「先輩は、何の部活やサークルに入ってますか!? 私も同じところに入りたいです!!」
「じゃあ、ビラを一枚渡しておこうか」
む、むむむむむ。面白くない。
私も負けじとお兄ちゃんに抱きつく。人前でこんなこと、そうそうしないけど、このままだと、愛梨ちゃんとお兄ちゃんの間に割って入れそうになかった。
そこまでしてようやく、愛梨ちゃんの視界に私が映ったようだった。
「朱里ちゃん? 朱里ちゃんも同じ大学だったんだね」
「よろしくね、愛梨ちゃん。でも、お兄ちゃんは渡さないから」
「私だって、負けないよ。今一番近くにいるのは朱里ちゃんかもしれないけど、いつかはそれが私になるって信じてるから」
ばちばちとにらみ合う。と、そこで、お義母さんたちがやってきた。
「朱里ちゃん、優」
「お義母さん!」
手を振ってくれたお義母さんに手を振り返して、にらみ合いを切り上げて、お義母さんにかけよる。
「入学おめでとう、朱里ちゃん。ふふ、スーツも似合ってる」
「ありがとう、お義母さん」
「お義母様、私の名前は、中原愛梨と申します。今はただの後輩ですが、いずれは──」
すかさず、愛梨ちゃんもお義母さんにかけよったところで、冴木先輩がやってきた。
「中原さん、あっちで、ご両親が呼んでたよ」
ちなみに、冴木先輩もお兄ちゃんと同じ工学部だ。
「残念ですが、また今度改めてご挨拶にうかがいますね!」
愛梨ちゃんは、心底残念そうにしながら、ご両親の元へと帰っていった。冴木先輩も、せっかくの家族の時間だから、とお兄ちゃんからビラをとると、どこかにいってしまった。
「元気なお友達がいるのね」
お義母さんはくすくすと笑っていたけれど、私としてはそれどころではない。
「……お友達というか、ライバルというか」
ごにょごにょと言っていると、何やらお父さんとお兄ちゃんが話していた。
「優くん、君を信頼して朱里を任せてるんだ。わかっているとは思うが、くれぐれも婚前に手を出すような真似は……」
「はい。わかってます」
「お兄ちゃん、お義父さん。神妙な顔してどうしたの? そろそろ、入学式始まるよ」
入学式のホールに入る前に、皆で写真を一枚とった。
そんな感じで、私の大学生活は始まった。
「ふふ、朱里楽しそうだね」
期待に胸を膨らませていると、お兄ちゃんが、柔らかく微笑んだ。
「うん、だってこれからはお兄ちゃんと一緒に暮らせるもん」
私とお兄ちゃんは同棲を始めていた。お兄ちゃんは、院に進む予定なので、少なくとも、あと四年は一緒に暮らせる。一年間、寂しかったけれど、これからは毎日一緒なのだと思うと、嬉しい。
「そうだね、僕も嬉しいよ」
お兄ちゃんがそう言いながら、私の髪を整えてくれた。
鏡を確認する。入学式のために購入したスーツは、まだ着なれないけれど。いつかは、これを毎日着て働くことになるんだよね。何だかそう思うと、背筋が伸びる気がした。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
お兄ちゃんは、新入生にサークルのビラ配りをしないといけないらしく、たくさんのビラを持っている。そんなお兄ちゃんの隣を歩く。ヒールも履きなれないけれど、ちょっと大人に近づけたようで嬉しい。
お義母さんとお父さんは、入学式の会場で待ち合わせだ。
お義母さんたちは、まだかな、ときょろきょろしていると、誰かが私たちに向かって突進してきた。
「小鳥遊せんぱーい」
「!?」
この声は! よく知っている、けど、まさか。
振り向きたくない。いや、でも。そう葛藤しているうちに、声の主は私たちに近寄り、お兄ちゃんに抱きついた。
「えへへ、先輩を追いかけて、同じ大学にきちゃいました!」
「愛梨ちゃん!!!」
やっぱり、愛梨ちゃんだった。同じ大学だったなんて。まぁ、でも、愛梨ちゃんは頭がいいし、お兄ちゃんのことを諦めてなかったし、進路としてありうるなぁ、とは思ってた。でも、まさか、本当に同じ大学を受験していたなんて。
お兄ちゃんは、やんわりと愛梨ちゃんの腕を外した。
「やぁ、中原さん、入学おめでとう」
「ありがとうございます!」
お兄ちゃんと会うのも一年ぶりだからか、愛梨ちゃんはものすごくテンションが高い。そして、愛梨ちゃんの視界にはどうやら私は入っていないようだ。
「先輩は、何の部活やサークルに入ってますか!? 私も同じところに入りたいです!!」
「じゃあ、ビラを一枚渡しておこうか」
む、むむむむむ。面白くない。
私も負けじとお兄ちゃんに抱きつく。人前でこんなこと、そうそうしないけど、このままだと、愛梨ちゃんとお兄ちゃんの間に割って入れそうになかった。
そこまでしてようやく、愛梨ちゃんの視界に私が映ったようだった。
「朱里ちゃん? 朱里ちゃんも同じ大学だったんだね」
「よろしくね、愛梨ちゃん。でも、お兄ちゃんは渡さないから」
「私だって、負けないよ。今一番近くにいるのは朱里ちゃんかもしれないけど、いつかはそれが私になるって信じてるから」
ばちばちとにらみ合う。と、そこで、お義母さんたちがやってきた。
「朱里ちゃん、優」
「お義母さん!」
手を振ってくれたお義母さんに手を振り返して、にらみ合いを切り上げて、お義母さんにかけよる。
「入学おめでとう、朱里ちゃん。ふふ、スーツも似合ってる」
「ありがとう、お義母さん」
「お義母様、私の名前は、中原愛梨と申します。今はただの後輩ですが、いずれは──」
すかさず、愛梨ちゃんもお義母さんにかけよったところで、冴木先輩がやってきた。
「中原さん、あっちで、ご両親が呼んでたよ」
ちなみに、冴木先輩もお兄ちゃんと同じ工学部だ。
「残念ですが、また今度改めてご挨拶にうかがいますね!」
愛梨ちゃんは、心底残念そうにしながら、ご両親の元へと帰っていった。冴木先輩も、せっかくの家族の時間だから、とお兄ちゃんからビラをとると、どこかにいってしまった。
「元気なお友達がいるのね」
お義母さんはくすくすと笑っていたけれど、私としてはそれどころではない。
「……お友達というか、ライバルというか」
ごにょごにょと言っていると、何やらお父さんとお兄ちゃんが話していた。
「優くん、君を信頼して朱里を任せてるんだ。わかっているとは思うが、くれぐれも婚前に手を出すような真似は……」
「はい。わかってます」
「お兄ちゃん、お義父さん。神妙な顔してどうしたの? そろそろ、入学式始まるよ」
入学式のホールに入る前に、皆で写真を一枚とった。
そんな感じで、私の大学生活は始まった。
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