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そのいち

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淡く桃色に色づいた桜が咲き乱れている。私立凰海学園と刻まれた校門をくぐり抜けると、今日から新しい日々の始まりだ。

 私の名前は、西ヶ原菫。今日からこの私立凰海学園の一年生。凰海学園は、超名門校で、全国のお坊ちゃんお嬢様が集まる学園だ。

 私は学園でいうといたって普通の家柄。だから波風たてず、平穏無事に学園を卒業したいから、長いものには巻かれろ! を座右の銘にして、生きたいと思う。なんといっても、この学園を無事に卒業できたら、それだけでステータスになる。だから、何事もなく卒業するのはとっても大事だ。

 私は適当に学園生活を過ごした。

 それなりに権力のある女の子の取り巻きになり、適当に授業を受け。

 それなりに、順調に学園生活を送っていた、はずだ。

 「生徒会?」
先生に呼び出され、首をかしげる。
「ええ、そうなの。ぜひ、西ヶ原さんにやってもらえないかしら」

生徒会執行部の役員にならないか、と先生に聞かれた。どうやら、入試でそれなりの成績を修めることができたことが、評価されたらしい。会長や副会長は選挙で決まるらしいけれど、書記や庶務は、こうして推薦で決まるようだった。

 私のモットーは、長いものには巻かれろ! なので、もちろん、二つ返事で頷きましたとも。

 私が生徒会に入ったことは、瞬く間にクラスに広まることとなった。どうしてかって? それは、この学園の会長様と副会長様がとってもとっても人気だから。

 「すごいわ、菫さん。あの、冷泉様や、鷹司様と一緒に仕事ができるなんて」

 冷泉グループも鷹司グループも、大グループだ。私の家なんて比較にならないほどの。そのうえ、顔がいいときてる。これが人気にならないはずがなかった。

 なんでも、ファンクラブもあるんだそうだ。

「たまたまですよ、凛さん」
秋月凛。私が取り巻きをしているお嬢様だ。生徒会の仕事を真面目に行いつつ、彼女の機嫌がとれるような会長や副会長のネタを集めよう! そしたら、きっと平穏無事に学園生活を送れるよね?

 なーんて、思っていた時期もありました。

 ──数ヶ月後。
 「君が、好きだよ。他の誰かじゃない、君がいいんだ」
そういって、淡い色合いの冷泉副会長様が微笑む姿はとっても様になる。写真を撮りたいくらいだ。……自分が当事者じゃなければ。

 「俺の方が、お前を幸せにできる」
腕を引っ張られて、バランスを崩す。そのまま、腕のなかに抱き込まれた。鷹司会長様の悩ましげなお顔もずいぶんと麗しい。写真を撮りたいくらいだ。……自分が当事者じゃなければ。


 「それでどっちを選ぶんだ?」
「どっちを選ぶの?」

 ひええええええええ。どっちも選ぶ気はありませーん、とかいったら、殺されるかな、これ。
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