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翌朝
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「んー」
ふわぁぁ、よく寝たわ。
大きな欠伸をひとつして、起き上がる。
「今日から本格的にお飾りの妻生活が始まるのね……!」
愛さない宣言をされたものの、私は旦那様のことを世界で二番目に愛している。
なんといっても、堂々のイケメンランキング第二位だものね!
そんな旦那様のお顔はどんなものかというと、さらっさらな金髪にブルーサファイアを嵌め込んだような瞳は切れ長で、すっと通った鼻筋に、形のいい唇。
どこをどう見ても、イケメンだった……!
そんな旦那様を近くで観察……イケメンウォッチができるなんて、なんて幸せな結婚生活なのかしら!
……そんなことを思いながら、ベッドからおりると、侍女のアビーがやってきた。
「リリーシャ様……」
アビーは元気な私を見て、ほっと息を吐いた。
「どうか、気を落とされずに」
「? どうして?」
気を落とすどころか、幸せすぎて元気が有り余ってるけれど。
「なぜって……、ゼン殿下と、その……」
「あぁ、そういえば、昨日は初夜だったものね!」
すっかり忘れていたわ。そういえば、そうだった。血の一滴たりともついてないふかふかなこのベッドを見れば、何もなかったことは一目瞭然。
「ど、どどどどうして、リリーシャ様はいつもそんなにお気楽なんですかー!」
……めちゃくちゃ動揺してるわね、アビー。
「まぁ、そうね」
私がお気楽なのは今に始まったことじゃないもの。
「それより、見た? ゼン殿下のあのお顔」
顔面国宝といっても過言ではない美しさだったわぁ。
思い出してうっとりしていると、アビーは信じられないものを見る目をした。
「リリーシャ様は、ほんっっとうに超がつくほどの面食いでいらっしゃいますね!」
「あら、誉めてもなにもでないわよー」
あっ、でも、誉められると気分がいいからもっと誉めてちょうだい。
「誉めてないですよ! ……まったく。これじゃあ、心配した私が――」
「? なぁに、心配してくれたの、アビー」
「!?」
私はアビーに近づくと抱きついた。
「心配してくれてありがとう、アビー。でも平気よ。すべては知っていたことだし、それにあのお顔! 私が顔さえよければ愛せるタイプでよかったわ」
まぁ、この世で二番目に、だけどね!
それに、アビーも王城の侍女なだけあってお顔が整っている。
はぁー、眼福眼福。
「とにかく、朝の支度をいたします」
少し照れたように横を向いて早口でそういった、アビーを解放し、朝の支度を手伝ってもらう。
鏡に映る私は、美人だけれどやはり物語のライバル令嬢のような顔立ちで、儚さは微塵も感じられない。
まったく、幼い頃の儚さはどこにいっちゃったのかしらね。
「? いかがなさいましたか?」
「いえ、なんでもないわ」
まぁ、でも、それが私だもの。
仕方ないわ。
私は今の私もそれなりに好きだし。旦那様も世界で二番目に好きだし。
それなりに、幸せな結婚生活が始まるのだ。
ふわぁぁ、よく寝たわ。
大きな欠伸をひとつして、起き上がる。
「今日から本格的にお飾りの妻生活が始まるのね……!」
愛さない宣言をされたものの、私は旦那様のことを世界で二番目に愛している。
なんといっても、堂々のイケメンランキング第二位だものね!
そんな旦那様のお顔はどんなものかというと、さらっさらな金髪にブルーサファイアを嵌め込んだような瞳は切れ長で、すっと通った鼻筋に、形のいい唇。
どこをどう見ても、イケメンだった……!
そんな旦那様を近くで観察……イケメンウォッチができるなんて、なんて幸せな結婚生活なのかしら!
……そんなことを思いながら、ベッドからおりると、侍女のアビーがやってきた。
「リリーシャ様……」
アビーは元気な私を見て、ほっと息を吐いた。
「どうか、気を落とされずに」
「? どうして?」
気を落とすどころか、幸せすぎて元気が有り余ってるけれど。
「なぜって……、ゼン殿下と、その……」
「あぁ、そういえば、昨日は初夜だったものね!」
すっかり忘れていたわ。そういえば、そうだった。血の一滴たりともついてないふかふかなこのベッドを見れば、何もなかったことは一目瞭然。
「ど、どどどどうして、リリーシャ様はいつもそんなにお気楽なんですかー!」
……めちゃくちゃ動揺してるわね、アビー。
「まぁ、そうね」
私がお気楽なのは今に始まったことじゃないもの。
「それより、見た? ゼン殿下のあのお顔」
顔面国宝といっても過言ではない美しさだったわぁ。
思い出してうっとりしていると、アビーは信じられないものを見る目をした。
「リリーシャ様は、ほんっっとうに超がつくほどの面食いでいらっしゃいますね!」
「あら、誉めてもなにもでないわよー」
あっ、でも、誉められると気分がいいからもっと誉めてちょうだい。
「誉めてないですよ! ……まったく。これじゃあ、心配した私が――」
「? なぁに、心配してくれたの、アビー」
「!?」
私はアビーに近づくと抱きついた。
「心配してくれてありがとう、アビー。でも平気よ。すべては知っていたことだし、それにあのお顔! 私が顔さえよければ愛せるタイプでよかったわ」
まぁ、この世で二番目に、だけどね!
それに、アビーも王城の侍女なだけあってお顔が整っている。
はぁー、眼福眼福。
「とにかく、朝の支度をいたします」
少し照れたように横を向いて早口でそういった、アビーを解放し、朝の支度を手伝ってもらう。
鏡に映る私は、美人だけれどやはり物語のライバル令嬢のような顔立ちで、儚さは微塵も感じられない。
まったく、幼い頃の儚さはどこにいっちゃったのかしらね。
「? いかがなさいましたか?」
「いえ、なんでもないわ」
まぁ、でも、それが私だもの。
仕方ないわ。
私は今の私もそれなりに好きだし。旦那様も世界で二番目に好きだし。
それなりに、幸せな結婚生活が始まるのだ。
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