18 / 45
望み
しおりを挟む
「そうなんですね。では」
適当に返事をして、掴まれた腕を振りほどこうとすると、リッカルド様のほうへ引き寄せられた。私はこれでも魔獣騎士科の人間だし、それなりに魔獣も狩れている。
だからちゃんと鍛えている……つもりだったのに、こうもあっさりと主導権を握られると、嫌でも性差を意識せざるを得なくなる。
「そうなんだよ、ソフィア嬢」
リッカルド様は、とても気分がよさそうな瞳で私を見ていた。
でも、どうしてリッカルド様はここまで私に拘るのかな。私が、自分を粗末にしているからにしては、あまりにも……。
浮かんだ考えを、おいやる。そんなはずはない。
リッカルド様の運命の人はメリア様であり、私に執着しているように見えるのは、単純に頭突きをしたりする私が面白いだけ。ただの好奇心が刺激されているからであって、私に恋情や、愛着を抱いてくれているわけではない。せいぜいが友愛くらいだろう。
といっても、以前の私はその友愛さえもらえなかったのだから、贅沢な話だけれど。
複雑な思いを抱きながら、リッカルド様を見つめる。
「ねぇ、ソフィア嬢。どうすれば、いいと思う?」
「え?」
……どう、ってなにが。
私としては、この状況をどうすればいいかわからないのに。
「どうすれば、可愛い子猫は、僕の腕の中にとどまってくれるかな」
「それ、は……」
子猫、ただの猫じゃなくて、頭突きをした子猫、となると私のことだろうけれど。
「……無理だと思います」
「無理、ね。どうしてそう思うの?」
「その子猫が、とどまれないから」
だって、私の目的はリッカルド様とどうにかなることではない。リッカルド様が自殺をしない未来を創ること。だから、そのためならなんだって、それこそ悪魔にだって魂を売るけれど。
でも、とどまることは二度とない。悪魔に魂を売った私の行く先は破滅だから。
破滅にリッカルド様を巻き込めば、本末転倒だ。
そんなことをいって保健室に運んでもらったりしている時点で、十分巻き込んでしまっているかもしれないけれど。
「とどまれない、かぁ」
「はい。では、そろそろ……」
私は行きますね、と今度こそ振り払おうとした距離を、リッカルド様に更につめられる。
「とどまりたくない、ではなくとどまれないっていうんだね、君は」
「――!」
息が、詰まりそうになる。
失言だった。それではまるで、とどまりたい、と本心では思っているととられかねない。
「何が、君をそうさせてるの? 僕じゃ、力になれないかな」
※※※
Twitterにアンケートがあるので、ぜひお願いします
適当に返事をして、掴まれた腕を振りほどこうとすると、リッカルド様のほうへ引き寄せられた。私はこれでも魔獣騎士科の人間だし、それなりに魔獣も狩れている。
だからちゃんと鍛えている……つもりだったのに、こうもあっさりと主導権を握られると、嫌でも性差を意識せざるを得なくなる。
「そうなんだよ、ソフィア嬢」
リッカルド様は、とても気分がよさそうな瞳で私を見ていた。
でも、どうしてリッカルド様はここまで私に拘るのかな。私が、自分を粗末にしているからにしては、あまりにも……。
浮かんだ考えを、おいやる。そんなはずはない。
リッカルド様の運命の人はメリア様であり、私に執着しているように見えるのは、単純に頭突きをしたりする私が面白いだけ。ただの好奇心が刺激されているからであって、私に恋情や、愛着を抱いてくれているわけではない。せいぜいが友愛くらいだろう。
といっても、以前の私はその友愛さえもらえなかったのだから、贅沢な話だけれど。
複雑な思いを抱きながら、リッカルド様を見つめる。
「ねぇ、ソフィア嬢。どうすれば、いいと思う?」
「え?」
……どう、ってなにが。
私としては、この状況をどうすればいいかわからないのに。
「どうすれば、可愛い子猫は、僕の腕の中にとどまってくれるかな」
「それ、は……」
子猫、ただの猫じゃなくて、頭突きをした子猫、となると私のことだろうけれど。
「……無理だと思います」
「無理、ね。どうしてそう思うの?」
「その子猫が、とどまれないから」
だって、私の目的はリッカルド様とどうにかなることではない。リッカルド様が自殺をしない未来を創ること。だから、そのためならなんだって、それこそ悪魔にだって魂を売るけれど。
でも、とどまることは二度とない。悪魔に魂を売った私の行く先は破滅だから。
破滅にリッカルド様を巻き込めば、本末転倒だ。
そんなことをいって保健室に運んでもらったりしている時点で、十分巻き込んでしまっているかもしれないけれど。
「とどまれない、かぁ」
「はい。では、そろそろ……」
私は行きますね、と今度こそ振り払おうとした距離を、リッカルド様に更につめられる。
「とどまりたくない、ではなくとどまれないっていうんだね、君は」
「――!」
息が、詰まりそうになる。
失言だった。それではまるで、とどまりたい、と本心では思っているととられかねない。
「何が、君をそうさせてるの? 僕じゃ、力になれないかな」
※※※
Twitterにアンケートがあるので、ぜひお願いします
275
あなたにおすすめの小説
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
【完結】土壇場で交代は困ります [おまけ1話更新]
himahima
恋愛
婚約破棄⁈いじめ?いやいや、お子様の茶番劇に付き合ってる暇ないから!まだ決算終わってないし、部下腹ペコで待ってるから会社に戻して〜〜
経理一筋25年、社畜女課長が悪役令嬢と入れ替わり⁈ 主人公は口が悪いです(笑)
はじめての投稿です♪本編13話完結、その後おまけ2話の予定です。
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~
岡暁舟
恋愛
名門公爵家の出身トスカーナと婚約することになった令嬢のエリザベート・キンダリーは、ある日トスカーナの不倫現場を目撃してしまう。怒り狂ったキンダリーはトスカーナに復讐をする?
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる