イケニエアゲハ~執着の檻に囲われて~

小達出みかん

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同じ未来へ(学END)

傷だらけの二人(R18)

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入学を明日に控えたその日の夕方、玲奈は近くのスーパーに買い出しに来ていた。

(今日の5時から、あそこのスーパーで卵が特売…!!)

 なにしろ二人とも貧乏学生だ。学はこの間見つけてきた家庭教師のバイトに早々に行っていた。玲奈もはやく何かバイトを見つけないといけない。同じように教師か、何か大学のツテでいいバイトがあればいいのだが。

 もう、新しい場所に飛び込む事も怖くなかった。だって、学がいるのだから。

(それに…周りになじめないのは、私にも原因があったんだよね)

 他人を怖がるあまり、自分から壁を作ってきた。そのせいで孤立していたのだ。エリカや学に出会って、自分からその壁を破って人とかかわるということが、分かった気がする。

(…あの二人にも)

 築城とハヤトも、恨みつらみだけでない、いろんな感情を玲奈に教えてくれた。自分がした事も、された事も消えてなくなりはしないが、もうそれでいいと玲奈は思った。二人は間違いなく、私を変えてくれたのだ。

(二度と会う事はないと思うけれど、つつがなく過ごしてれば、いいな…)

 スーパーから出ると、夕焼けがまぶしかった。お目当て通り99円の卵をゲットした玲奈は、明日からの事に思いをはせた。

(大学いって、バイトもして…二人で、暮らしていく)

 いつも一緒というわけにはいかないだろう。だけど帰るのは二人の家だ。そう思えば、勉強もバイトも頑張れる。

 が、しかし少し不安もあった。

(学くん…顔、綺麗だからなぁ…)

 大学は、今までと違って広い場所だろう。それこそいろんな人がいる。高校にいたころとちがい、彼の魅力がわかる女の子もたくさんいるかもしれない。バイト先だってそうだ。

(ちょっと、不安だなぁ…)

 そんな事を考えながら路地を歩いていると、道のはしに座っているおじさんが目についた。目の前にシートが広げてあって、そこにはアクセサリーが並べてある。

(…アクセサリーか)

 玲奈がちらりと見たのに気が付いて、すかさずおじさんは声をかけた。

「欲しいのない?安くするよ!」

 その言葉につられて、玲奈はおもわず立ち止まった。

「何か探してるのかい?」

「…お揃いのアクセサリーとか、ありません?」

「そうだね、指輪とかどう?これ本物の銀めっきだよ」

 おじさんはシンプルな銀色の指輪を指さした。細いそのペアリングは、中心が一回ねじれている。

「メビウスの輪…」

「そうだよ、よく知ってるね」

「…く、ください」

 この指輪をはめた学の手を見てみたい。そう思ってしまった玲奈は無意識に財布を開いていた。

「まいどありー」

(ああ、買っちゃった…節約しなきゃなのに)

 が、後悔と同じくらい、わくわくしていた。学はどんな顔をして受け取ってくれるだろうか?



 学がバイトから帰ってくると、玲奈は寝ないで待っていた。

「先、寝てなよ。待ってることないのに」

 玲奈は後ろに何か隠して、じりじりと学の方へ歩いてきた。

「何もってるんだ?」

「今日は、渡したいものがあって」

「?」

「手を出してくれる?」

 差し出された学の手に、玲奈は指輪をはめた。

「…これは?」

 怪訝そうな学に、玲奈は自分の左手を見せた。同じデザインの指輪がそこには嵌まっている。

「お揃いの、買っちゃった」

「俺にも?ありがとう…でも、なんで?」

「あのね…」

 正直に言うのは少し恥ずかしかったが、玲奈はとぎれとぎれ自分の気持ちを言った。

「明日からは…大学は一緒だけど、いつも一緒じゃ、ないじゃん?だから…」

 玲奈は指輪のはまった学の手を見つめた。

「その…指輪してれば、学くんに彼女がいるって、周りの人にわかるでしょ?」

 学が困惑した顔をした。

「ええと、つまり…その、他の女の子に対する…牽制…?」

 そこまで言って、学はやっとうなずいた。

「なんだ、そんな事気にすることないのに。今まで俺に興味を持った女子は、玲奈くらいだ」

 それは聞き捨てならなかった。学は認識が甘いと玲奈は思った。

「そんなわけないじゃん…!学くんは顔が綺麗な上に、T大生なんだよ!?これから死ぬほどモテるに決まってる!」

「そんな事で寄ってくる奴に、俺がなびくと思うか?玲奈がいるのに?」

 真剣にそう言われて、今度は玲奈が詰まった。

「…それは、」

「それに俺は…君の方が心配だよ。どう考えても男が放っておかないのは玲奈の方だろう」

 それを聞いて、玲奈は得意げに左手を見せた。

「そこでコレ。これから寄ってくる奴は、指輪で撃退する。私には高校の時から付き合ってて同棲もしてる彼氏がいますって宣伝しまくる」

 それを考えると、玲奈は心の底から嬉しかった。私には、大事な人がいる。一緒に暮らしてる。だからもう、他の男に言い寄られても、きっぱり断れる。そう思うと清々しかった。

