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エピローグ/夏休みをもう一度
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「ん~~……おはよう」
だいぶ起きるのが遅くなってしまった。詩音は起き上がって時計を探したが――引っ越したばかりで、見当たらない。
そんな詩音を、蒼汰はそっとベッドに引き戻した。
「ふふ、まだおはようしちゃだめ」
「えー?」
「もうすこし朝寝しちゃおうよ」
蒼汰の甘い声が、誘惑的に響く。
「でも、そうちゃんも忙しいでしょ……」
「引っ越し休み、1週間くらいもらったから大丈夫」
そうだ、そういえば。詩音は蒼汰に尋ねた。
「そうだったね。ちょっと早い夏休みかぁ……何する? どこか行きたいところ、ある……?」
詩音が聞くと、蒼汰はちょっと身体を起こして、頬杖で詩音に視線を送った。
無邪気だけど色っぽい、なんとも蠱惑的な笑みだった。
「どこも行きたくない。しーちゃんとここで、二人っきりの夏休みにしたいな」
「え?」
詩音が首をかしげると、蒼汰は詩音の髪を指にからめながら歌うように言った。
「したいことだけする、わがままな夏休み」
そう言われて、詩音は微笑んだ。
「そういわれると、なんか、子どもの時の夏休みみたいだねぇ」
セミの声を聴いたり、お母さんのつくったかき氷をたべたり、ただずっと、好きな絵を描き続けたり。
――そんな夏休みもいいかもな。
そう思った詩音の頬に、蒼汰の指がふれる。
ふふ、と響く笑みは、静かで嬉し気だ。
「食べたいときに食べて、寝て――エッチする。子供だけど、大人みたいな夏休み」
うっとりとしたその目は、誘因力に満ちていて――常識人な詩音は思わず、ごくんとつばをのんだ。
「そ、そんな事したら……なんか、ダメになっちゃいそう」
蒼汰はその腕の中に、詩音を閉じ込めた。
「いいじゃない。ダメなんかじゃないよ。僕にとっては……極上の夏休みだよ」
真面目に答えられて、詩音はあきらめた。というか、受け入れた。
「まぁ、たしかに地元だから、わざわざもう行こうってところもないし――」
そうちゃんと、気がすむまで二人で遊びつくす。色んな意味で。
「それでいっか。引きこもろう」
「ふふ、嬉しい」
この上なく嬉しそうに微笑んだあと、蒼汰は起き上がった。
「じゃあ、スーパーにいって、おこもり用の食材を買ってこようかな。何食べたい?」
詩音は起き上がった。
「なら、トマトパスタにしよう。そーちゃんに作ってあげるって言ったから」
「えー、僕が作るよ」
ああでもない、こうでもない。そんなおしゃべりをしながら、二人で服を着て、靴を履いて、手をつないで外にでる。
まるで仲の良い子供みたいに――二人は手をつないだまま、並んでスーパーへと向かった。
「わぁ、暑い」
「ほんとだ。ね、アイスも買っちゃおうか」
「ふふ、好きなだけ!」
二人の大人の夏休みは、始まったばかり――。
だいぶ起きるのが遅くなってしまった。詩音は起き上がって時計を探したが――引っ越したばかりで、見当たらない。
そんな詩音を、蒼汰はそっとベッドに引き戻した。
「ふふ、まだおはようしちゃだめ」
「えー?」
「もうすこし朝寝しちゃおうよ」
蒼汰の甘い声が、誘惑的に響く。
「でも、そうちゃんも忙しいでしょ……」
「引っ越し休み、1週間くらいもらったから大丈夫」
そうだ、そういえば。詩音は蒼汰に尋ねた。
「そうだったね。ちょっと早い夏休みかぁ……何する? どこか行きたいところ、ある……?」
詩音が聞くと、蒼汰はちょっと身体を起こして、頬杖で詩音に視線を送った。
無邪気だけど色っぽい、なんとも蠱惑的な笑みだった。
「どこも行きたくない。しーちゃんとここで、二人っきりの夏休みにしたいな」
「え?」
詩音が首をかしげると、蒼汰は詩音の髪を指にからめながら歌うように言った。
「したいことだけする、わがままな夏休み」
そう言われて、詩音は微笑んだ。
「そういわれると、なんか、子どもの時の夏休みみたいだねぇ」
セミの声を聴いたり、お母さんのつくったかき氷をたべたり、ただずっと、好きな絵を描き続けたり。
――そんな夏休みもいいかもな。
そう思った詩音の頬に、蒼汰の指がふれる。
ふふ、と響く笑みは、静かで嬉し気だ。
「食べたいときに食べて、寝て――エッチする。子供だけど、大人みたいな夏休み」
うっとりとしたその目は、誘因力に満ちていて――常識人な詩音は思わず、ごくんとつばをのんだ。
「そ、そんな事したら……なんか、ダメになっちゃいそう」
蒼汰はその腕の中に、詩音を閉じ込めた。
「いいじゃない。ダメなんかじゃないよ。僕にとっては……極上の夏休みだよ」
真面目に答えられて、詩音はあきらめた。というか、受け入れた。
「まぁ、たしかに地元だから、わざわざもう行こうってところもないし――」
そうちゃんと、気がすむまで二人で遊びつくす。色んな意味で。
「それでいっか。引きこもろう」
「ふふ、嬉しい」
この上なく嬉しそうに微笑んだあと、蒼汰は起き上がった。
「じゃあ、スーパーにいって、おこもり用の食材を買ってこようかな。何食べたい?」
詩音は起き上がった。
「なら、トマトパスタにしよう。そーちゃんに作ってあげるって言ったから」
「えー、僕が作るよ」
ああでもない、こうでもない。そんなおしゃべりをしながら、二人で服を着て、靴を履いて、手をつないで外にでる。
まるで仲の良い子供みたいに――二人は手をつないだまま、並んでスーパーへと向かった。
「わぁ、暑い」
「ほんとだ。ね、アイスも買っちゃおうか」
「ふふ、好きなだけ!」
二人の大人の夏休みは、始まったばかり――。
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