愛されなくても、大丈夫!

夕立悠理

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1話裏 予想外な男

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「……それで、すごすごと居室にもどられたと」
 はぁ、と呆れるようにーーいや実際呆れているのだろうーーため息をついたのは、側近のドナルクだ。

「……どうしよう」
 俺からの愛を望むな、と告げた時のまるで興味のなさそうな顔を思い出す。
 一人称をわざわざ俺に変える練習までして。台詞を噛まないように、自然にでてくるように。
 練習を重ねた日々は、完全に砕けさった。

「だから、私はあれほどーー陛下は『予想外な男』とやらには向いていないと」

 予想外な男ーー男と書いて人と読むーー歌劇での相手役となることが多い男性像だ。
 突飛な行動で主人公である女性の気を引き、しかし本人は主人公に興味がないといいながら、なんだかんだありつつ主人公とめでたく結ばれるという。

「向いていないことはわかっていたんだ」

 俺……私は、そもそも想定外なことがあまり得意ではない。昨夜のことを思い返すまでもなく、咄嗟の対応にとても弱い。
 そんな私がありのままで、予想外な男枠に入れるはずもないのだ。

 それでも、今回、無謀ともいえる作戦を決行した。

「でも、勝算はあると思ったんだよ」

 巨大な帝国は、当代が愚帝であっても滞りなく運営されるようにできているーーというのはもちろんのこと。

 機転が効く方ではない私が、それでも兄弟たちに殺されずに今日まで生き延びられた理由の一つ。膨大なデータの分析が得意、ということだった。

 10年を遡って、帝国と近隣諸国で行われた歌劇の演目の台本をすべて読んだ。
 演目の主題は、友情や恋愛、政治や風刺のものなど多岐に渡る。
 よくもここまで違う話の内容を思いつくものだと驚いたが、その中で、唯一共通点があった。

 ーーそれが主人公にとって、予想外のことをしでかす人物は必ず生存することだった。

「勝算、ですか。私は、ありのままの陛下が一番勝算があると思います」
 ドナルクは、メガネを押さえると、ふっと息を吐き出した。

「そもそも、予想外から男とやらの根拠は歌劇のデータです。歌劇と皇后陛下の関係性も掴めませんし……」
「……それは」

 思わず反論しそうになり、ぐっと堪える。
 勝手に吹聴するわけにはいかない。

「それって、リヴェン陛下が歌劇をお好きなだけですよね。……それならば、皇后陛下を歌劇にでもお誘いになったほうがよろしいのでは?」

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