ひどい目

小達出みかん

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年末は楽し年末(3)

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「ちょっと、梓さん…」


 部屋に入ったとたん、梓の手が千寿を布団に引きずり込んだ。


「ぎゃあっ何するんですかっ、荷物がっ」


「野暮なこと言うなよ」


 ぐっと梓が千寿を抱き寄せた。相変わらす足の感覚はない。どうしよう、元にもどらなかったら…。千寿は不安になった。


「大丈夫治るって。俺にちょっと任せてみ」


 梓が安請け合いをする。


「なんなんですかその自信は…」


 嫌な予感がする。千寿は身をこわばらせた。


「わざわざ裏茶屋まできたんだからすることは一つだろ」


「は?裏茶屋?」


 初めて聞いた言葉だったので千寿は聞き返した。


「はー。格子なのにそんなことも知らないとは…ここはただの茶屋じゃなくて、やる場所。一般人が使う

揚屋ってことだな」


「はあ…そんな場所があるんですね」


 千寿は驚いて部屋を見回した。たしかに入ってすぐ布団がしいてあったりするのは普通の茶屋ではな

い。そこでハッとした。私たちはそんなところで何をしようというのか。


「待ってください、梓さん…?」


 おそるおそる千寿は彼を見上げた。今押し問答しているここは布団の上。完全に不利な状況だ。


「やりゃあ戻るから大丈夫。そのまま放っとくと次は痛みがくるぞー」


 梓が脅した。千寿は唇をかんだ。信じるわけはないが少し弱気になったのは確かだ。


「ほ、本当に治るんですか…?」


「お、その気になった?」


「すっごい嫌ですけど…それで絶対治るんなら」


 法度破りは嫌だけど、このまま感覚がないのは気味がわるい。仕事に支障も出る…千寿はしぶしぶうなずいた。断腸の決断だった。


「よし、そうこなくっちゃ」


 梓はニヤリと笑うと、千寿をゆっくり押し倒した。


「ちょっ…私が下ですか?」


「何?上になりたいの?」


 息がかかる距離で、梓に見つめられるとさすがの千寿もとまどった。薬のせいか、梓の頬は少し上気している。仕方がない、治すためだ…。千寿は腹を括って、目を閉じた。


「っ・・・」


 ではさっそくと言わんばかりに千寿の唇に梓の唇がかさなる。梓の口付けは、上手い。やわらかく、千寿の口内を侵食してくる…そういえば、何度目だったっけ。ぼんやりと口付けを受け止めている間に、その唇が離された。


「これで3度目、だな…」


 梓はいったん体を起こし、千寿の着物に手をかけた。


「まって、自分でぬぎますっ」


「だーめ。俺が、脱がすの」


 あわてる千寿だったが、さすがの手際であっという間に帯を解かれてしまった。ペロリと舌なめずりし、恍惚と千寿を見下ろす梓―ー。その顔つきは、まるで美味い獲物にかぶりつく前の獣のようだ。


――食べられる…っ!


 その瞬間、千寿の肌に、恐怖とも快感ともつかない鳥肌が走った。


「ちょ、ちょっと待ってください梓さんッ!」


「あん…?何だよ?」


 馬乗りになったまま梓が答える。


「ちょっとそれ、やめてください!いつもの感じでおねがいしますよ…」


「は?どういうこと」


「こっ…こ、こ、怖いです…」


「はぁ~?」


 梓は人差し指で、ぐっと千寿の額を押した。


「遊女のくせして何だって~?」


 さらに顔を近づける。


「しかも菊染とやったくせに、俺とは怖いだと~~?」


「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」


 よくわけも考えず謝る千寿だったが、梓の腹の中は若干・・・いや、かなり煮えていた。


「なぁ、菊染とはどうやったんだよ?」


梓は千寿の耳元でささやいた。


「どうって…だまされたんですよっ」


「だまされた?」


「お客様に目隠しされて。相手が菊染だなんて思ってもみませんでしたっ」


 聞きながら、梓は千寿の胸元に手を這わした。


「目隠しか。ふぅ~ん」


「んっ・・・!」


 千寿の胸をさぐる。思ったより膨らみがある。緊張しているのか焦っているのか、乳房にも汗をかいて

いる。


「なぁ、汗がすごいぜ?」


「はっ?」


「俺とやるの、緊張する?そんな恥ずかしいの?」


「ちがいますよっ。いまさら、恥じらいなんてないですっ」


「あっそ。じゃ、思う存分やらしてもらうからな」


 梓は強がる千寿の着物をためらいなく剥いだ。細い上半身があらわになる。


「っ…」


 肩に、乳房に、腹…じっくり眺めてやると、面白いほど千寿は赤くなった。頬も、体も。


「くくっ…どこからいじめてやろうかなぁ~」


 梓が舌なめずりすると、真っ赤な千寿はぎゅっと目をつぶり蚊の鳴くような声で言った。


「やっ…やめてくださいっ…」


 その瞬間、梓の中で何かがブチ切れた。


「んっ…はぁっ…」


 千寿が息もできないくらい、深く舌をからめ、唇をあわせる。苦しそうにそれを受け止める千寿を見ると、苛立ちと興奮が頭の中で渦巻いた。


(客の前でもっ…こんな顔してんのか?菊染とも…っ)


