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第二部 王様の牢屋
出会えてよかった(1)
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「ただいま…玲奈?」
ドアを開けた瞬間、ハヤトはいつもと違う気配を感じ取った。
(なんだ、これ…?)
いつも来たときはぴんと張り詰めていた空間が、今日はなんだか明るくて、ふわっとしている。
「あ、ハヤト…」
玲奈がハヤトに気が付いて玄関に来た。
「今日寒かったでしょ、外」
そういってくる玲奈の顔を、ハヤトはじっと見た。
「玲奈…いつもと、なんか、違う?」
「えっ」
「なんか元気そうだ。ほっぺも艶があって」
顔が明るくて、なんだか桃みたいだとハヤトは思った。つやつやふわふわしていて、いい匂いがしそうだ。
「そ、そんな事…」
玲奈は頬に手をあてて、あさっての方を向いた。その顔が少し赤い。
「もしかして、せんせーと何かあったの?」
ハヤトは録画を見ていない。けれど何が起こったのか、なんとなくわかった。
「ち、ちがうって」
玲奈は必死で否定したが、ムキになる時点で肯定しているようなものだ。いつもの玲奈だったら冷笑しているだろう。その反応に、ハヤトは拳をぎゅっと握りしめた
「…ひどくない?」
ふいにハヤトの目のはしに、涙が盛り上がった。
「えっ、ちょっ…」
「お、俺ばっか、玲奈に好きになってもらえないんだ」
言いはじめると、涙声になってしまい、ハヤトは情けなくて目を乱暴にこすった。
「俺は玲奈の事…こんな好きなのに」
「ちょっと…お、落ち着いて。とりあえず中入んなよ」
玲奈は目に見えて慌てていた。前だったら一笑に付していただろうに、そんな変化も妬ましかった。
(玲奈がこんな変わったのは…誰のせいだ?)
ぺたんとリビングの床に座り込んだハヤトを、玲奈は心配そうに見ていた。
「せんせーの事好きになったの?」
「ちがうって、もう」
やれやれと言いたげな顔で、玲奈は座ってハヤトと目線を合わせた。
「だた、あの人の前で演技するのやめただけ。」
「え、演技?」
「だって逆らうと首しめてくるんだよ?いう事きくじゃんそんなの」
「うわ、そんな事したんだ…ひでぇな」
「うん。だけど私も悪いとこあったから。ちゃんとお互い謝って、そういうのナシになったの。だからストレスフリーになって、元気に見えるんじゃん?」
ハヤトはずっと気になっていたことを聞いた。
「……せんせーとは、やってるの?」
ぎくりとして、玲奈が目をそらしたのがわかった。
「ほぼ、してない、よ」
「嘘ついたってわかるんだからね。だって録画してるんだから」
玲奈が肩をすくめた。
「わかったよ。もう…ごめん、ハヤト」
玲奈の顔が近づいて、ハヤトの頬にキスした。
「っ、玲奈」
ハヤトは驚いて自分の頬に手をあててごしごしこすった。
「ちょっと、何そのリアクション…傷つく」
「は、初めてじゃん、玲奈がほっぺにキスしてくれんの」
玲奈がふっと力を抜いて、ハヤトの隣に座った。
「私さ…ここに来るまで、一人の男としかやったことなくてさ」
ハヤトははじかれたように玲奈を見た。彼女が自分のそんな事を話すのは初めてだった。
「でも義務みたいなもんでさ。ずっとなじめなくて、こんなこと何が楽しいんだろうって思ってた。」
息を詰めて見つめていると、玲奈がいきなりハヤトの方を向いた。その星のような目が、ハヤトの目を射た。そして照れ隠しのようににやりと笑った。
「だから、私が初めて、自分でやりたいと思ってした相手は…ハヤトなんだよ」
「えっ…」
あまりにも予想外の事に、ハヤトの頭は処理が追い付かなかった。
「だから…あの時一方的に無視して、ごめん」
そこでハヤトの頭は、やっと動いた。
「ご、ごめんって…ごめんって。なんだよ、それ!」
収まった涙がまた出そうになった。
「お、俺がどんだけ…待って…こ、この間もずっと後悔して…!」
ハヤトはぎゅっと拳を握った。様々な辛かった事が頭によみがえった。連絡がつかなくなった時。城築があの動画を見せてきた時。そして、玲奈が別の男によって柔らかく笑うようになった今。
「もう、もうやめろよっ、そうやって期待持たせるの。上げて、落とされるのはもう嫌だ…!これでまた玲奈が無視したりしたら、俺、俺…!」
その拳に、玲奈が手を重ねた。
