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解放? 私が、政隆さんを? 解放ということは、そもそも政隆さんは何かに縛られているのだろうか。
「どういう意味かしら?」
「そのままの意味だよ。緑谷くんは、深碧家の当主なんてしたくないの。だから、解放してあげてよ。深碧さんなら、それができるでしょう?」
政隆さんから、深碧家を継ぎたくないなんて聞いたことはない。深碧家の分家筋はなにも緑谷だけじゃない。本当に、政隆さんが当主になりたくないのなら、この婚約は解消することはできたのだ。それをしないということは、政隆さんには継ぐ意志があるのだと思っていたけれど。
「政隆さんがあなたにそういったの?」
「ううん。緑谷くんは、軽々しく不満を口に出してくれないよ。でも……、私にはわかるの」
口に出さなくてもわかる。失礼かもしれないけれど、それは。
「桜井さんのただの想像じゃないかしら?」
私がそういうと、彼女は顔を真っ赤にした。
「そんなことない! 絶対、緑谷くんはそう思ってるもん! とにかく、そういうことだから」
主人公が去っていく。相手の思ってることが想像じゃないなんて、彼女は超能力でも持ってたのかしら。首をかしげつつも、私も寮に帰ることにした。何より昨夜一睡もしてないせいで、とても、眠い。
夕食をとり、お風呂に入った後の私は深い眠りへと落ちていった。
「……ん」
どのくらい寝ただろうか。瞬きをして、目を覚ます。
「!?」
ぼんやりと辺りを見渡して、ようやく気づいた。ここは、私の寝ていた自室じゃない。辺りを紫の靄が包んでいる。なぜ? まだ夢の続きを見ているのかしら。
「ようこそ、我が世界へ」
後ろから、声がした。ぞくり、と肌が粟立つ。この感覚を私は、知っている。振り向きたくない。それなのに、体が言うことを聞かない。強制的に振り向かされ、翡翠の瞳と目があった。
「我が愛しの花嫁」
うっとりとした声で囁いたのは、そう。
「……鬼」
「どういう意味かしら?」
「そのままの意味だよ。緑谷くんは、深碧家の当主なんてしたくないの。だから、解放してあげてよ。深碧さんなら、それができるでしょう?」
政隆さんから、深碧家を継ぎたくないなんて聞いたことはない。深碧家の分家筋はなにも緑谷だけじゃない。本当に、政隆さんが当主になりたくないのなら、この婚約は解消することはできたのだ。それをしないということは、政隆さんには継ぐ意志があるのだと思っていたけれど。
「政隆さんがあなたにそういったの?」
「ううん。緑谷くんは、軽々しく不満を口に出してくれないよ。でも……、私にはわかるの」
口に出さなくてもわかる。失礼かもしれないけれど、それは。
「桜井さんのただの想像じゃないかしら?」
私がそういうと、彼女は顔を真っ赤にした。
「そんなことない! 絶対、緑谷くんはそう思ってるもん! とにかく、そういうことだから」
主人公が去っていく。相手の思ってることが想像じゃないなんて、彼女は超能力でも持ってたのかしら。首をかしげつつも、私も寮に帰ることにした。何より昨夜一睡もしてないせいで、とても、眠い。
夕食をとり、お風呂に入った後の私は深い眠りへと落ちていった。
「……ん」
どのくらい寝ただろうか。瞬きをして、目を覚ます。
「!?」
ぼんやりと辺りを見渡して、ようやく気づいた。ここは、私の寝ていた自室じゃない。辺りを紫の靄が包んでいる。なぜ? まだ夢の続きを見ているのかしら。
「ようこそ、我が世界へ」
後ろから、声がした。ぞくり、と肌が粟立つ。この感覚を私は、知っている。振り向きたくない。それなのに、体が言うことを聞かない。強制的に振り向かされ、翡翠の瞳と目があった。
「我が愛しの花嫁」
うっとりとした声で囁いたのは、そう。
「……鬼」
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