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大空を求めて(8)
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とはいえ、仕事中千寿はずっと上の空だった。
(結局いくらになったのだろう?そして灯紫様はともかく、松風はだまされてくれたんだろうか・・・?)
考えながら歩いていた千寿は、見事に敷居につまづいた。
「わっ、ねえさま、大丈夫ですか?」
ついてきていたゆきがあわてて手を貸した。
「ねえさま今日なんだか変ですよ?本当に平気ですか?」
「ああ、うん、大丈夫。ごめんね・・・」
そこへ後ろから声がかかった。
「大丈夫なものですか。出て行くからと言って、ふぬけてもらっては困ります」
「ヒッ」
ぬっと現れた松風に、千寿はつい声を上げた。
「たったいま、あなたの先生はお帰りになりました。明日の朝迎えにくるそうなので、しっかり準備しておきなさい」
「えっ、明日?!」
「そう、明日です。しっかり荷物の整理をなさい」
千寿はまじまじと松風の顔を見た。わずかに皺のある整った顔には、いつも通り冷徹でなんの他意があるようにも見えない。
(じゃあ、本当に、私、出れるんだ・・・!)
千寿は彼に頭を下げた。
「短い間ですが、お世話になりました。」
「ふん。せいぜい戻ってこないように気をつけなさい」
「は、はい」
「それと、灯紫様は挨拶はいらないとのことです。・・・湿っぽいのはキライだと」
「わかりました・・・」
置手紙でもしていくかな・・・と思案する千寿を一瞥して松風は去った。
その目はひどく冷たかった。
「姉さま・・・、今のどういうことですか!?」
ゆきが千寿を問い詰めた。そうだ、まずゆきとおりんに説明しなくては。
「突然のことでごめんね・・・今説明するから、おりんも呼ばないと」
「いま二階の掃除にいってますから・・・呼んできます」
「うん、お願い・・・」
ゆきは早足で二階に向かった。
(よし、今のすきに)
千寿は梓の部屋へ向かった。日取りが決まったことを伝えなくては。
「梓、いますか」
「お、千寿」
「わっすみませんっ」
梓はちょうど着替え中だった。
「どうした千寿、襲いにきたのか?」
「ちがいますよ!・・・・日取りが、決まりました」
「お、本当か!で、いつ」
「それが、明日の朝だと」
「・・・そりゃまたえらいせっかちだな」
「そうなんです。2人とも大丈夫ですか?」
「じゃ、おれたちはそれより早く出るとするかな」
思案する梓に、千寿は切り出した。
「あの・・・梓。ずっと聞きたかったのですが・・・」
「ん?」
「梓は・・・外に、行くあてはあるのですか?」
深刻な表情の千寿を、梓は笑い飛ばした。
「はは!なんだよそんなこと気にしてたのか?大丈夫、身の振り方は決まったから」
「本当ですか!?ど、どこへ・・・?」
梓は悪戯っぽく笑った。
「それは出てからのお楽しみ。」
「え、え~・・・・」
「あ、菊染にはもう言ったか?」
「いえ、まだ。ゆきとりんにもこれからで・・・」
そこで千寿は2人を待たせていることを思い出した。
「す、すみません。私戻りますね。」
「そうか。菊染には俺が言っとくよ」
「ありがとうございますっ」
千寿は急いで自分の部屋に戻った。
「あ、姉さま!」
りんとゆきがちょこんと座って待っていた。りんはいつもどおりの表情だが、ゆきの顔は硬い。
「ねえさま・・・さっきの松風の話は」
ゆきはうつむいて言った。
