22 / 46
第21話 謎の助っ人
しおりを挟む
日没の太陽が砂漠を真っ赤に染め始めた。視察口から見える巨大な戦車も深紅に染まっている。まるで血を浴びたかのように。何か冷たくておぞましいものが、つうっとその指先で背中をなぞっていったような感じがし、デレクは思わず体をすくめる。目の前の血濡れの怪物は、怯んだ彼の心を見透かしたかのように、少しずつ少しずつ近づいてきていた。そうして告げられた気がした。こんなに簡単に騙されるなんて、お前は間抜けだと。
そう、騙されたのだ。デレクには、バードというあの男が彼らを裏切った――いや、はじめからビンセントと内通していたとしか思えなかった。それ以外に、ビンセントにこちらの動きを読まれた理由が思いつかなかったし、何よりも作戦決行からすぐにバードたちと連絡が取れなくなったのが腑に落ちない。ジョンがバードから渡された無線機は、戦車同士で連絡を取り合うためにデレクが預かっていたのだ。それなのに、いくら通信ボタンを押しても繋がらない。あの時、ビンセントが言っていたのは、こういうことだったのだ。本当に怖いのは、一見すると優しく、そして信頼できそうな奴だ。
ぐるぐる考えていると、重々しい響きと共に戦車全体が震えた。はっとして敵戦車へ意識を戻す。こちらへ向けた戦車砲の暗い穴から、砲煙が空へ伸びていた。しまった。余計なことを考えてる場合じゃなかった。彼は下へ向けて叫んだ。
「大丈夫か⁉」
「うん! でも戦車が動かなくなっちゃったんだ……! 前にも後ろにも、全然」
動かない……。エンジンは無事のようだし、キャタピラか車輪かもしれない。デレクはもう一度、相手戦車を見る。やはり、砲をこちらへ向けて迫ってくる。主砲から砲弾を放ったのは、これで三度目だ。三つしか主砲がないのだから、これからしばらくは砲弾は撃てないはずだ。主砲両サイドの機銃で視察口やハッチから顔を出したところを狙っているだろう。様子を見てくるなら、今だ。
「オレは車輪の確認をしてくる。サミー! オレの代わりに向こうの戦車の様子を窺え」
一瞬の間を置いて、「ぼくでいいの?」
自信のなさそうな声が返ってきた。
「別に何もしなくていい。危険を仲間に知らせるだけだ。みんなが身を守れるようにしろ」
「分かった……」
デレクは急いで最上部視察口から下りた。入れ違いで梯子を上っていくサミー。トントン、と軽く背を叩いてやった。
仲間の一人を引き連れて、デレクは最下階まで走っていった。辿り着くと、そこの点検口を開けて戦車の下に顔を出す。特に異常は見当たらなかった。
「とりあえず、工具箱を持ってきてくれ。オレは下りてよく見てみる」
返事も待たず、彼は点検口へ滑り込んだ。
キャタピラにへばりついた砂を手で払い、問題の個所を探す。地面と車体の狭い隙間を移動しながら、左右両方へ首を振り帯の上や内側の車輪へ視線を這わせる。鼓動が彼を追い立てるように、ドクドクドクドクと強く速く打った。体が熱くなってくる。くそ、どこだ……。
しばらくそうやって探していると――あった。車輪と軸を繋ぎ止めていたピンが折れていたのだ。良かった、これなら直せる。
「工具箱ん中に、ピンの代わりになるようなものはないか? 何でもいいから、硬くて長細いやつ」
「待って……」
その声のちょっと後に、何かが点検口から放り込まれた。
「今、レンチ投げた。それで平気かな?」
放ることないだろ。心の中で悪態をつきつつ、デレクはすぐさま這い戻り、砂に埋もれるそれを手に取った。両方の先端が曲がって角度のついた長細いレンチだった。
「これでいい。ちょっと待ってろ」
デレクは急いで先ほど見つけた所へ行った。折れたピンを取り外し、車輪と軸の穴にレンチを差し込む。これでなんとかなるだろう。彼は点検口へ戻っていった。
仲間たちのいる砲塔階へ走る。後ろから荒い息遣いが聞こえてきた。巨大戦車の最下階から最上階へ駆け上っているのだ。デレクのペースについてくるのは相当きついだろう。
「お前はゆっくりでいい。先に行くぞ」
デレクは後ろへ言うと、さらにスピードを上げた。
ちょうど砲塔階へ続く階段を上っている時だった。戦車全体が地面へ叩きつけられたような、ものすごい衝撃があった。体が宙に浮かび、何が起こったか理解する間もなく、デレクは下へ転げ落ちてしまう。慌てて体を起こした時も、底からつき上げるような揺れが続いていた。
「何があった⁉」
とっさに大声を張り上げたけれど、言い切る前に分かっていた。また砲弾を撃ち込まれたのだ。しかも、おそらく装甲にダメージを受けた。
「また撃たれた。まだ撃ち抜かれてはいないけど、そろそろやばいかも……」
予想通りの答えが返ってきた。デレクは再び階段を上っていく。激しい揺れに、左右の壁にぶつかって、うっかり足を踏み外しそうになりながら、何とか砲塔階まで辿り着いた。