「……」

 しかし学は考え込んでいた。

「ごめん…指輪、嫌だった?たしかにちょっと重いよね…」

 先走りすぎたかなと後悔する玲奈に、学は言った。

「俺たち、結婚しようか」

「えっ!?!?!」

 玲奈は驚いて学を見た。学ははっとして首を振った。

「いや、なんでもない、ごめん」

 玲奈の頭の中に様々な考えがよぎった。
一瞬で、玲奈は答えを導き出した。玲奈は前のめりに学の手をつかんだ。

「そうしよ!!20歳になったら親の同意がいらないから、2年後私の誕生日が来たらその日に届け出そう!!」

 学は若干引け腰だった。

「い…いいのか?」

「いいに、決まってるじゃん!結婚すれば、他の奴らはまずちょっかい出せないし、国にも世間的にもうちらの関係が認められる!侵害してくる奴は法律違反!こんな最高の手、使わない法はないよ」

「落ち着け玲奈、それだけじゃないだろう。一生…俺と一緒にいるってこと、だぞ」

「そうだよ!」

 玲奈は力強くうなずいた。

「私はずっとずっと、学くんの事考えてたんだからね。もう無理だって思って、あの花火は私の考えだした妄想だったかもって思うくらいに…!だから当たり前に、一生一緒にいたいに決まってる」

「そ…そうか」

「そう!」

 玲奈はにっこり笑った。

「それなら…俺は玲奈の苗字になりたい。いいか?」

「え、いいの?」

「ああ。二人で同じ苗字なるなら、三上よりも、葦原の方がいい。俺は…両親と別の苗字になりたいから」

「そっか…わかった。」

 葦原玲奈に、葦原学か。良い響きだと玲奈は思った。

「ありがとう、結婚しようって言ってくれて」

「いや…なんか、その」

 言葉に詰まる学は、少し子どもっぽくてかわいかった。玲奈は思わず彼の頬に唇を寄せた。

「じゃあ今は…私たち、婚約状態ってことだね」

 耳元でそう言うと、彼は固まった。その耳たぶが赤い。

「そう…だな」

 恥じらいもためらいもどこかへ消え、心のままの言葉が玲奈の口から漏れ出た。

「私…学くんが欲しい。だめ…?」

「っ…だ、だが…」

 彼は言葉に詰まっていた。

「…でも、学くんが嫌なら、我慢する…」

「い、嫌なわけ、ない、だろ」

「本当?よかった…」

 玲奈は笑って、きていた服を脱ぎすてた。裸体が露わになる。学が息をのんだのがわかった。

「ごめん、引いた…?」

「そ、そんな、わけ…」

 目を離したいけど、離せない。彼はそんな顔で玲奈を見ていた。

「学くんも、脱いで?」

「わ…わかった」

 そういいつつ、彼の手は震えていた。 

「す、すまないが、あっちを、向いててくれないか…」

「わかった」

 恥ずかしがりだな、そんな所も可愛いなと思いながら玲奈は後ろを向いた。

(もしかして…学くんは、初めて、なのかな…?)