「もう無視したりしないよ」
「でも…でも、俺と一緒には居てくれないんだろ。玲奈は別の奴の方が大事なんだよ」
ハヤトはそう言って玲奈をにらみつけた。玲奈はだだっこを見るような、困った顔をしていた。それがまたイラついた。
「ほら、やっぱりそうなんだ。俺はまた、玲奈に捨てられて、忘れられるんだ」
「捨ててなんかないよ。だってハヤトと私じゃ、不釣り合いでしょ」
「そんなわけないだろ」
「だってハヤトは、良いところの…」
「そんなの関係ない!家とか学校とか!玲奈は、玲奈はどうなんだよっ」
「言ったじゃん。あの時私は…ハヤトとこれ以上…仲良くなりたくなくて」
「勝手だよ、玲奈は…!自分が傷つくのが嫌で、俺を無視したんだ。それで今になってごめんなさいって、ムシが良すぎだよ!」
玲奈はうなだれたあと、ハヤトを見た。その目は辛そうだった。
「ごめん。それは…その通り。あれ以上会ったら…ハヤトの事、好きになってたから」
それを聞いて、ハヤトはぐっと詰まった。嬉しくないといえば嘘になる。ハヤトは彼女から目をそらした。
「それ…ずるい」
「だから…謝ってるの。ごめん」
ハヤトは彼女の目を覗き込んだ。自分の鼓動が、どくどく脈打ってるのがわかった。
「じゃあ、今は…?今からでも、俺のこと、好きになる…?」
玲奈は何も答えず、ハヤトの頬を両手で包んだ。そして柔らかい唇が、ハヤトの唇に合わせられた。
久々に正面から抱きしめた玲奈は、なんだか様子が違っていてハヤトは思わず手が震えた。
(いや、もともと玲奈は可愛いんだけど…なんだろう、なんだろうこれ)
抱きしめた感触が、柔らかいのだ。前に感じた拒絶や強張りがない。ふわりとハヤトの身体を受け止めてくれる気がした。
「玲奈…どうしたの、なんか前とちがうよ」
玲奈がハヤトを見上げた。
「えっ…なにが」
「なんだろう…可愛い」
「はっ?」
彼女の眉が困惑したように下がって、顔が下を向いた。そんなしおらしいしい反応、今までの玲奈ならしなかった。ハヤトはたまらなくなって、もう一度玲奈を抱きしめた。
「く、くるしい、ハヤト…」
「ごめん」
ハヤトは腕の力を緩めた。いつの間に、こんな可愛くなっちゃったんだろう。自分の、知らない間に。
「玲奈、俺…」
切羽詰まったようなその声に、玲奈は答えた。
「いいよ、わかってる…」
ハヤトの腕の中から、玲奈は見上げて言った。
「ちゃんと、しよっか」
「う、うん…!」
嬉しい。はじけるようにその気持ちが胸の中で広がった。ハヤトは玲奈の耳にキスをした。
「嬉しい…玲奈から…誘ってくれる、なんて」
「誘うっていうか…」
「ああ、もうなんでもいいよ、玲奈、ぬ、脱がせていい?」
手が震える。そんなハヤトを見て玲奈は笑った。
「いいよ、脱がせて」
ブラジャーが後ろからはずされて、ごくんと唾をのむ音が聞こえた。
「れ、玲奈…胸、さわって、いい…?」
そんな風に聞かれると、こっちも困惑する。そう思いながら玲奈はうなずいた。
「い、いい、よ…」
後ろからハヤトの手が回って、玲奈の乳房に指を沈めた。
「ふにふにしてる…かわ、いい…」
そのままひたすらぷにぷにしているので、玲奈はなんだか自分の胸がぬいぐるみマスコットにでもなったような気がした。
「あの…長く…ない?」
「だって俺、玲奈のおっぱい触るの…初めてなんだもん」
「そ、そうだっけ」
「そうだよ。いつも触らせてくれなかった」
「私胸、ないしなぁ…」
玲奈がつぶやくと、ハヤトが耳元で聞いた。
「うそ、気にしてたの?」
「き、気にするっていうか…小さいから、触っても楽しくないだろうなっていう…」
「そんなことないよ!お、俺はずっと触りたかったっ!!」
いきなり大きな声を出されて、玲奈は驚いた。
「だから…嬉しいよ…玲奈のおっぱいかわいいなぁ。ここも柔らかくて…」
ハヤトの指が玲奈の先端の柔らかい部分を押しつぶした。玲奈の背筋に震えが走った。
「あっ…今、ちょっと感じた?」
「も、もう…」
ハヤトは調子に乗ってきゅっとそこをつまんだ。
「あ…少し固くなった。すごい…こんななるんだ」
そのままこすられて、玲奈は体をよじった。
「ちょっ…と…」
築城にたくさんいじられ過ぎたからか、少し触られただけでも下腹部が熱くなって、じっとしていられない。自分の身体の変化に、玲奈はおどろいた。
(私の身体…変な風に、されちゃった…?)