「サミー! 代われ!」
ほとんど叫んで言い、砲塔へ入る。梯子へ目を向けると、早くもサミーは下りてきていた。
「デレク、ごめん……。よく見えなくて」
「見えたところで、どうしようもない。気にするな」
デレクは一直線に梯子へ向かい、上っていった。
視察口から敵戦車を見る。視界が狭い上に砲煙が立ち込めていて、ほとんど何も見えない。くそ……。相手が視察口やハッチを狙っているのは分かっていた。けれど、これではどうすることもできない。
デレクは視察口から顔を出した。爆風が顔へ吹きつける。煙が沁みて、反射的に目を細める。その時、
「顔出すんじゃねえ! 引っ込めとけ!」
突然に大声が飛んできた。中からではない。外だ。一体誰が……? そう思い目をこじ開けると、一台のバイクが両戦車の間に走り込んできていた。バイクを狙って何発も銃弾が放たれていたが、彼は網の目をくぐっていくように弾を避け、敵戦車の懐へ向かっていく。デレクは、はっと気がついた。顔を引っ込め、下へ向けて叫ぶ。
「バイクを右上の視察口から狙ってる。分かるか?」
「うん!」
間髪入れずに返事がきた。
「機銃で撃て」
「オッケー」
その声と共に、ダダダダダ、と相手の視察口へ銃弾が放たれた。
バイクへ向けて撃たれた弾がどこから飛んできたかを見ておけば、相手狙撃手の居場所が分かる。砲煙も少しは落ち着いてきた。顔を出さずとも何とか見える。デレクはじっと目を凝らし、バイクへ放たれる銃弾の軌跡を追った。
「右側面のハッチだ。撃て!」
「了解!」
再び、ダダダダダ、という機銃の音。ハッチへ弾が降り注ぐ。よし、いいぞ。
一方、バイクは片手で何度もショットガンを回して装填し、戦車の下部へ撃っている。キャタピラを狙っているのだ。こちらの戦車がそうだったように、キャタピラや車輪が損傷すれば戦車は動けない。そうなれば、デレクたちが逃げたとしても、追ってくることは不可能だ。加えて、狙撃手を機銃で倒していけば、あと警戒すべきなのは戦車砲からの攻撃だけだ。既に装甲の一部はダメージを受けているが、全速力で逃げれば持ちこたえられるはずだ。そう信じる他ない。
「バイクの野郎が戦車を止めてくれる。バックで逃げるぞ。機銃を撃ち続けてバイクを援護しろ!」
デレクの声に従い、彼らの戦車は退却を始めた。
そう、騙されたのだ。デレクには、バードというあの男が彼らを裏切った――いや、はじめからビンセントと内通していたとしか思えなかった。それ以外に、ビンセントにこちらの動きを読まれた理由が思いつかなかったし、何よりも作戦決行からすぐにバードたちと連絡が取れなくなったのが腑に落ちない。ジョンがバードから渡された無線機は、戦車同士で連絡を取り合うためにデレクが預かっていたのだ。それなのに、いくら通信ボタンを押しても繋がらない。あの時、ビンセントが言っていたのは、こういうことだったのだ。本当に怖いのは、一見すると優しく、そして信頼できそうな奴だ。
ぐるぐる考えていると、重々しい響きと共に戦車全体が震えた。はっとして敵戦車へ意識を戻す。こちらへ向けた戦車砲の暗い穴から、砲煙が空へ伸びていた。しまった。余計なことを考えてる場合じゃなかった。彼は下へ向けて叫んだ。
「大丈夫か⁉」
「うん! でも戦車が動かなくなっちゃったんだ……! 前にも後ろにも、全然」
動かない……。エンジンは無事のようだし、キャタピラか車輪かもしれない。デレクはもう一度、相手戦車を見る。やはり、砲をこちらへ向けて迫ってくる。主砲から砲弾を放ったのは、これで三度目だ。三つしか主砲がないのだから、これからしばらくは砲弾は撃てないはずだ。主砲両サイドの機銃で視察口やハッチから顔を出したところを狙っているだろう。様子を見てくるなら、今だ。
「オレは車輪の確認をしてくる。サミー! オレの代わりに向こうの戦車の様子を窺え」
一瞬の間を置いて、「ぼくでいいの?」
自信のなさそうな声が返ってきた。
「別に何もしなくていい。危険を仲間に知らせるだけだ。みんなが身を守れるようにしろ」
「分かった……」
デレクは急いで最上部視察口から下りた。入れ違いで梯子を上っていくサミー。トントン、と軽く背を叩いてやった。
仲間の一人を引き連れて、デレクは最下階まで走っていった。辿り着くと、そこの点検口を開けて戦車の下に顔を出す。特に異常は見当たらなかった。
「とりあえず、工具箱を持ってきてくれ。オレは下りてよく見てみる」
返事も待たず、彼は点検口へ滑り込んだ。
キャタピラにへばりついた砂を手で払い、問題の個所を探す。地面と車体の狭い隙間を移動しながら、左右両方へ首を振り帯の上や内側の車輪へ視線を這わせる。鼓動が彼を追い立てるように、ドクドクドクドクと強く速く打った。体が熱くなってくる。くそ、どこだ……。
