10 / 15
霊体09:『錬金術の偽ログと、空虚な口座(キャッシュ)』
しおりを挟む 古民家の四隅には、もはや実体を持たない「ノイズの柱」が立ち昇っている。葬の身体は半透明になり、時折画面が乱れるようにその存在が明滅していた。
「葬! 目を離さないで! 貴方のOSが完全に上書きされたら、僕が占う相手もいなくなっちゃうじゃない!」
栄花 千怨(えいか ちおん)は、なりふり構わず葬の体を支えている。その瞳は、獲物を狙う「男」の鋭さと、友を失うことを恐れる「オネエ」の哀切が入り混じっていた。
今回の客は、ネットビジネスで一攫千金を狙う進(34歳)。
彼はAIを使って「絶対に稼げる副業スクリプト」を生成し、嘘の投資実績をSNSにバラ撒いてカネを集めていた。だが、ある時から、自分の銀行口座の数字が「増え続けているのに、一円も引き出せない」という怪奇現象に見舞われた。
「先生! 数字は増えてるんです! 億を超えたんです! なのに、ATMに入れるとカードが焼けて、家の中には札束の形をした『黒い灰』が溜まっていくんだ……!」
進の背後には、彼に騙された無数の「損をした人間」の怨嗟が、0と1の数字が刻まれた巨大なムカデとなって這い回っていた。
「……。お前が手に入れたのは資産じゃない。他人の欲望と絶望をロンダリングして積み上げた『呪いのデータパケット』だ」
実兼 葬(じつかね そう)の声は、もはやスピーカー越しのようなノイズを伴っていた。彼は血の代わりに、黒い文字列を口から零しながらも、指先を十円玉に掛ける。
「占いで『金運が上がる』と未来を予約したか、千怨。……こいつは金という名のシステムに、自分の魂を『質入れ』したんだ。……引き出し(アウトプット)不能な虚像に、命をログインさせてな」
葬が十円玉を、進のスマホに表示された「億単位の偽残高」に向けて弾く。
その瞬間、家全体がシステムエラーを起こしたかのように激しく揺れ、進の背後のムカデが数字の悲鳴を上げながら、進の体内に潜り込もうとした。
「未完了の強欲を強制清算(リセット)。――数字の鎖で、自分のOSを縛り付けるな……!」
葬の絶叫と共に、放たれた十円玉が青白い回路の網を展開し、進の「偽りの富」をすべて消去した。
進の口座は0(ゼロ)に戻り、彼が積み上げた灰の山は、一瞬で電子の塵となって消え去った。
廃人のようになった進を、千怨は氷のような眼差しで一瞥する。
「やだぁ。0円になっちゃったわね。……でも、命だけはデリートされなくて済んだんだから、高い勉強代だと思って諦めなさいな」
千怨が冷たく言い放ったその時。
葬のメインモニターに、巨大な『 10 』の数字が浮かび上がった。
それと同時に、葬の全身から光が消え、彼に届いていた「自分名義のお祈りメール」が、勝手に開封(オープン)された。
「……。千怨。……ログイン、完了だ」
葬の瞳が完全に白く染まり、彼はそのまま事切れたように動かなくなった。
【霊体09 completed】
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