 今すぐ千寿の柔らかい肉に自分を突き立てたい。ぐちゃぐちゃに犯してやりたい。


「ほら、千寿…これ、お前のせいだぞ…」


 梓は自分のものを千寿の太ももに押し付けた。


「俺は優しくしてやるつもりだったのに…お前がこんなにしたんだからな」


「…っ!」


 千寿は目を見開いて泣きそうな顔になった。


「だから、その顔やめろっ…」


 やばい。これはやばい。もうおさまりがつかない。梓は今すぐ入れたい衝動を、残った最後の理性で押さえ千寿の下の口を確かめた。


「…濡れてんじゃん…」


 そこは、すでにとろとろと愛液が流れていた。すでに限界そうな一物を、梓は千寿の入り口にあてがった。


「っ…」


 千寿がぎゅっと目をつぶった。さっき押し付けられたそれは、千寿が今まで見た中でもかなり大きいほうだった。ずず、っと中にそれが入ってきた。薬のせいか痛みは感じないが、あまりの大きさに内側の壁が全力でそれを押し返そうとしている。


「やめろっ、締めるなっ…!」


 梓がうわずった声で言う。相変わらず、感覚はない…。ダメだ、このままでは。千寿は力を抜くよう努力した。だんだんと梓のものが奥へ進んでくる。


「どうだ千寿、感覚は?」


 梓がゆっくり動き始めた。


「い、痛くはないのですが…あっ!」


 何度か突かれるうちに、だんだん、なんとなく、胎の奥が熱くなってきた。


「あ、なんか…」


「戻った?」


「少し…熱いみたい、です」


「そう?よかった」


 そういう間も梓は動いている。なんだかつらそうな表情をしている。大丈夫だろうか…。しだいに、膣の奥がはっきりと、心地よく痺れてきた。いつものあの感覚だ。


「も、戻りましたっ。ちゃんと…感じます…っ」


「ん…」


 梓がよかったというように微笑んだ。不覚にも、その笑顔がまぶしくて目をそらしてしまった。


「ちゃんと治ったろっ…」


「は、はい…」


 千寿の奥の一部分を、梓が突いた。顔に表さないよう我慢したが、百戦錬磨の梓には無駄だった。


(ここが、いいのか)


 梓は狙いを定めて再び突いた。


「うぁっ……そこはだめっ…!」


「だめ…?こんな気持ちよさそうなのに?」


「だめったらだめですっ…あっ……!」


 千寿がわめいた。だが梓は動きを止めない。もっと、もっと鳴かせたい。


「だめだ、千寿…お前がいくまで、やめないっ」


「やっ…やめてくださいぃっ!」


 千寿が叫んで手で自分の顔を覆った。


「なに隠してんだよっ」


「こ、こんな顔っ…梓さんにっ…見られたくないっ…!」


「手、どけろよっ」


「いやですっ!あっ、あっ、」


 千寿の体がびくっと震える。手の下で、歯を食いしばっているのが見えた。


「んうううっ・・・・っ!」


 必死に声を抑えて、その体が痙攣する。それと同時に中がぎゅうっと締め上げられた。


「くっ…千寿っ…!」


 我慢の限界を超え、梓は千寿の中に精子を放った。


(ああ、くそっ…)


 ぎりぎりだった。梓はずぷっと自分のものを引き抜いた。千寿が、はぁはぁと息をしながら起き上がっ

た。


「あ、ありがとうござます…治ったみたいです」


「そうかい、よかったよ」


 梓は素っ気なく答えてとっとと外に出て、千寿を置き去りにした。


(俺としたことが…あんなので理性が飛んじまうなんて)


 お高くとまった生意気な舞姫、一度負かして泣かせてやりたい。最初に出会った時、梓はそう思った。そして俄の練習が始まり…。


(そうだ、あそこから調子が狂ったんだ)


 一度打ち解けてみれば、素の千寿は生真面目な女だった。この業界では希少種だ。

 その一緒に舞った時の嬉しそうな顔ときたら。だが、千寿は梓の口付けを硬く拒んだ。それから梓は千寿に対して苛立ちを抱えるようなったのだ。


(だから一度やってやればスッキリすると思ってたのに…)


 夏以来、やっと狙っていたチャンスを物にしたというのに、ぜんぜん気持ちはすっきりしない。むしろ、さっきの千寿の顔が頭にちらついて、体から熱が離れない。


 男女関係なくたくさんの相手と寝所を共にしてきたが、今までこんなことはなかった。梓は腹立ち紛れに石を蹴った。


「くそっ、あんなやつ…」



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