軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理

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初恋

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さて。朝食を食べ終わったあとは、いよいよ仕事だ。私は、シェフにありがとう、美味しかったと伝えてね、とメヴィーに頼んで、出発することにした。

「馬車で移動なんて変な感じだわ」

 窓の外からぼんやりと見える景色を眺めながら、私はふぅ、と息をついた。だって、今までは少しでもお金を浮かすために、競歩だったものね! 馬車って、少し揺れるけどすっごく快適~!!

 流れる景色ひとつひとつに、すごい、綺麗! と感動しているうちに時間は過ぎて、あっという間に職場についた。

 私の職場。それはもちろん、王立天文台だ。

 天文台、といっても、他の国とは違って、私の国の天文台は星を観察することが仕事じゃない。

 「バベル」と呼ばれる棟に入りながら、同僚たちに声をかける。
「おはよう、みんな!」
「やっほー、リノア! じゃなかった、今日からはリノア様って呼んだ方がいい?」

 だって、なんといってもお貴族様だものね。そういった、親友のナナを軽くこづく。

「もー、やめてよ」

 私は確かに旦那様──私史上二番目にイケメン──と結婚した。そして、貴族になったけれど、職場でまでその身分関係を持ち出されたくはなかった。

「ここでは、雨雲がどれだけ描けるか、が大事でしょ?」
 この国は、雨が自然に降ることは滅多にない。だから、私たち空術師が、雨雲を空に描くのだ。
「まぁ、そうね」
 肩をすくめたナナに、そんなことより、と話題を提供する。

「私の旦那様ってば、とっても、かっこよかったわ!」
「師団長が面食いで有名なリノアに、政略結婚、なんて話をもってきたときは、みんな正気か? って心配してたものね」

 師団長が正気で良かったわぁ、とナナは続けながらにやりと笑った。
「そっか、そっか。でもこれでリノアも奥様、だもんねえ。私よりも先に結婚するとは思わなかった。でもさ」

 急に声を落としたナナに、首をかしげる。どうしたのかしら。

「リノアの初恋、は、いいの? ……様子を察するに、ランキング一位の更新はできなかったようだけど」

 ナナのその言葉で、私史上一番にカッコ良かった彼に、記憶が引き込まれる。

『僕が格好いいなんて。……君って変なの』

 ほんっと、変。

 そう悪態をつきながらも、赤くなった耳が。私の言葉に喜んでいることを示していた。私は、その赤みを帯びた、白い肌に触れ──。

「ア。……リノアってば! もうすぐ始業よ」

 ナナの呼び掛けにはっ、とする。そうだわ、もうすぐ鐘が鳴る。この始業の鐘が鳴る前に配置についていないと、師団長からのカミナリが落ちるのだ。

 また、あとでね。

 そう小声で付け足して、私たちはバベルを登り、各々の配置についた。
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