ハヤトの指からの刺激も、砂漠の砂が水を吸うように受け入れて吸収している。
「はっ…んっ…」
思わず声を出してしまって、玲奈はぱっと口をふさいだ。
「か、かわいい、玲奈、今の声っ…!」
ハヤトの声が嬉しそうに上ずっている。
「そ、そんな声出すんだ?!す、すごいよ…」
後ろから抱きしめるハヤトの腕が熱い。お尻に当たっているものも、存在を主張している。
「は、ハヤトだっていっぱい変な声、出してたじゃん…」
「だって気持ちよかったんだもん…玲奈が、エロい事するから」
責めるように玲奈は言ったが、ハヤトは悪びれない。
「でも今日は、俺が玲奈にエロい事するんだ。」
ハヤトは腕を放して、玲奈と手をつないだ。
「ベッドに行こう、今日は俺がずっと上だからね」
裸で手をつないであるくのはちょっと妙で、玲奈は思わず笑ってしまった。
「何笑ってるの?余裕の笑顔?」
ちょっと不満そうな顔をしながらも、ハヤトはベッドに横になった。
「ほら、俺の隣にきて?」
「わかったよ」
玲奈はハヤトの隣にごろんと身を横たえた。その体の線をなぞりながら、ハヤトはため息をついた。
「きれいだなぁ…俺が今まで見た中で玲奈は一番だ」
玲奈はふんと鼻で笑った。
「これからきっと、私なんかよりずっと綺麗な人がとっかえひっかえ現れるよ」
「そういう事じゃないし」
少し拗ねたハヤトに、ふと玲奈は聞いた。
「そういえば…なんでハヤトは、最初電車で絡んできたの?」
「それは…玲奈が他の奴と話してるの、ムカついたから」
玲奈は首をかしげた。
「あれが初対面なのに、他の奴とって…どういうこと?」
「俺にとっては、初対面じゃない」
ハヤトはぶすっとして言った。
「気づかなかったの?俺がずっと一緒の電車に乗ってたこと」
玲奈はちょっと沈黙した。
「そ…そうだったんだ。ごめん、電車じゃたいてい、スマホ見てるから」
「いいよ。言い訳しなくて。どうせ俺なんて眼中になかったのは、わかってるんだ」
そっぽを向いていたハヤトは、玲奈の方をじっと見た。
「最初名前しらなかったからさ、俺の中で玲奈のこと姫って呼んでたんだ」
玲奈は面食らった。
「姫?…私には似合わないあだ名…」
「ほら、昔話によくあるじゃん。城に閉じ込めらえたお姫様。ひとりぼっちで高い場所に閉じ込められて、いつも寂しそうに窓の外を見てるんだ。玲奈はそんな感じだった。俺は話しかける勇気もなくて、ただじっと姫を見るのを楽しみにしてた。」
玲奈は少し恥ずかしくなった。そんな表情をしていた覚えはないのに。
「だから、あの日…突然隣に男が座ってて、玲奈がにこにこ話してるからカッときちゃってさ」
ハヤトは少し目を伏せた。その目元が赤い。
「…あの時はごめん。怖かっただろ」
玲奈はそっとハヤトの頬に触れた。
「いいよ。でも次美人に惚れたら、がんつけないでちゃんと話かけるんだよ」
ハヤトはきゅっと玲奈の手の甲をつねった。
「いた」
「玲奈の意地悪。今俺は玲奈しか見てないって、わかってるくせに」
「ごめんごめん…今はね」
ハヤトはぎゅっと眉根をよせて玲奈を見た。
「今だけじゃないよ。ずっとだよ。どうせ一生、玲奈の事忘れられないんだ。ずっと思いつづけるんだ。もう一度会いたいって、呪いみたいに」
恨みがましいその口調に、玲奈は唇をかんだ。
「…ごめん。玲奈を責めてもしょうがないのに」
「…ハヤト」
「だから今日は思いっきりするよ。玲奈がこれからもずっと、俺のこと覚えていてくれるように」
ドアを開けた瞬間、ハヤトはいつもと違う気配を感じ取った。
(なんだ、これ…?)