「突然のことで・・・ごめんね。2人とも・・・・」
全部本当のことは言えないが、千寿はできるだけ丁寧に説明をした。
「そんな・・・千寿ねえさま、出て行ってしまうの?」
りんは泣きそうな顔になった。反対に、ゆきは少し表情が柔らかくなった。
「・・・なんとなく、わかってました」
「ゆき・・・」
「さいきん姉さん、そわそわしてましたもん」
へへ、とゆきは笑ったが、その目は潤んでいた。
「だから、ぼくも覚悟を決めなきゃなって。ずっと姉さんに守られてきていたからやっぱり悲しいけど・・・そろそろ一人前にならなくちゃって、思ってたんです」
その目は、まっすぐ千寿を見ていた。
「りんの面倒は、これからはぼくが見ます。だから姉さん、安心して出発して」
千寿は何も言えなかった・・・が、次の瞬間畳につっぷしていた。
「うぅ~~~~~~」
「ちょっ、大丈夫ですか」
「ねえさん、しっかり!」
あわてて2人は千寿のそばに寄った。
「うう・・・・こ、こ」
「こ・・・?」
2人が聞き返した。
「こんなに、立派になって・・・・・うう・・・もう・・・一瞬出て行くのがいやになっちゃたじゃないよ・・・・」
ゆきは怒った。
「姉さんたら!そういうところ!しっかりしてるように見えて、すーぐ揺らぐんですから。しっかりしなきゃ、ダメですよ!」
「ねえさんは、外でなにになるの?せんせいの、おくさん?」
りんがきいた。千寿は噴き出しそうになったが、かみくだいて説明した。
「ううん、奥さんにはならないの。先生について、もっと上手に舞えるようにしっかり勉強するの」
「じゃあ、すごい舞姫になるの?!いずものおくにみたいな?」
今度こそふふっと千寿は笑った。りんの無邪気さがかわいかった。
「・・・・そうなれるように、がんばるね」
「そうなんだぁ・・・じゃあ、」
「じゃあ?」
「りんも、がんばります!」
その目はキラキラ輝いていた。まだ恐れを知らない、純粋な目。
「もお、姉さん。泣かないでくださいよ!」
「ごめんね、つい・・・」
情けない顔を二人にさらしてしまったが、ゆきが成長したことが、りんの真っ白な心が、千寿はただ嬉しかった。
片付けをさっさと済まして、千寿はこの午後を3人で楽しくすごすことにした。最後の日ぐらい、いい思いをさせてあげたい。
「久々にお風呂屋さんにでも行こうか」
「本当ですか!」
飛び上がって喜ぶりん。
「い、いや、ぼくはちょっと・・・」
「あー!恥ずかしがってるう!」
「ちがうよっ」
はやしたてるりんに、目をそらすゆき。思わず笑ってしまったが、これが最後だと思うと胸がしめつけられるような気がした。
「さっ、喧嘩してないでいこうよ」
最後なんだから「明るい姉さん」でいよう。そう気持ちを切り替えて、千寿は2人をせかした。
3人で仲良く風呂につかり、露天をひやかし、お腹いっぱいになって帰るころには皆すっかり遊び疲れていた。
「はあ・・・こんなにたくさん甘味を食べたの、初めてです・・・・」
「たのしかったぁ~!!」
すでに夕方を過ぎて、見世は営業開始になっていたが千寿はお構いなしに布団を敷いた。今日は特別だ。
「さ、今夜はもう寝よう!」
千寿の隣にりん、その反対にはゆき。真ん中の長い川の字だ。
あんなにはしゃいでいたりんは、横になったとたん糸が切れたように動かなくなった。
(ほんと、まだ子供なんだよね・・・)
しみじみと千寿が思っていると、ゆきがつっと千寿の袖をひいた。
「・・・・あの・・・」
「どうしたの?」
「姉さまは・・・本当はあの2人と一緒に行くんでしょう?」
