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チョーカーリングで異世界転移

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二日続けて行われる
冬祭り

今日は一人
この場所へと来た

神社まで続く通りを一周してくると
並んでいる屋台の中に
チョーカーリングと
暖簾をたてている店を見つける


珍しいな
屋台の指輪屋なんてあるのか

指輪屋さんへと近づくと
店主の男が目の前へと
現れる

「いらっしゃいませ…

どうぞ気に入った品があったら
試しに指にはめてみてくださいな…」

店主は深くフードを被っていて
ちょっと怪しくも見えた


何か…怖そうなお兄さんだな

店主に会釈され
オレがそれを返す

どれどれ…何があるのかな?

並べられた指輪を見ると
値札に指輪の名前らしきものが
書かれているのに気づいた


表記された名前を見てみると
そこには「魔王の血肉のバラ」と書かれていた


「…何か
中二病っぽいなw」

オレは
指輪の名前のセンスに笑った

ソレに気づいた店主は
「魔王の血肉のバラ」を
手に取る

「この指輪は魔王アベル・ロゼッタが
愛しき妃に捧げた指輪です」

「はっ…はぁ」

熱心に説明してくれるのは
ありがたいけど
正直…妄想語りにしか思えん



見てみると他の指輪も
変な名前のものばかりだ


平たい真珠に穴の空いた
「人魚の涙で出来たパールリング」に
木彫りのリングにはめ込まれた
「精霊の魂(翡翠)の宿るウッドリング」…


こんなの売ってる店なんて
きっとここぐらいのものだw

小馬鹿にして見ているオレが
熱心に選んでいるとでも思ったのか
店主は買わせようと誘導し始めた

「こちらの品はすべて本物の宝石を
使用して作られたジュエリーリングです
それでたったの百円ですよ…」

「へぇ…!だったらお買い得だな」
値段も一個百円で
安上がりだし
真ん中のバラに見立てた
赤い宝石も綺麗だ

オレはサイズに合った指輪を1つ選び
店主に渡した

それは最初に目に止まった
「魔王の血肉のバラ」だ

「これ買います」

すると店主は
不敵な笑みを浮かべた

「お買い上げありがとうございます…
魔王様も喜ばれることでしょう…」

「ああwwはい
そうっすね」


まだ語っちゃってるよ
…まぁ
彼女へのプレゼントができたし良いか♪


オレは指輪を手にし
彼女の居る家へと帰った


「ただいまーっサユキ」


「ああ…おかえり♪ツトム」

出迎えてくれた彼女のサユキに
オレは早速指輪を渡した


「え…何その指輪」

「プレゼントだよw
綺麗だろw?
この指輪を薬指にはめて
オレと結婚してくれw」

オレが素朴な告白すると
彼女はため息を付いた

「はぁ…冗談ならやめて
いらないわよそんな指輪」


「えっ!何で?」

「私達…付き合ってもう3年経つよね
焦ってるんだよ…正直このままでいいのかって」


「何が…?」

察せれない鈍感なオレに
彼女は言い放った

「だから!こんな露店で買ったような指輪じゃなくて
宝石店にあるような本物の指輪で
プロポーズしてほしいの!

私をもらってくれる覚悟があるなら
真剣に勝負してよね…

私…お風呂入ってくる」

彼女はそのまま
風呂場へと行ってしまった

…こんなにキレイな指輪なのに
何がダメなんだろ…

気持ちが足りないって
思われたのか?


そんな…オレだって
サユキのこと愛してんだぞ

「受け取ってくれサユキ…」

オレは一人芝居をしながら
自分の薬指に指輪をはめた

「嬉しいわツトム…

…って
こうなるはずだったのになぁ…」



でもどうしようかな…この指輪

オレは指から
指輪を外そうとした…しかし

「くっ!…ん?あれ…!」

何だ…外れないぞ⁉
力いっぱい引っ張り上げても
どうやら上手くハマってしまっているようで
抜けそうにない

オレがノロノロしていると
サユキが風呂から出てきた

「ツトム…お風呂空いたよ~」


「いっ⁉」

慌てて両手を後ろに隠すオレ

「ん?どうしたの?」

「ううん…オレ…今日は
風呂は入れそうにないわww」


「え?大丈夫?
熱でもあるの?」

接近する彼女を避け
オレは布団を敷くと
中へとくるまった

「大丈夫!おやすみ!」


「…おやすみ」

とにかく事情が何であれ
今はサユキとは指輪の話はしたくない…
明日だ…明日オレのほうが先に出る

仕事は昼勤務
タクシーの運転で普段車内にいるから
その間に考えよう

そうして
オレは眠りについた

サユキも眠った頃
時間は既に夜中の12時をまわっていた

すると布団をめくるような物音が
隣から聞こえ
ふと、サユキは目を覚ます

「ん…ツトム?」

見上げたそこには
立ち上がるオレの姿が見えた

しかし目をつむったまま
オレは立つ姿勢を保っている


「ツトム?(もしかして寝てる?)」



そっと様子を見つめるサユキを横目に
オレは片手を前へと付き出した

その瞬間
片手の薬指にはめられていた指輪の
宝石部分が赤く光を放った


同時に壁だった目の前に
門が現れ
オレを誘うように開かれた

門の中からは光が溢れ出す

「きゃあっ!何⁉」

レム睡眠のまま
オレは一歩一歩と門の中へと
引き込まれる

それをサユキは追いかけた

「待って!ツトム!」

そして二人は門の中へと消え
門も部屋の中から
跡形もなく消えた…


それから
どれくらい経っただろうか

「ん…?」

何か体がふわふわする…

意識が戻り
目を覚ますとオレは
サユキとともに
西洋の城内らしき建物の中の
大広間へと飛ばされていた


「ここは一体…」

先に目を覚まし
体を起こすと
目の前に誰かが立っていた

誰…だ?

するとその誰かは
オレに手を差し伸べる

「立てるか…?」

「ああ…どっどうも…」

オレも
親切な男の手に頼り
立ち上がった


するとそこには
端正な顔の黒髪イケメンが
微笑んでこっちを見ていた

うわぁ…すっげぇイケメン
サユキが好きそうなタイプの顔だな


そんなイケメンに
オレは開口一番訪ねた

「あの…ここって何処ですか?」


「ここは我が魔王城だ」


へぇ…魔王城か…

ん?

「まっ魔王城?」


まっまさかな…

恐る恐る
オレは大広間の窓の一つから
外を覗く…

そこには
広大な草原が広がり
遠くには街らしき建物の集合体が見え

魔王城の下には
底なしの絶壁の崖が見えた…

「嘘だろ…」

もしかしてこれって
異世界転移ってやつか…?

衝撃が強すぎて
叫ぶ気も起きない

一人窓に張り付いて
青ざめていると

サユキが目を覚ました

見下ろしている魔王に
サユキは
すぐに気づき
黄色い声をあげる


「きゃああ♡
超絶イケメーン!

これってもしや
異世界転移ってやつ~⁉///」


オレよりも飲み込み早えな…アイツ

ため息をつくと
魔王がオレに近づいてきた


何だ…
もしかして
魔王のしもべでもやれって
言われるのか…?

そんなの無理だって…w

しかし魔王は
背後まで来たかと思うと
突然オレを抱きしめた


「会いたかった…わが妃シルビアよ」


「へ?」

オレとサユキは
二人同時に凍りつく


怒ったサユキは
魔王からオレを引き離そうとする

「はぁ?なんでツトムが
妃なわけ?
…妃も何も
ツトムは私の彼氏で
男なんだけど!!」


「…訳のわからん女だな

シルビアの何処が
男だと言うんだ?」

そう言うとサユキの目の前で
魔王はオレのズボンとパンツを
ずりおろした

「ひいい⁉///」

バカっ!やめろ
人を露出魔にする気か⁉///

これじゃチンチンが出て…


しかし
股の間にはオチンチンは生えておらず
代わりに小さな割れ目があった


「えっ…ツトム

それって…」


彼女もオレも
チンチンじゃなくなった
ソレに目を丸くする

何処からどう見ても
ソレは完全に
女性器だった…


「フッ…彼女は体格だって
小柄で華奢だ」


そう言うと魔王は
オレの腰を力強く掴む

「ひゃあ…♡」

思わず声が漏れた
しかしその声は
家に居たときよりも
甲高くなっていた

何だ今の…ホントに
オレの声なのか…?

「…くびれもあるシルビアの
一体何が男なんだ?」

「でっでも…ツトムは」

サユキが
戸惑い始めると
魔王は追い打ちを掛ける発言をした


「この指輪こそ
彼女がシルビアである証だ…
これは私との婚約指輪だからな」

手に取ったオレの薬指には
露店で買った
指輪がはめられている

オレは店主の説明を思い出した

まさか…本当にこの指輪は
魔王が妃に送った指輪だったのかよ…!

これのせいで
オレの体は女体化するし
オレとサユキは異世界転移なんか
しちまったのか…

すると
いつの間にか
大広間に魔王の手下のような
者たちが現れ
サユキを取り囲んだ

「連れてけ…」

魔王の指示に
手下たちはサユキを担ぎ上げる

「きゃあっ⁉
いやっ!下ろしてよ!やめて!
たっ助けてツトム!」


「おいっやめろ!

おっお前!
サユキをどこに連れてくんだ!」

「しばらく牢屋にでも
住んでもらう…

心配するな
お前を諦めたら開放するつもりだ」


「ふっふざけんな!

なぁお願いだ…!
オレは人違いなんだよ!
シルビアなんかじゃない!
だからサユキを現実世界に帰してくれ!」

必死に訴えるオレを
それでも魔王は軽く扱った

「お前の夢話なら
また今度聞かせてもらう
それよりも
疲れただろ?
汗の匂いが染み付いているぞ」

首筋に魔王の息がかかる


「やっ⁉…ちょっちょっと…///」

くすぐったさのせいか
魔王の顔が直ぐ側に見えると
オレの頬は赤く染まってしまった

なんでオレ…顔熱くしてんだ?
変だぞこんなの…!

そのままオレは
魔王に部屋へと帰された
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