しばらくそうやって探していると――あった。車輪と軸を繋ぎ止めていたピンが折れていたのだ。良かった、これなら直せる。
「工具箱ん中に、ピンの代わりになるようなものはないか? 何でもいいから、硬くて長細いやつ」
「待って……」
その声のちょっと後に、何かが点検口から放り込まれた。
「今、レンチ投げた。それで平気かな?」
放ることないだろ。心の中で悪態をつきつつ、デレクはすぐさま這い戻り、砂に埋もれるそれを手に取った。両方の先端が曲がって角度のついた長細いレンチだった。
「これでいい。ちょっと待ってろ」
デレクは急いで先ほど見つけた所へ行った。折れたピンを取り外し、車輪と軸の穴にレンチを差し込む。これでなんとかなるだろう。彼は点検口へ戻っていった。
仲間たちのいる砲塔階へ走る。後ろから荒い息遣いが聞こえてきた。巨大戦車の最下階から最上階へ駆け上っているのだ。デレクのペースについてくるのは相当きついだろう。
「お前はゆっくりでいい。先に行くぞ」
デレクは後ろへ言うと、さらにスピードを上げた。
ちょうど砲塔階へ続く階段を上っている時だった。戦車全体が地面へ叩きつけられたような、ものすごい衝撃があった。体が宙に浮かび、何が起こったか理解する間もなく、デレクは下へ転げ落ちてしまう。慌てて体を起こした時も、底からつき上げるような揺れが続いていた。
「何があった⁉」
とっさに大声を張り上げたけれど、言い切る前に分かっていた。また砲弾を撃ち込まれたのだ。しかも、おそらく装甲にダメージを受けた。
「また撃たれた。まだ撃ち抜かれてはいないけど、そろそろやばいかも……」
予想通りの答えが返ってきた。デレクは再び階段を上っていく。激しい揺れに、左右の壁にぶつかって、うっかり足を踏み外しそうになりながら、何とか砲塔階まで辿り着いた。
「サミー! 代われ!」
ほとんど叫んで言い、砲塔へ入る。梯子へ目を向けると、早くもサミーは下りてきていた。
「デレク、ごめん……。よく見えなくて」
「見えたところで、どうしようもない。気にするな」
デレクは一直線に梯子へ向かい、上っていった。
視察口から敵戦車を見る。視界が狭い上に砲煙が立ち込めていて、ほとんど何も見えない。くそ……。相手が視察口やハッチを狙っているのは分かっていた。けれど、これではどうすることもできない。
デレクは視察口から顔を出した。爆風が顔へ吹きつける。煙が沁みて、反射的に目を細める。その時、
「顔出すんじゃねえ! 引っ込めとけ!」
突然に大声が飛んできた。中からではない。外だ。一体誰が……? そう思い目をこじ開けると、一台のバイクが両戦車の間に走り込んできていた。バイクを狙って何発も銃弾が放たれていたが、彼は網の目をくぐっていくように弾を避け、敵戦車の懐へ向かっていく。デレクは、はっと気がついた。顔を引っ込め、下へ向けて叫ぶ。
「バイクを右上の視察口から狙ってる。分かるか?」
「うん!」
間髪入れずに返事がきた。
「機銃で撃て」
「オッケー」
その声と共に、ダダダダダ、と相手の視察口へ銃弾が放たれた。
バイクへ向けて撃たれた弾がどこから飛んできたかを見ておけば、相手狙撃手の居場所が分かる。砲煙も少しは落ち着いてきた。顔を出さずとも何とか見える。デレクはじっと目を凝らし、バイクへ放たれる銃弾の軌跡を追った。
「右側面のハッチだ。撃て!」
「了解!」
再び、ダダダダダ、という機銃の音。ハッチへ弾が降り注ぐ。よし、いいぞ。
一方、バイクは片手で何度もショットガンを回して装填し、戦車の下部へ撃っている。キャタピラを狙っているのだ。こちらの戦車がそうだったように、キャタピラや車輪が損傷すれば戦車は動けない。そうなれば、デレクたちが逃げたとしても、追ってくることは不可能だ。加えて、狙撃手を機銃で倒していけば、あと警戒すべきなのは戦車砲からの攻撃だけだ。既に装甲の一部はダメージを受けているが、全速力で逃げれば持ちこたえられるはずだ。そう信じる他ない。
「バイクの野郎が戦車を止めてくれる。バックで逃げるぞ。機銃を撃ち続けてバイクを援護しろ!」
デレクの声に従い、彼らの戦車は退却を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
古書館に眠る手記
猫戸針子
歴史・時代
革命前夜、帝室図書館の地下で、一人の官僚は“禁書”を守ろうとしていた。
十九世紀オーストリア、静寂を破ったのは一冊の古手記。
そこに記されたのは、遠い宮廷と一人の王女の物語。
寓話のように綴られたその記録は、やがて現実の思想へとつながってゆく。
“読む者の想像が物語を完成させる”記録文学。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる