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返り咲き
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「これよりごらんに入れます『百獣めぐり』私が様々な動物に成り代わり陛下をはるか異国の地へとお連れいたします・・・」
こうして口上を述べるのは久々だ。だが身体にしみついているそれは意識をしなくとも口をついで出た。
「まずは荒野をさまよう獣の王、獅子!」
セレンは両手を広げて左右に大きく動き、目にもとまらぬ速さでぐるりと回転しピタリと止まった。
そのキレのある動きに、王だけでなく皆の目が吸い寄せられた。が、これは準備運動を兼ねた前座の技だ。
「次は、緑あふれる森に住まう、猛毒の蛇・・・!」
セレンは床に手をつき、ぐっとつかんだ。
数え切れないほど披露してきた技だが、慎重に下半身に力をこめ、地面を蹴り上げて宙で動きを止める。
その蛇に見立てた両足をゆっくりゆっくりと伸ばし、セレンの身体は完全にさかさまの蛇となった。その状態でセレンは大きく口を開いた。
「蛇は、茂みのうさぎを狙っています・・・うさぎは驚いて!」
セレンはそのまま足で反動をつけ、手で地面を押し逆さのまま飛び跳ねた。
――さすがに子どもだったころと比べると、身体がおもい。
セレンは地面に足を下ろしうさぎを切り上げた。
一瞬チラリと目にすれば、観客が自分をどう見ているのかはわかる。長年のカンだ。
(よし、陛下にはなかなかの好感触!)
そう思ったセレンは、ブリッジをして縦横無尽に歩く「蟹」、地面に両手をつけ、伸ばした足をぐるぐると回転させる「魚」など次々と披露した。
「では次は、最後の大技、大空を高々と飛ぶ、鳥!」
これはコツがいり、危険も多い技だ。だが皆があっと驚き、銭をはずんでもらえるので必死に練習して覚えた技だった。女でこれができる子どもは、セレン一人だけだった。
リズムをつけ、セレンは飛んだ。まずは側転、そして間を空けずに連続して宙返り。ぐるりと風を切って、世界が自分の周りで一回転するのは爽快だ。最後にひねりを加えて、着地。
観客の目には、軽々と身体一つで宙を舞うセレンが見えたはずだ。
(よかった、失敗、なし!)
ほっとしたセレンは膝をついた。
「以上が、私の芸になります。陛下」
さすがのセレンも、少し息が上がっていた。
すると陛下はイスから立ち、セレンの前へと立った。
「陛下――」
団長が渋面で止めようとしたが、手遅れだった。
「驚いた。西の人間はこのような事ができる者がいるのか・・・。他にできる技はあるのか?」
「はい。今披露しなかった技もいくつかあります」
陛下は満足気にうなづいた。
「よいぞ。本番で最高の芸を、披露してくれ。それを条件に、侍女に戻ることを許す」
セレンは頭を下げて礼を述べた。
「ありがとうございます、陛下」
涼しい顔のセレンを、団長は苦虫をかみつぶしたような顔で見つめていた。
セレンとミリアネスは意気揚々と部屋へと戻った。
「シザリア、やったわよ!」
「あ、セレン!ということは・・・」
「そう、王がお許しになったのよ」
笑顔で喜ぶミリア様だったが、セレンは彼さきほどから女の様子が気になっていた。
「ミリア様、その後お体は平気ですか?その・・・右手は、どうなさったのですか」
ミリア様は一瞬はっとしたが、すぐため息と共にほほえんだ。
「セレンには、なんでもすぐばれてしまうわね。でも手はね・・・たいした事、ないのよ」
たしかに注意深く見ていなければ気がつかないだろう。が、さきほどから姫は聞き手であるのに右手を使おうとしていなかった。
「・・・少し、麻痺が残ってしまっただけなの。でも大丈夫。薬のおかげで命に別状はないし、陛下も気がついていないのよ」
セレンは絶句した。なんという事だろう。ミリア様の身体が、損なわれてしまっていたとは―・・・!
セレンの胸の中で、めらめらと怒りの炎が燃え出した。
(許せない、ミリア様の大事な、手を・・・・・!)
