冷酷宰相様のわかりにくい溺愛~役立たずと虐められ、権力者へのハニトラ要員にされましたが、すっかり気に入られてしまったようです~

小達出みかん

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邪魔な小娘の使い道

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「ああ、もう疲れたわ!」
 夕刻、屋敷に帰ってきたデリラ侯爵夫人は、かえって来るなり着替えもせずソファに座って煙管を取り出した。すかさず、見目麗しい男がその先に火をつける。
「デリラ、お茶をお持ちしましょうか」
 意味ありげなまなざしで彼が聞く。デリラはうなずいた。
「ええ、いつもの濃いものを。ニック、あなたの分もね」
 運ばれてきたコニャック入りの紅茶に口をつけながら、デリラはイライラと隣に侍る若い男――愛人のニックに愚痴を吐いた。
「本当に腹が立つわ。ここのとこと、ウチは冷遇されてばかり。所領だって取り上げられたのよ! ウチは主人がいないからって、やりたいほうだい。ぜんぶあの若造がのさばってきたせいよ」
 今日のサロンに同行していたニックは、それを聞いてにやりと笑う。
「だから、アーシュ男爵もおっしゃっていたではないですか。あの宰相殿の隙をつき、引きずり降ろしてやりましょうと」
 紅茶のカップを干したデリラは、かたんとそれを置いて笑った。
「甘い罠、ね――。かび臭いくらい古典的だけど、効果はあるかも」
「そうですよ。古今東西、美女にさからえる男はいません」
「でもあの男、ずっと独身をとおしてきてるのでしょ? つけ入るすきがあるかしら」
 ニックは笑う。
「ふふ、さびしい独り身だからこそ、ですよ」
 デリラは煙管をくゆらせながら、うーんと考えた。
「各家一人ずつ、女を差し向けるって話だったわね。さて、ウチはどんな女を送ればいいかしら。ニック、あなたは娼館にも伝手があるわね?」
 するとニックは首を振った。
「プロはやめておいた方がいいでしょう。あの手の男はきっと感づいて、警戒するはず」
「じゃあどんな女がいいの? 素人? 町娘に金でも渡す? でも口が軽そうで心配だわ」
 ニックがにやりと笑う。
「絶対裏切らないのは、この公爵家の血が入っている女ですよ。いるじゃないですか――適任が」
 するとデリラもぴんときたのか、ふうっと煙を吐き出して低く笑った。
「ああ、いたいた、いたわねぇ。素人で、ウチの血が入っていて、差し出すのにぴったりの小娘が」
「そう、あれを使わない手はありませんよ。だって身内ですしね」
 じゅっと陶器の灰皿に煙管をおしつけ、デリラはうなずいた。
「決まりね。娼婦の娘らしく、役に立ってもらいましょう。憎たらしい小娘だけど――売り飛ばさないでコキ使ってやってよかったわ」
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