ドキリとした。ばれていたのか。
「・・・なんで、それを」
ゆきはちょっと間をおいてこたえた。
「・・・菊染さんがずっとねえさんを見ていたの、僕気がついてました。あと、梓さんも」
ゆきは続けた。
「それで・・・あのお客さんが来なくなったあと、姉さんと2人はよく一緒に話してたから。そのうち2人が出て行くって聞いて、姉さんはなんだか楽しそうにそわそわしてるから、ピンときたんです。」
「ちょっと待って、それは誰からきいたの?」
「さよが、話していました。大丈夫、僕だけにしか言っていないはずです」
「ちょっと、いつの間にそんなこと話す仲になったの。隅に置けないなあ・・・」
千寿がからかうと、ゆきは鋭くやりかえした。
「姉さんこそ、2人のどっちがすきなんですか?」
千寿は答えに窮した。
「う~ん・・・どっちも、好きかな・・・」
「同じくらい?」
千寿はさらに考えこんだ。
「同じ・・・なのかなあ・・・」
「その内訳は?」
「ずいぶんつっこむね、おゆきさん・・・」
ゆきは真剣に言った。
「だって、はっきりさせといた方が良いでしょう。もう明日から相談に乗ることもできないんだから・・・」
たしかに、それもそうかもしれない。千寿は真剣に2人への気持ちについて考えた。
夕那に感じたような気持ちは、2人にはない。
(そもそもあれは過去の黒々とした恨みを引きずっていただけで、恋ではなかったのかも・・・。)
2人に感じるのは、身が焦がされるような熱い気持ちではなく、ささやかなかがり火に冷えた手をかざしたときに感じるような安心と、温かな気持ちだ。
(感謝・・・もあるけど、もっと、こう・・・)
もし梓と一緒になれば、毎日退屈しないだろう。喧嘩もするだろうけど、あのいたずらっぽい目の輝きはずっと千寿を魅了しつづけるだろう。
もし菊染と一緒になれば、彼はそのまっすぐさで千寿の心を助けてくれるだろう。一番辛いときにそうしてくれたように、きっとどんな時も・・・。
そうだ、2人には、2人と一緒の先には、未来を感じる。今までの千寿の生き方と違う、明るい未来を。そう千寿は気がついた。
「・・・やっぱり2人とも、好き。でも今は、選べない。」
「・・・それで、いいんですか・・・?」
心配そうにゆきは聞いた。
「今はね。外に出て、ちゃんと「千寿」をやめてから・・・それから、考える」
まだ、どうなるかはわからない。でも目を閉じると、温かな光が頭の中に広がった。
「ゆき・・・今まで、ありがとう。ゆきの舞は本当に上達したから。早めにここを出るようにするんだよ」
「うん、姉さま・・・」
(結局いくらになったのだろう?そして灯紫様はともかく、松風はだまされてくれたんだろうか・・・?)
考えながら歩いていた千寿は、見事に敷居につまづいた。
「わっ、ねえさま、大丈夫ですか?」
ついてきていたゆきがあわてて手を貸した。
「ねえさま今日なんだか変ですよ?本当に平気ですか?」
「ああ、うん、大丈夫。ごめんね・・・」
そこへ後ろから声がかかった。
「大丈夫なものですか。出て行くからと言って、ふぬけてもらっては困ります」
「ヒッ」
ぬっと現れた松風に、千寿はつい声を上げた。
「たったいま、あなたの先生はお帰りになりました。明日の朝迎えにくるそうなので、しっかり準備しておきなさい」
「えっ、明日?!」
「そう、明日です。しっかり荷物の整理をなさい」
千寿はまじまじと松風の顔を見た。わずかに皺のある整った顔には、いつも通り冷徹でなんの他意があるようにも見えない。
(じゃあ、本当に、私、出れるんだ・・・!)
