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いつかくる破滅

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 黒い瞳は、私を見つめている。
「……!」
 まるで懇願するような瞳に、世界が揺れるような、感覚に陥った。
 このまま、全てをリッカルド様に話したらどうだろう?

 一瞬、馬鹿馬鹿しすぎる考えが頭のなかに浮かぶ。

「私、は……」
 私はあなたが笑っていてくれたら、それでいいのに。
 けれど、その世界は私が壊してしまった。

 悪魔の力というずるを使って、リッカルド様の死を受け入れられなかった私は、過去に戻ったけれど。

 過去に戻ったって、一度私が、リッカルド様とメリア様が心中するほど、追い詰めてしまった事実は消えない。

 私のなかでその事実は、永遠に残り続けるだろう。

 それに。
 これは私が始めた物語だ。破滅に向かう私だけの物語。
「……ソフィア嬢?」

 黙り込んだ私にリッカルド様が心配そうな顔をした。
 その顔で、思考から現実に引き戻される。

「いえ。これは、私自身の問題なのです。リッカルド様には――関係ありません」

 わざと突き放すような口調を心がける。

 本当に、リッカルド様を思うなら、変にかかわるべきではなかった。私は、ただ黙々と魔獣の心臓を集める機械になればよかったのに。

 今さらながらそのことに気づいて、落胆する。

 私は結局、リッカルド様のためといいつつ、私自身の欲を優先してしまった。

 これでは、前回の二の舞だ。
 ――もう間違えない。
「では」

 今度こそ腕を払い除けて、リッカルド様の前から立ち去る。

 引き留められることはなかった。
 せっかく力を貸そうといってくれた人に、こんな言葉を掛ける私には愛想がつきたということだろう。

 でも、きっと、これでいい。

 これでいいんだ。
 少しだけ自分勝手に胸が痛んだような気がしたけれど。
 気のせいだ。

 ◇◇◇

 ――教室でもリッカルド様から話しかけられることはなかった。

 そのことにほっと息を吐きつつ、夏季休暇後、初の授業を終えた。
 授業は、私が既に実践していることばかりで、正直つまらなかったけれど、聞いている間は、余計なことを考えなくていいから気が楽だった。

 いつもなら友人のマリーと過ごす時間。
 私は魔獣の森にこもっていた。

「……ぜんぜん、足りないなぁ」

 三年の間に三百個の心臓を捧げなければならないというのに。

 上手く仕留め損なって顔についてしまった返り血をぬぐいながら、考える。

 私があと必要な魔獣の心臓は、二百六十五個。
 三年の間に、ということは、反対に三年以内であれば、いつでもいいということだ。

 だったら、早い方がいい。
 だってまた、女神の使いに選ばれてしまったら意味がないから。

 だというのに、今日といったら、成果はたったの一個。

 ため息を吐きながら、回復魔法をかけ、剣を構えたときだった。
『……ソフィア』
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