いつも来たときはぴんと張り詰めていた空間が、今日はなんだか明るくて、ふわっとしている。
「あ、ハヤト…」
玲奈がハヤトに気が付いて玄関に来た。
「今日寒かったでしょ、外」
そういってくる玲奈の顔を、ハヤトはじっと見た。
「玲奈…いつもと、なんか、違う?」
「えっ」
「なんか元気そうだ。ほっぺも艶があって」
顔が明るくて、なんだか桃みたいだとハヤトは思った。つやつやふわふわしていて、いい匂いがしそうだ。
「そ、そんな事…」
玲奈は頬に手をあてて、あさっての方を向いた。その顔が少し赤い。
「もしかして、せんせーと何かあったの?」
ハヤトは録画を見ていない。けれど何が起こったのか、なんとなくわかった。
「ち、ちがうって」
玲奈は必死で否定したが、ムキになる時点で肯定しているようなものだ。いつもの玲奈だったら冷笑しているだろう。その反応に、ハヤトは拳をぎゅっと握りしめた
「…ひどくない?」
ふいにハヤトの目のはしに、涙が盛り上がった。
「えっ、ちょっ…」
「お、俺ばっか、玲奈に好きになってもらえないんだ」
言いはじめると、涙声になってしまい、ハヤトは情けなくて目を乱暴にこすった。
「俺は玲奈の事…こんな好きなのに」
「ちょっと…お、落ち着いて。とりあえず中入んなよ」
玲奈は目に見えて慌てていた。前だったら一笑に付していただろうに、そんな変化も妬ましかった。
(玲奈がこんな変わったのは…誰のせいだ?)
ぺたんとリビングの床に座り込んだハヤトを、玲奈は心配そうに見ていた。
「せんせーの事好きになったの?」
「ちがうって、もう」
やれやれと言いたげな顔で、玲奈は座ってハヤトと目線を合わせた。
「だた、あの人の前で演技するのやめただけ。」
「え、演技?」
「だって逆らうと首しめてくるんだよ?いう事きくじゃんそんなの」
「うわ、そんな事したんだ…ひでぇな」
「うん。だけど私も悪いとこあったから。ちゃんとお互い謝って、そういうのナシになったの。だからストレスフリーになって、元気に見えるんじゃん?」
ハヤトはずっと気になっていたことを聞いた。
「……せんせーとは、やってるの?」
ぎくりとして、玲奈が目をそらしたのがわかった。
「ほぼ、してない、よ」
「嘘ついたってわかるんだからね。だって録画してるんだから」
玲奈が肩をすくめた。
「わかったよ。もう…ごめん、ハヤト」
玲奈の顔が近づいて、ハヤトの頬にキスした。
「っ、玲奈」
ハヤトは驚いて自分の頬に手をあててごしごしこすった。
「ちょっと、何そのリアクション…傷つく」
「は、初めてじゃん、玲奈がほっぺにキスしてくれんの」
玲奈がふっと力を抜いて、ハヤトの隣に座った。
「私さ…ここに来るまで、一人の男としかやったことなくてさ」
ハヤトははじかれたように玲奈を見た。彼女が自分のそんな事を話すのは初めてだった。
「でも義務みたいなもんでさ。ずっとなじめなくて、こんなこと何が楽しいんだろうって思ってた。」
息を詰めて見つめていると、玲奈がいきなりハヤトの方を向いた。その星のような目が、ハヤトの目を射た。そして照れ隠しのようににやりと笑った。
「だから、私が初めて、自分でやりたいと思ってした相手は…ハヤトなんだよ」
「えっ…」
あまりにも予想外の事に、ハヤトの頭は処理が追い付かなかった。
「だから…あの時一方的に無視して、ごめん」
そこでハヤトの頭は、やっと動いた。
「ご、ごめんって…ごめんって。なんだよ、それ!」
収まった涙がまた出そうになった。
「お、俺がどんだけ…待って…こ、この間もずっと後悔して…!」
ハヤトはぎゅっと拳を握った。様々な辛かった事が頭によみがえった。連絡がつかなくなった時。城築があの動画を見せてきた時。そして、玲奈が別の男によって柔らかく笑うようになった今。
「もう、もうやめろよっ、そうやって期待持たせるの。上げて、落とされるのはもう嫌だ…!これでまた玲奈が無視したりしたら、俺、俺…!」
その拳に、玲奈が手を重ねた。
「もう無視したりしないよ」
「でも…でも、俺と一緒には居てくれないんだろ。玲奈は別の奴の方が大事なんだよ」
ハヤトはそう言って玲奈をにらみつけた。玲奈はだだっこを見るような、困った顔をしていた。それがまたイラついた。