千寿は彼に頭を下げた。
「短い間ですが、お世話になりました。」
「ふん。せいぜい戻ってこないように気をつけなさい」
「は、はい」
「それと、灯紫様は挨拶はいらないとのことです。・・・湿っぽいのはキライだと」
「わかりました・・・」
置手紙でもしていくかな・・・と思案する千寿を一瞥して松風は去った。
その目はひどく冷たかった。
「姉さま・・・、今のどういうことですか!?」
ゆきが千寿を問い詰めた。そうだ、まずゆきとおりんに説明しなくては。
「突然のことでごめんね・・・今説明するから、おりんも呼ばないと」
「いま二階の掃除にいってますから・・・呼んできます」
「うん、お願い・・・」
ゆきは早足で二階に向かった。
(よし、今のすきに)
千寿は梓の部屋へ向かった。日取りが決まったことを伝えなくては。
「梓、いますか」
「お、千寿」
「わっすみませんっ」
梓はちょうど着替え中だった。
「どうした千寿、襲いにきたのか?」
「ちがいますよ!・・・・日取りが、決まりました」
「お、本当か!で、いつ」
「それが、明日の朝だと」
「・・・そりゃまたえらいせっかちだな」
「そうなんです。2人とも大丈夫ですか?」
「じゃ、おれたちはそれより早く出るとするかな」
思案する梓に、千寿は切り出した。
「あの・・・梓。ずっと聞きたかったのですが・・・」
「ん?」
「梓は・・・外に、行くあてはあるのですか?」
深刻な表情の千寿を、梓は笑い飛ばした。
「はは!なんだよそんなこと気にしてたのか?大丈夫、身の振り方は決まったから」
「本当ですか!?ど、どこへ・・・?」
梓は悪戯っぽく笑った。
「それは出てからのお楽しみ。」
「え、え~・・・・」
「あ、菊染にはもう言ったか?」
「いえ、まだ。ゆきとりんにもこれからで・・・」
そこで千寿は2人を待たせていることを思い出した。
「す、すみません。私戻りますね。」
「そうか。菊染には俺が言っとくよ」
「ありがとうございますっ」
千寿は急いで自分の部屋に戻った。
「あ、姉さま!」
りんとゆきがちょこんと座って待っていた。りんはいつもどおりの表情だが、ゆきの顔は硬い。
「ねえさま・・・さっきの松風の話は」
ゆきはうつむいて言った。
「突然のことで・・・ごめんね。2人とも・・・・」
全部本当のことは言えないが、千寿はできるだけ丁寧に説明をした。
「そんな・・・千寿ねえさま、出て行ってしまうの?」
りんは泣きそうな顔になった。反対に、ゆきは少し表情が柔らかくなった。
「・・・なんとなく、わかってました」
「ゆき・・・」
「さいきん姉さん、そわそわしてましたもん」
へへ、とゆきは笑ったが、その目は潤んでいた。
「だから、ぼくも覚悟を決めなきゃなって。ずっと姉さんに守られてきていたからやっぱり悲しいけど・・・そろそろ一人前にならなくちゃって、思ってたんです」
その目は、まっすぐ千寿を見ていた。
「りんの面倒は、これからはぼくが見ます。だから姉さん、安心して出発して」
千寿は何も言えなかった・・・が、次の瞬間畳につっぷしていた。
「うぅ~~~~~~」
「ちょっ、大丈夫ですか」
「ねえさん、しっかり!」
あわてて2人は千寿のそばに寄った。
「うう・・・・こ、こ」
「こ・・・?」
2人が聞き返した。
「こんなに、立派になって・・・・・うう・・・もう・・・一瞬出て行くのがいやになっちゃたじゃないよ・・・・」
ゆきは怒った。
「姉さんたら!そういうところ!しっかりしてるように見えて、すーぐ揺らぐんですから。しっかりしなきゃ、ダメですよ!」
「ねえさんは、外でなにになるの?せんせいの、おくさん?」
りんがきいた。千寿は噴き出しそうになったが、かみくだいて説明した。
「ううん、奥さんにはならないの。先生について、もっと上手に舞えるようにしっかり勉強するの」
「じゃあ、すごい舞姫になるの?!いずものおくにみたいな?」
今度こそふふっと千寿は笑った。りんの無邪気さがかわいかった。
「・・・・そうなれるように、がんばるね」
「そうなんだぁ・・・じゃあ、」
「じゃあ?」
「りんも、がんばります!」
その目はキラキラ輝いていた。まだ恐れを知らない、純粋な目。
「もお、姉さん。泣かないでくださいよ!」
「ごめんね、つい・・・」