 そう思うと、嬉しいという気持ちと、申し訳ないという気持ちが同時に沸いた。

「…もう、いい?」

 返事がない。だいぶためらった後、学は脱いだと言った。

「…!」

 振り向いた玲奈は、驚いた。だがそれを見せてはいけないと瞬時に表情を引っ込めた。

「…無理しなくて、いい。驚いた…だろ」

 学は下を向いていた。下着一枚になった彼の身体は、傷だらけだったのだ。長い線になったみみず腫れ、消えかけた痣、新しい痣、火傷のような痕…傷の見本市のようだった。

「嫌だ…よな、こんな体」

「そんなわけないじゃん!」

 玲奈は彼の身体をぎゅっと抱きしめた。

「私は何も気にしないよ!でも…学くん、つらかったね、こんなに…ひどいね」

 彼が恥じる事など何もないのに。両親だろうか?玲奈は許せなくなった。彼は玲奈と違ってまっすぐだ。やられたからと言ってやり返すような心のさもしさがない。

そんな彼をこんな傷つけるなんて。卑怯にもほどがある。

「ひどい、ひどすぎる。やった奴、私が殺してやる…!」

 怒りで玲奈の歯ががちがち鳴っていた。学はそんな玲奈の肩をすっと撫でた。

「ごめん…玲奈」

 その声が震えていたので、玲奈ははっと我に返った。

「ご、ごめんね、いきなりキツイこと、言って…」

「いや、ありがとう。でも、そんな事しないでくれ」

「しない、しないよ。学くんが嫌ならしない」

 そういう玲奈に、学が思わず笑いを漏らした。

「すごいな、玲奈は。なんだってできそうだ」

「…私の悪い所、学くんと一緒なら、ちゃんと治していける気がする」

 玲奈も笑った。

「私も傷だらけ…目には、見えないけど」

 そして二人は、微笑んだまま唇を重ねた。玲奈はそっと、学の唇に舌を這わせた。

「っ…!」

 学が驚いて口を開けたので、玲奈はそのまま中に舌を侵入させた。そっと舌に舌で触れて、絡めると、学もおずおずとだが、受け入れてくれた。

「んっ…ふ、れい、な」

 密着している学の身体が熱くなっているのがわかった。自分も下半身が疼くのを、はっきり感じた。

(嬉しい…学くんのここ、硬くなってる)

 学のものを、入れたい。この硬くなったものを中に入れて、ぎゅっとしたい。そう思った瞬間、じわっと足の間が熱く濡れるのを感じた。

(私って…淫乱、なのかな)

 あの二人に教えられた快楽。だけどそれとこれとは、決定的に違うことがあった。学に対しては、徹頭徹尾自分から、欲しがっているのだ。

「学くん、もう、我慢、できないよ」



「入れて」と玲奈は言った。学は思わずためらった。

(いいのか、いきなり、入れて)

 初めて見た玲奈の身体はまぶしかった。玲奈のキスは濡れていて、熱くて、いやらしい大人のキスだった。そこで学は思わずにいられなかった。

(こんなキス…いったい今まで、誰と)

 目の前には、玲奈が横たわって自分を見上げている。嫉妬と劣情で、学の頭は混乱していた。今までどんな男が、玲奈の上を通り過ぎていったのだろう?

「ま、学くん、どうした、の?」

 残った理性をかき集めて学は聞いた。

「いきなり、入れて…痛く、ないか」

「痛いわけ、ないよ、学くんだもん…」

 玲奈はふにゃっと笑った。その目は潤んで、頬は上気している。真面目で、いつもどこか寂し気だった彼女がこんな顔をするなんて。背筋にびりっと電流が走ったような感覚がした。
この電流のような衝動のままに動けば、とんでもない事になりそうだった。それをぐっとこらえて、学は体を震わせた。

「ふふ…引いた…?でも、こんななったの、学くんが初めてだよ」

 学は唇を真一文字に結んで、玲奈の顔の両脇に手を突いた。

「い、いくぞ…」

 玲奈がすうっと息を吐いた。彼女の濡れて光ったその場所に、学は自分のものをあてがった。

「っく…!」

 熱くて、やわらかいその場所に自分のものを入れていくのは、学にとってキツイ作業だった。

(まずい、このまま…出てしまいそうだ…っ)

 深呼吸して自分を律しながら、学は奥までゆっくりと到達した。

「はぁ…はぁ…くっ…」

 そんな学の頬に、玲奈がそっと触れた。

「大丈夫?つらい…?」

 学は目を開けて、玲奈を見た。玲奈が心配そうにこちらを見ていた。

「玲奈、は…?」

「嬉しい、よ…学くんと、こうなれて」

「そう、だな…俺も、嬉しい、よ」

 玲奈と、繋がっている。体を介して、快楽を分け合っている。一度も想像しなかったといえば嘘になる。だけど現実は、想像よりもずっとリアルで、暖かくて、気持ち良い。

「っく…!」

 また出そうになり、学は歯を食いしばった。噛みすぎて、唇から血が出るのに気が付かないほど必死だった。

「学くん、我慢、しないで」

「だめ、だ…っ」

「偉かったよ、がんばったよ。だから…動いて、みて?」

学は息を吐きながら、ゆっくり腰を動かした。

「はぁぁ…っ」

 玲奈が恍惚とした表情で、ぎゅっと手を学の背中に回した。苦しそうでさえあった。

「大丈夫、か…?」

「うん…っはぁ、気持ちいいよ、学くんっ…」

 玲奈の中が、ぎゅっぎゅっと学のものをしめつけた。

「くっ…あ、あ、れい、な、やめ、っ…あああっ…!」

 学はぎゅっと目を閉じた。その締め付けに耐えきれず、出してしまったのだ。

(あ…やってしまった…くそ…)

