特別になれなかった私が、最愛のあなたの寵妃になるまで

夕立悠理

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なんの意味ももたない、なにもできない、私

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巫女になれなかった巫女候補は、巫女に仇なすことのないように、力を封じて、国外追放されるのが決まりだった。

 力を封じる腕輪をつけられた私は、がたごとと馬車に揺られていた。

 馬車に寄りかかりながら、考える。


 私は、結局『特別』になれなかったのだ。そもそも、なんで私は『特別』にこだわっているのか。それは、妹が産まれる直前になくなった祖母の言葉だった。

 「セリーヌ、貴女は『特別』な子ですよ」
幼い私は頷いた。父も母も私を大切にしている。彼らにとって、間違いなく私は『特別』だろう。

 それから、祖母は続けた。
 「『特別』ではない貴女に意味はありません」


 確かに、そう言ったのだ。その後、程無くして祖母は亡くなった。


 『特別』でなければ、意味がない。
 じゃあ、『特別』になれなかった、今の私は?

 ──なんの意味も持たない、存在、なのか。事実、そうだ。巫女候補として、神殿にあがる際に、侯爵令嬢という身分は捨てさせられ、私に目覚めた植物の成長を助けるという力も今は封じられている。

 貴族として生きてきた私は、身の回りの世話も自分でできない。

 ここにいるのは、なにもできないただのセリーヌだ。


 なんの意味も持たない、なにもできない私は、どうなってしまうんだろう。


 考えるのを放棄するように、目を閉じた。


 ■ □ ■

 ガタッと、一際大きく馬車が揺れた。その揺れで目を覚ます。どうやら、隣国との国境である森についたようだ。
 御者は私を乱暴に馬車から下ろすと、馬車と共に去っていってしまった。

 その場にいても仕方がないので、森のなかを進む。

 すると、いきなり大きな獣に出くわした。獣は、唸っており今にも飛びかかってきそうだ。逃げるのは難しいだろう。 

 護身用として、持っていたナイフを懐から取り出す。

 元々は貴族だったため、ある程度の護身は習っている。けれど、実戦は初めてだった。

 ナイフを持っていた手が震える。頭の中で知識が駆け巡るのに、それを実行するために体が動かない。

 「……っ」

 がくがくと震えている手を押さえている間に、獣が跳躍して私との距離をつめた。
だめだ。手は使い物にならない。

 ああ、でも、死ねば楽になれるかも。死んで生まれ変わったら、今度は特別な私になれるかもしれない。

 そして──

 衝撃を覚悟して、目を閉じる。けれど、衝撃は一向にやってこなかった。疑問に思い、目を開けると、獣は赤い血を流して横たわっていた。

 「なん、で……?」
状況が分からず、力が抜ける。ナイフが手から滑り落ちた。

 「俺が、斬ったからだ」
後ろから、声がした。その声に振り向くと、赤髪の端正な顔だちの男性が立っていた。

 「お前、どうして抵抗しなかった?」
それは、抵抗したかったけれど、手が動かなかったから。──違う。

 「死に、たかったから」
確かにあの瞬間、私は死を願ったのだ。
「ということは、お前は先ほど俺が助けなければ、死んでいたわけだ。だったら、その命、俺がもらうぞ」
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