大事な時に自分を姫から遠ざけていた団長と、毒を入れた犯人・・・そしておめおめとミリア
様に毒を飲ませてしまった自分に対しても、怒りは膨れ上がった。
「シザリア、あの時のお茶は、どこで用意したものだったの」
シザリアはうつむいてつらそうに言った。
「いつもは厨房の人に頼んで淹れてもらうのだけど・・・あの日は厨房が忙しかったから、自分で淹れたの。気がつかなかった、私のミスよ・・・」
ミリアネスは、落ち込むシザリアの方に左手を置いた。
「あなたのせいではないわ」
セレンとしても、シザリアを責める気はない。彼女は幼少時から長い間乳姉妹として姫に仕え、イベリス行きまで承知してくれた。
彼女が手を下すことは、まず考えられない。
ただ、犯人につながる手がかりを得たい。
「茶葉はどうだった?厨房で怪しい動きとかはなかった?」
シザリアは首を振った。
「あとで確かめてみたけど、茶葉に細工はしてなかったわ。その時厨房はばたばたしていたから・・・怪しい動きといわれると、わからないわ」
セレンは考えた。
「という事は、シザリアが来る前に、誰かが姫と私のカップに毒を塗った・・・という可能性が、高いか」
「私も、そう思うの・・・ちょっと待って」
シザリアはポケットから小さい紙片を取り出した。
「あの日厨房にいた人の、リストよ。・・・だれも信用できないから、こうして持ち歩いているの」
さすがはシザリア。セレンはざっと名前を眺めた。男女様々で10数人ほどいる。
「この中で、姫のカップがあの水色の薔薇ものもだって知ってるひとは、誰だろう?」
「そうね・・・特に隠してはいなかったし、いつも私はそれでお茶を頼んでいたから、皆知っていると思うわ」
「そっか・・・」
それだと特定は難しいだろう。しかも毒はウツギのものという事がわかっている。厨房以外人間の仕業ということだって考えられる。
シザリアは肩を落として言った。
「今後、私も気をつけるわ・・・今はすべて、私が毒見しているの」
その言葉をきいて、セレンは申し訳なくなった。
「大変だったね、シザリア・・・。今日からは、私と交代で毒見をしよう」
しかし彼女はたくましく笑った。
「あら、ダメよ。あなたの代わりはいないんだから。私は宙返りなんてできないわよ」
そういえば、陛下の言っていたことは一体どういうことなのだろう。セレンはミリアネスに聞いた。
「陛下が言っていた、催しというのは、なんの催しなのですか?」
ああ、と彼女は説明した。
「前の后様と陛下の間の、唯一の一人息子が、あと少しで成人するので、その祝賀会をするのよ。慣例を破って、外の国の人も来賓として招くんですって。だから気合が入っているみたい。」
セレンは驚いた。
「外の国の?たしかに慣例破りですね。イベリスなのに」
ミリア様が遠慮がちに言った。
「ええ。シャルリュス宰相の方針で、これからは外交に力を入れるそうよ。ただイベリスはその・・あまりおもてなしの文化が発達していないから」
「そうなんです。だからあの日の夜も、外の酒商人や芸人たちを呼んで、どれが祝賀パーティーにふさわしいかって大騒ぎして決めていたのよ」
シザリアが口をとがらせてそう言った。
(なるほど・・・だからあの日、団長は下戸なのに酔っていたのか)
セレンはいろいろと腑に落ちた。
「セレンはそれらをさしおいて今日選ばれちゃったんだから、責任重大ね」
「そうですね・・・」
もし失敗でもすれば、姫の顔に泥をぬることになる。イベリス人の役に立ってしまうのは癪だ
が、それは避けたい。
(よし・・・練習の時間を前より増やそう。幸い自由の身になったわけだし。でもその前に、まず)
もう一度ウツギの村に向かって、犯人について情報収集をしよう。
こうして口上を述べるのは久々だ。だが身体にしみついているそれは意識をしなくとも口をついで出た。
「まずは荒野をさまよう獣の王、獅子!」
セレンは両手を広げて左右に大きく動き、目にもとまらぬ速さでぐるりと回転しピタリと止まった。
そのキレのある動きに、王だけでなく皆の目が吸い寄せられた。が、これは準備運動を兼ねた前座の技だ。
「次は、緑あふれる森に住まう、猛毒の蛇・・・!」
セレンは床に手をつき、ぐっとつかんだ。
数え切れないほど披露してきた技だが、慎重に下半身に力をこめ、地面を蹴り上げて宙で動きを止める。
その蛇に見立てた両足をゆっくりゆっくりと伸ばし、セレンの身体は完全にさかさまの蛇となった。その状態でセレンは大きく口を開いた。
「蛇は、茂みのうさぎを狙っています・・・うさぎは驚いて!」
セレンはそのまま足で反動をつけ、手で地面を押し逆さのまま飛び跳ねた。
――さすがに子どもだったころと比べると、身体がおもい。
セレンは地面に足を下ろしうさぎを切り上げた。
一瞬チラリと目にすれば、観客が自分をどう見ているのかはわかる。長年のカンだ。
(よし、陛下にはなかなかの好感触!)
そう思ったセレンは、ブリッジをして縦横無尽に歩く「蟹」、地面に両手をつけ、伸ばした足をぐるぐると回転させる「魚」など次々と披露した。
「では次は、最後の大技、大空を高々と飛ぶ、鳥!」
これはコツがいり、危険も多い技だ。だが皆があっと驚き、銭をはずんでもらえるので必死に練習して覚えた技だった。女でこれができる子どもは、セレン一人だけだった。
リズムをつけ、セレンは飛んだ。まずは側転、そして間を空けずに連続して宙返り。ぐるりと風を切って、世界が自分の周りで一回転するのは爽快だ。最後にひねりを加えて、着地。
観客の目には、軽々と身体一つで宙を舞うセレンが見えたはずだ。
(よかった、失敗、なし!)
