【完結】悪役令嬢な私が、あなたのためにできること

夕立悠理

文字の大きさ
14 / 45

油断大敵

しおりを挟む
「今日の収穫も一つかぁ」

 思わず舌打ちしそうになったのを、寸前で抑え込む。

 魔獣を狩るのは大分慣れた。
 少々傷ついたところで、回復魔法と香魔法をかければいい。そう割りきったことで以前よりも格段に魔獣を狩るスピードは上がっていた。

 だというのに。
 魔獣の心臓を魔獣がなかなかおとさないのだ。

 このままで本当に間に合うんだろうか、という焦りが生まれていた。
 ──そんなとき。

 低い、うなり声が聞こえた。魔獣の声だ。ちらりと視線をそこに向けると、かなり大型の魔獣がそこに立っていた。

 チャンスかもしれない。

 このくらいの大型の魔獣が落とす魔獣の心臓は──本当に落とすかは別として──普通の心臓の三倍は価値がある。だから、もしここで狩って魔獣が心臓をおとしてくれれば、今日のノルマとしては十分だ。

 私は、魔獣に向き直った。

 ──そして。






「はぁっ、はあっ、……っは」

 これは、ちょっとばかりまずいかもしれないと、気を抜くと薄れそうな意識で思う。
 魔獣は倒せた。
 心臓も手に入れた。

 問題だったのは、魔獣が毒を持っていたことだ。それに気づかず、回復魔法を重ねがけした。

 結果、毒がまわった。


 鈍る思考では思うように魔法をかけられない。そんなに複雑な構造の毒ではないから、解毒魔法をかければすぐ治りそうなのに。

 とりあえず学園に戻って、医務室に行けば、なんとかなる、はず。

 ふらつく足どりで森から学園に戻ろうとしたけれど、学園まで目前のところで石に躓き転んでしまった。


「……っ、あ」
 


 立ち上がりたいのに、足に力が入らない。何度も何度も、立ち上がろうとして失敗した。

 目の前が、真っ黒になった。
 ──その、ときだった。

「──! ──、──!!!」

 誰かが何かいっている。けれど、何をいっているのか、頭が働かない。

 でも、なんだかとてもいい気分だ。

 そう思ったのを最後に意識が、途切れた。






「ん、……」
 とてもいい夢を見た気がする。
 そんなことを思いながら、目を開ける。

 今日も一日がんばらなくっちゃ。そう思いながら、体を起こそうとして、天井がいつもと違うことに気づいた。

 疑問に思って記憶をたどり、どうやらここが自室ではなく医務室だとわかる。

 そうか、私、毒で倒れたんだった。誰がここまで運んでくれたんだろう。

 ぱちぱちと、瞬きをすると。
「……目が覚めた?」

 黒い瞳と目があった。

 途端に、頬がひきつるのを感じる。
「どうやら、意識もはっきりしているようだね。そう、まずは、目が覚めてよかった。それから……」

 まずは。ということは、まだ私に用件があるということだ。今すぐここから逃げ出したい。
「助けてくださり、ありがとうございました。では!」

 慌てて起き上がろうとしたその体を、覆い被さるようにして縫い止められる。

「まぁ、待ってよ。話は、これからなんだから。…僕は、『次』はないっていったよね」
しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 部屋にこもって絵ばかり描いていた私は、聖女の仕事を果たさない役立たずとして、王太子殿下に婚約破棄を言い渡されました。 絵を描くことは国王陛下の許可を得ていましたし、国中に結界を張る仕事はきちんとこなしていたのですが……。 王太子殿下は私の話に聞く耳を持たず、腹違い妹のミラに最高聖女の地位を与え、自身の婚約者になさいました。 最高聖女の地位を追われ無一文で追い出された私は、幼なじみを頼り海を越えて隣国へ。 私の描いた絵には神や精霊の加護が宿るようで、ハルシュタイン国は私の描いた絵の力で発展したようなのです。 えっ? 私がいなくなって精霊の加護がなくなった? 妹のミラでは魔力量が足りなくて国中に結界を張れない? 私は隣国の皇太子様に溺愛されているので今更そんなこと言われても困ります。 というより海が荒れて祖国との国交が途絶えたので、祖国が危機的状況にあることすら知りません。 小説家になろう、アルファポリス、pixivに投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 小説家になろうランキング、異世界恋愛/日間2位、日間総合2位。週間総合3位。 pixivオリジナル小説ウィークリーランキング5位に入った小説です。 【改稿版について】   コミカライズ化にあたり、作中の矛盾点などを修正しようと思い全文改稿しました。  ですが……改稿する必要はなかったようです。   おそらくコミカライズの「原作」は、改稿前のものになるんじゃないのかなぁ………多分。その辺良くわかりません。  なので、改稿版と差し替えではなく、改稿前のデータと、改稿後のデータを分けて投稿します。  小説家になろうさんに問い合わせたところ、改稿版をアップすることは問題ないようです。  よろしければこちらも読んでいただければ幸いです。   ※改稿版は以下の3人の名前を変更しています。 ・一人目(ヒロイン) ✕リーゼロッテ・ニクラス(変更前) ◯リアーナ・ニクラス(変更後) ・二人目(鍛冶屋) ✕デリー(変更前) ◯ドミニク(変更後) ・三人目(お針子) ✕ゲレ(変更前) ◯ゲルダ(変更後) ※下記二人の一人称を変更 へーウィットの一人称→✕僕◯俺 アルドリックの一人称→✕私◯僕 ※コミカライズ化がスタートする前に規約に従いこちらの先品は削除します。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚
恋愛
全てが完璧なアイリーン。だが、転落して頭を強く打ってしまったことが原因で意識を失ってしまう。その間に婚約者は妹に奪われてしまっていたが彼の様子は少し変で……? 基本的には、0.6.12.18時の何れかに更新します。どうぞ宜しくお願いいたします。

処理中です...