情けない顔を二人にさらしてしまったが、ゆきが成長したことが、りんの真っ白な心が、千寿はただ嬉しかった。
片付けをさっさと済まして、千寿はこの午後を3人で楽しくすごすことにした。最後の日ぐらい、いい思いをさせてあげたい。
「久々にお風呂屋さんにでも行こうか」
「本当ですか!」
飛び上がって喜ぶりん。
「い、いや、ぼくはちょっと・・・」
「あー!恥ずかしがってるう!」
「ちがうよっ」
はやしたてるりんに、目をそらすゆき。思わず笑ってしまったが、これが最後だと思うと胸がしめつけられるような気がした。
「さっ、喧嘩してないでいこうよ」
最後なんだから「明るい姉さん」でいよう。そう気持ちを切り替えて、千寿は2人をせかした。
3人で仲良く風呂につかり、露天をひやかし、お腹いっぱいになって帰るころには皆すっかり遊び疲れていた。
「はあ・・・こんなにたくさん甘味を食べたの、初めてです・・・・」
「たのしかったぁ~!!」
すでに夕方を過ぎて、見世は営業開始になっていたが千寿はお構いなしに布団を敷いた。今日は特別だ。
「さ、今夜はもう寝よう!」
千寿の隣にりん、その反対にはゆき。真ん中の長い川の字だ。
あんなにはしゃいでいたりんは、横になったとたん糸が切れたように動かなくなった。
(ほんと、まだ子供なんだよね・・・)
しみじみと千寿が思っていると、ゆきがつっと千寿の袖をひいた。
「・・・・あの・・・」
「どうしたの?」
「姉さまは・・・本当はあの2人と一緒に行くんでしょう?」
ドキリとした。ばれていたのか。
「・・・なんで、それを」
ゆきはちょっと間をおいてこたえた。
「・・・菊染さんがずっとねえさんを見ていたの、僕気がついてました。あと、梓さんも」
ゆきは続けた。
「それで・・・あのお客さんが来なくなったあと、姉さんと2人はよく一緒に話してたから。そのうち2人が出て行くって聞いて、姉さんはなんだか楽しそうにそわそわしてるから、ピンときたんです。」
「ちょっと待って、それは誰からきいたの?」
「さよが、話していました。大丈夫、僕だけにしか言っていないはずです」
「ちょっと、いつの間にそんなこと話す仲になったの。隅に置けないなあ・・・」
千寿がからかうと、ゆきは鋭くやりかえした。
「姉さんこそ、2人のどっちがすきなんですか?」
千寿は答えに窮した。
「う~ん・・・どっちも、好きかな・・・」
「同じくらい?」
千寿はさらに考えこんだ。
「同じ・・・なのかなあ・・・」
「その内訳は?」
「ずいぶんつっこむね、おゆきさん・・・」
ゆきは真剣に言った。
「だって、はっきりさせといた方が良いでしょう。もう明日から相談に乗ることもできないんだから・・・」
たしかに、それもそうかもしれない。千寿は真剣に2人への気持ちについて考えた。
夕那に感じたような気持ちは、2人にはない。
(そもそもあれは過去の黒々とした恨みを引きずっていただけで、恋ではなかったのかも・・・。)
2人に感じるのは、身が焦がされるような熱い気持ちではなく、ささやかなかがり火に冷えた手をかざしたときに感じるような安心と、温かな気持ちだ。
(感謝・・・もあるけど、もっと、こう・・・)
もし梓と一緒になれば、毎日退屈しないだろう。喧嘩もするだろうけど、あのいたずらっぽい目の輝きはずっと千寿を魅了しつづけるだろう。
もし菊染と一緒になれば、彼はそのまっすぐさで千寿の心を助けてくれるだろう。一番辛いときにそうしてくれたように、きっとどんな時も・・・。
そうだ、2人には、2人と一緒の先には、未来を感じる。今までの千寿の生き方と違う、明るい未来を。そう千寿は気がついた。
「・・・やっぱり2人とも、好き。でも今は、選べない。」
「・・・それで、いいんですか・・・?」
心配そうにゆきは聞いた。
「今はね。外に出て、ちゃんと「千寿」をやめてから・・・それから、考える」
まだ、どうなるかはわからない。でも目を閉じると、温かな光が頭の中に広がった。
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「うん、姉さま・・・」
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