 我慢が足りなかった。学は後悔しながら目を開けた。玲奈が自分を見ていた。

「ご、ごめん、玲奈…」

「大丈夫?」

 学は自分のものを玲奈から引き抜いた。

「謝らなくていいよ、学くん」

 そういわれると、逆にみじめな気がした。が、玲奈はにこっと笑っていった。

「次は私が上になるね」

 はっと自分のものをみると、出したばかりなのにまだ固かった。横になった学の上に、玲奈が腰を下ろした。その顔はまるで、好物を目の前に出された犬のように、無邪気な喜びで満たされたいた。

「っく、あっ…!」

 再び玲奈とつながって、学は思わず声を上げた。さっきした時よりも、中が腫れているようにぎゅっと締め付けてくるのだ。

「んっ…ああっ…学くん…っ♡」

 自分の方も、先ほどより敏感に玲奈の中の動きに反応してしまっているようだった。玲奈が動くたびに、びくんと体が痙攣する。

(こんなの…初めて、だ…)

 未知の快感に、学は翻弄されていた。

「んんっ…学、くんっ…あ、あ、私、いき、そうっ…♡」

「くっ…玲奈っ…!」

 ぎゅううっと中がうねるように動いて、その搾り取られるような動きに耐えられず、もう一度学も精子を吐き出した。

「はぁ…はぁ……」

 頭まで痺れるような快感が体から去って、学はようやく目を開けた。

「…えへへ」

 玲奈は目が合うと、ちょっと恥ずかしそうに笑ってから腰を上げた。ずるりと学のものが引き抜かれ、ぽたぽたと体液が垂れている。

「ごめん…明日、早いのに」

 笑いながらそんな事を言われて、学は理不尽な焦りを感じた。自分はこんなに消耗してるのに、玲奈が余裕で笑顔を浮かべていることが。学は素早く起き上がり、玲奈の唇を再び捕らえた。

「学くっ…!」

 先ほど玲奈がしたように、彼女の中に舌を入れて、口の中をまさぐる。玲奈が驚いているのが新鮮で、その気持ちが再び学の身体に火をつけた。

「…もう一回、するぞ」

「えっ!?」

 再び彼女の上になり、自分をねじ込む。

「あっ…くぅっ…!」

 さっきさんざんしたので、中はぐちゃぐちゃに濡れていて熱い。玲奈の足をつかんで、学はすべての枷を外して本能のままに動いた。

「あっ…んんっ…ひっ…!」

 今度の玲奈は、余裕なくぎゅっと布団を握っている。それを見て学はやっと満足した気がした。

(やった、俺、玲奈を、気持ちよく、させられてる…!)

 玲奈が細く目を開けて学に訴えた。

「学くんっ…ああっ…やめ、また、いっちゃううっ…!」

 





「……ごめん、玲奈」

「いや…こっちこそごめん」

 事後、お互いシャワーを浴びて冷静になった2人は謝りあった。二人とも根が真面目なだけに、葬式のようなムードだった。

(……恥ずかしい。あんな姿を、見られてしまった…!)

 と、お互い心の中で叫んでいた。

「ま、学くんが…あんなになるなんて、意外」

「くっ…そ、それは玲奈も」

「うん…私の方が先にヤバくなったからね…」

 玲奈がしょうもないというように笑ったので、思わず学もつられて笑った。

「でも、嬉しかったよ…ふふ」

「お、俺は…」

「嬉しくない?」

 学は腕を組んで目をつぶった。自分がさらした醜態を思うと、冷静ではいられない。

「だ、ダメージもデカい……」

「ご、ごめんね…」

「謝らないでくれっ」

 学は目を開けて、玲奈をキッと見た。

「次は、もっとまともに…!するから!」

「ま、まともにって、」

 笑いながら玲奈は横になった。

「そのままの学くんがいいよ。私もそのままを見せたんだから…恥ずかしかったけど」

「う…そうか」

 横になった学の手を、昨日のように玲奈が握った。

「またこうして寝てもいい?」

「…ああ」

 おやすみ。玲奈の口がそう動いて、目が閉じた。

 そうだ、明日は早いのだ。自分も寝なければ。学も目を閉じた。すると瞼の裏に、明日見るであろう青空が広がった。

(明日…晴れるといいな)

 二人で入学式に行くのだ。そして、そして―――

 やる事はたくさんある。二人のスタートは、必ずしも順風満帆で祝福されているわけではない。だけど。

(病める時も、健やかな時も、玲奈となら)

 明るい未来になるという確信が持てるのだった。学は声に出して言った。

「おやすみ、玲奈…愛してる」





ー学エンド 了ー
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