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霊体10×02葬:『再起動(リブート)の拍動と、管理者(マスター)の証明』
しおりを挟む千怨が抱きしめた幼い葬の身体が、データの粒となって崩れ、光の渦へと吸い込まれていく。
「……あ、お兄ちゃん……。腕、血が出て……ごめん……なさい……」
消え入りそうな少年の声。千怨はその温もりを最後まで離さず、剥き出しの「男」の顔で笑ってみせた。
「謝るな。……さっさと大人になって、俺を見つけろ。……未来で待ってるぜ」
視界が真っ白に塗りつぶされる。
――。
――。
現代。
古民家の作業部屋。
すべてのモニターが「NO SIGNAL」から、凄まじい速度で文字列を流し始めた。
「……。アッ、ガッ……!」
横たわっていた実兼 葬(じつかね そう)の身体が、落雷に打たれたように大きく跳ねた。
彼の瞳がカッと見開かれる。だが、その瞳孔に映っているのは「0」と「1」のノイズではない。千怨の流した血と同じ、鮮やかな「赤」だった。
「……。おかえり、葬。……ログインパスワードは、ちゃんと覚えてきたかしら?」
床に座り込み、肩で息をする栄花 千怨(えいか ちおん)が、ボロボロになったスカーフを整えながら、いつもの艶やかな笑み――ではなく、不敵な、圧倒的な勝者の笑みを浮かべていた。
葬はゆっくりと起き上がり、自分の手を見つめる。
その掌には、白く色が抜けていたはずの十円玉が、再び鈍い銅色を取り戻して握られていた。
「……。千怨。……お前、俺のシステムに、何(ナニ)を流し込んだ」
葬の声は、以前のような無機質なノイズを伴わない、低く、力強い「人間の男」の声に戻っていた。
「やだぁ、人聞きの悪いこと言わないで。……貴方があまりに空っぽ(00)だったから、僕の『執着』でストレージをパンパンにしてあげただけよ」
千怨は立ち上がり、葬の顎をくい、と指先で持ち上げる。
二人の距離が、かつてないほど近づく。
「生霊どものお祈りメール(ゴミ)は、全部俺の血でデリートしてやった。……今の貴方のOSを動かしているのは、世界でたった一人……僕という名の、最強のバグだけよ。……分かるわよね?」
葬は千怨の「スーパーメンズ」な瞳を真っ向から受け止め、ふっと、初めて人間らしい自嘲気味な笑みをこぼした。
「……。占いで『運命の出会いがある』と言われたとき、これ(千怨)のことかと思ったよ。……最悪の管理者(マスター)だ」
葬が十円玉を、高く弾く。
硬貨は天井で鋭い音を立てて跳ね返り、再び彼の指先に吸い込まれた。
「システム再構築(リビルド)完了だ。……おい、千怨。……次のバグ(客)は誰だ」
【02:Reboot Successful... Version 2.0 Installed】
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