「ほら、やっぱりそうなんだ。俺はまた、玲奈に捨てられて、忘れられるんだ」
「捨ててなんかないよ。だってハヤトと私じゃ、不釣り合いでしょ」
「そんなわけないだろ」
「だってハヤトは、良いところの…」
「そんなの関係ない!家とか学校とか!玲奈は、玲奈はどうなんだよっ」
「言ったじゃん。あの時私は…ハヤトとこれ以上…仲良くなりたくなくて」
「勝手だよ、玲奈は…!自分が傷つくのが嫌で、俺を無視したんだ。それで今になってごめんなさいって、ムシが良すぎだよ!」
玲奈はうなだれたあと、ハヤトを見た。その目は辛そうだった。
「ごめん。それは…その通り。あれ以上会ったら…ハヤトの事、好きになってたから」
それを聞いて、ハヤトはぐっと詰まった。嬉しくないといえば嘘になる。ハヤトは彼女から目をそらした。
「それ…ずるい」
「だから…謝ってるの。ごめん」
ハヤトは彼女の目を覗き込んだ。自分の鼓動が、どくどく脈打ってるのがわかった。
「じゃあ、今は…?今からでも、俺のこと、好きになる…?」
玲奈は何も答えず、ハヤトの頬を両手で包んだ。そして柔らかい唇が、ハヤトの唇に合わせられた。
久々に正面から抱きしめた玲奈は、なんだか様子が違っていてハヤトは思わず手が震えた。
(いや、もともと玲奈は可愛いんだけど…なんだろう、なんだろうこれ)
抱きしめた感触が、柔らかいのだ。前に感じた拒絶や強張りがない。ふわりとハヤトの身体を受け止めてくれる気がした。
「玲奈…どうしたの、なんか前とちがうよ」
玲奈がハヤトを見上げた。
「えっ…なにが」
「なんだろう…可愛い」
「はっ?」
彼女の眉が困惑したように下がって、顔が下を向いた。そんなしおらしいしい反応、今までの玲奈ならしなかった。ハヤトはたまらなくなって、もう一度玲奈を抱きしめた。
「く、くるしい、ハヤト…」
「ごめん」
ハヤトは腕の力を緩めた。いつの間に、こんな可愛くなっちゃったんだろう。自分の、知らない間に。
「玲奈、俺…」
切羽詰まったようなその声に、玲奈は答えた。
「いいよ、わかってる…」
ハヤトの腕の中から、玲奈は見上げて言った。
「ちゃんと、しよっか」
「う、うん…!」
嬉しい。はじけるようにその気持ちが胸の中で広がった。ハヤトは玲奈の耳にキスをした。
「嬉しい…玲奈から…誘ってくれる、なんて」
「誘うっていうか…」
「ああ、もうなんでもいいよ、玲奈、ぬ、脱がせていい?」
手が震える。そんなハヤトを見て玲奈は笑った。
「いいよ、脱がせて」
ブラジャーが後ろからはずされて、ごくんと唾をのむ音が聞こえた。
「れ、玲奈…胸、さわって、いい…?」
そんな風に聞かれると、こっちも困惑する。そう思いながら玲奈はうなずいた。
「い、いい、よ…」
後ろからハヤトの手が回って、玲奈の乳房に指を沈めた。
「ふにふにしてる…かわ、いい…」
そのままひたすらぷにぷにしているので、玲奈はなんだか自分の胸がぬいぐるみマスコットにでもなったような気がした。
「あの…長く…ない?」
「だって俺、玲奈のおっぱい触るの…初めてなんだもん」
「そ、そうだっけ」
「そうだよ。いつも触らせてくれなかった」
「私胸、ないしなぁ…」
玲奈がつぶやくと、ハヤトが耳元で聞いた。
「うそ、気にしてたの?」
「き、気にするっていうか…小さいから、触っても楽しくないだろうなっていう…」
「そんなことないよ!お、俺はずっと触りたかったっ!!」
いきなり大きな声を出されて、玲奈は驚いた。
「だから…嬉しいよ…玲奈のおっぱいかわいいなぁ。ここも柔らかくて…」
ハヤトの指が玲奈の先端の柔らかい部分を押しつぶした。玲奈の背筋に震えが走った。
「あっ…今、ちょっと感じた?」
「も、もう…」
ハヤトは調子に乗ってきゅっとそこをつまんだ。
「あ…少し固くなった。すごい…こんななるんだ」
そのままこすられて、玲奈は体をよじった。
「ちょっ…と…」
築城にたくさんいじられ過ぎたからか、少し触られただけでも下腹部が熱くなって、じっとしていられない。自分の身体の変化に、玲奈はおどろいた。
(私の身体…変な風に、されちゃった…?)