ほっとしたセレンは膝をついた。
「以上が、私の芸になります。陛下」
さすがのセレンも、少し息が上がっていた。
すると陛下はイスから立ち、セレンの前へと立った。
「陛下――」
団長が渋面で止めようとしたが、手遅れだった。
「驚いた。西の人間はこのような事ができる者がいるのか・・・。他にできる技はあるのか?」
「はい。今披露しなかった技もいくつかあります」
陛下は満足気にうなづいた。
「よいぞ。本番で最高の芸を、披露してくれ。それを条件に、侍女に戻ることを許す」
セレンは頭を下げて礼を述べた。
「ありがとうございます、陛下」
涼しい顔のセレンを、団長は苦虫をかみつぶしたような顔で見つめていた。
セレンとミリアネスは意気揚々と部屋へと戻った。
「シザリア、やったわよ!」
「あ、セレン!ということは・・・」
「そう、王がお許しになったのよ」
笑顔で喜ぶミリア様だったが、セレンは彼さきほどから女の様子が気になっていた。
「ミリア様、その後お体は平気ですか?その・・・右手は、どうなさったのですか」
ミリア様は一瞬はっとしたが、すぐため息と共にほほえんだ。
「セレンには、なんでもすぐばれてしまうわね。でも手はね・・・たいした事、ないのよ」
たしかに注意深く見ていなければ気がつかないだろう。が、さきほどから姫は聞き手であるのに右手を使おうとしていなかった。
「・・・少し、麻痺が残ってしまっただけなの。でも大丈夫。薬のおかげで命に別状はないし、陛下も気がついていないのよ」
セレンは絶句した。なんという事だろう。ミリア様の身体が、損なわれてしまっていたとは―・・・!
セレンの胸の中で、めらめらと怒りの炎が燃え出した。
(許せない、ミリア様の大事な、手を・・・・・!)
大事な時に自分を姫から遠ざけていた団長と、毒を入れた犯人・・・そしておめおめとミリア
様に毒を飲ませてしまった自分に対しても、怒りは膨れ上がった。
「シザリア、あの時のお茶は、どこで用意したものだったの」
シザリアはうつむいてつらそうに言った。
「いつもは厨房の人に頼んで淹れてもらうのだけど・・・あの日は厨房が忙しかったから、自分で淹れたの。気がつかなかった、私のミスよ・・・」
ミリアネスは、落ち込むシザリアの方に左手を置いた。
「あなたのせいではないわ」
セレンとしても、シザリアを責める気はない。彼女は幼少時から長い間乳姉妹として姫に仕え、イベリス行きまで承知してくれた。
彼女が手を下すことは、まず考えられない。
ただ、犯人につながる手がかりを得たい。
「茶葉はどうだった?厨房で怪しい動きとかはなかった?」
シザリアは首を振った。
「あとで確かめてみたけど、茶葉に細工はしてなかったわ。その時厨房はばたばたしていたから・・・怪しい動きといわれると、わからないわ」
セレンは考えた。
「という事は、シザリアが来る前に、誰かが姫と私のカップに毒を塗った・・・という可能性が、高いか」
「私も、そう思うの・・・ちょっと待って」
シザリアはポケットから小さい紙片を取り出した。
「あの日厨房にいた人の、リストよ。・・・だれも信用できないから、こうして持ち歩いているの」
さすがはシザリア。セレンはざっと名前を眺めた。男女様々で10数人ほどいる。
「この中で、姫のカップがあの水色の薔薇ものもだって知ってるひとは、誰だろう?」
「そうね・・・特に隠してはいなかったし、いつも私はそれでお茶を頼んでいたから、皆知っていると思うわ」
「そっか・・・」
それだと特定は難しいだろう。しかも毒はウツギのものという事がわかっている。厨房以外人間の仕業ということだって考えられる。
シザリアは肩を落として言った。
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その言葉をきいて、セレンは申し訳なくなった。
「大変だったね、シザリア・・・。今日からは、私と交代で毒見をしよう」
しかし彼女はたくましく笑った。
「あら、ダメよ。あなたの代わりはいないんだから。私は宙返りなんてできないわよ」
そういえば、陛下の言っていたことは一体どういうことなのだろう。セレンはミリアネスに聞いた。
「陛下が言っていた、催しというのは、なんの催しなのですか?」
ああ、と彼女は説明した。
「前の后様と陛下の間の、唯一の一人息子が、あと少しで成人するので、その祝賀会をするのよ。慣例を破って、外の国の人も来賓として招くんですって。だから気合が入っているみたい。」
セレンは驚いた。
「外の国の?たしかに慣例破りですね。イベリスなのに」
ミリア様が遠慮がちに言った。
「ええ。シャルリュス宰相の方針で、これからは外交に力を入れるそうよ。ただイベリスはその・・あまりおもてなしの文化が発達していないから」
「そうなんです。だからあの日の夜も、外の酒商人や芸人たちを呼んで、どれが祝賀パーティーにふさわしいかって大騒ぎして決めていたのよ」
シザリアが口をとがらせてそう言った。
(なるほど・・・だからあの日、団長は下戸なのに酔っていたのか)
セレンはいろいろと腑に落ちた。
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「そうですね・・・」
もし失敗でもすれば、姫の顔に泥をぬることになる。イベリス人の役に立ってしまうのは癪だ
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