ハヤトの指からの刺激も、砂漠の砂が水を吸うように受け入れて吸収している。
「はっ…んっ…」
思わず声を出してしまって、玲奈はぱっと口をふさいだ。
「か、かわいい、玲奈、今の声っ…!」
ハヤトの声が嬉しそうに上ずっている。
「そ、そんな声出すんだ?!す、すごいよ…」
後ろから抱きしめるハヤトの腕が熱い。お尻に当たっているものも、存在を主張している。
「は、ハヤトだっていっぱい変な声、出してたじゃん…」
「だって気持ちよかったんだもん…玲奈が、エロい事するから」
責めるように玲奈は言ったが、ハヤトは悪びれない。
「でも今日は、俺が玲奈にエロい事するんだ。」
ハヤトは腕を放して、玲奈と手をつないだ。
「ベッドに行こう、今日は俺がずっと上だからね」
裸で手をつないであるくのはちょっと妙で、玲奈は思わず笑ってしまった。
「何笑ってるの?余裕の笑顔?」
ちょっと不満そうな顔をしながらも、ハヤトはベッドに横になった。
「ほら、俺の隣にきて?」
「わかったよ」
玲奈はハヤトの隣にごろんと身を横たえた。その体の線をなぞりながら、ハヤトはため息をついた。
「きれいだなぁ…俺が今まで見た中で玲奈は一番だ」
玲奈はふんと鼻で笑った。
「これからきっと、私なんかよりずっと綺麗な人がとっかえひっかえ現れるよ」
「そういう事じゃないし」
少し拗ねたハヤトに、ふと玲奈は聞いた。
「そういえば…なんでハヤトは、最初電車で絡んできたの?」
「それは…玲奈が他の奴と話してるの、ムカついたから」
玲奈は首をかしげた。
「あれが初対面なのに、他の奴とって…どういうこと?」
「俺にとっては、初対面じゃない」
ハヤトはぶすっとして言った。
「気づかなかったの?俺がずっと一緒の電車に乗ってたこと」
玲奈はちょっと沈黙した。
「そ…そうだったんだ。ごめん、電車じゃたいてい、スマホ見てるから」
「いいよ。言い訳しなくて。どうせ俺なんて眼中になかったのは、わかってるんだ」
そっぽを向いていたハヤトは、玲奈の方をじっと見た。
「最初名前しらなかったからさ、俺の中で玲奈のこと姫って呼んでたんだ」
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「姫?…私には似合わないあだ名…」
「ほら、昔話によくあるじゃん。城に閉じ込めらえたお姫様。ひとりぼっちで高い場所に閉じ込められて、いつも寂しそうに窓の外を見てるんだ。玲奈はそんな感じだった。俺は話しかける勇気もなくて、ただじっと姫を見るのを楽しみにしてた。」
玲奈は少し恥ずかしくなった。そんな表情をしていた覚えはないのに。
「だから、あの日…突然隣に男が座ってて、玲奈がにこにこ話してるからカッときちゃってさ」
ハヤトは少し目を伏せた。その目元が赤い。
「…あの時はごめん。怖かっただろ」
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「いいよ。でも次美人に惚れたら、がんつけないでちゃんと話かけるんだよ」
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「いた」
「玲奈の意地悪。今俺は玲奈しか見てないって、わかってるくせに」
「ごめんごめん…今はね」
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「今だけじゃないよ。ずっとだよ。どうせ一生、玲奈の事忘れられないんだ。ずっと思いつづけるんだ。もう一度会いたいって、呪いみたいに」
恨みがましいその口調に、玲奈は唇をかんだ。
「…ごめん。玲奈を責めてもしょうがないのに」
「…ハヤト」
「だから今日は思いっきりするよ。玲奈がこれからもずっと、俺のこと覚えていてくれるように」
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18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
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