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第一章
第20話 あの日と比べて
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「結局、お前達は間に合わなかったなぁ」
あの会議から約二ヶ月、練兵所にて、兵が出立する準備をしている指揮官たちを軍馬の子供と一緒に眺めながら呟く。
獣人用に作ってみた籠手。
あれを蹄として作れば馬が劇的に早く力強くなるのではないか?と考え作ってみた。
食料庫に食料があるとはいえ、補給能力を底上げしておいて困ることはない
そんな訳で、最初に成長した馬につけてみたのだが、まぁ、酷い事酷い事。
上手く自身の力をコントロールできず、足は折れるし吹き飛ぶし、壁に突っ込むしで、大騒ぎだった。
そりゃ、そうか。
理性ある人間ですらまともに扱うのに2年、その状態で戦闘できる様になるのに更に2年かかる。
とてもじゃないが、馬がコントロールできる代物ではない。
そんな訳だが、生まれたての奴らに付ければ、異常な脚力がそいつらにとって正常な状態になるから、上手くいくのではないか、と考え実践したのがこの子たちだ。
動物愛護団体がこの世になくてよかった。間違いなく目をつけられる。
仔馬に人体を破壊するレベルの代物とか、愛護団体じゃなくてもドン引き物だろうからな。
この子たちが生きている時点でお察しの様に、実験自体は上手く行ってる。
まぁ、今回の戦いで表に出すのは時期尚早なのだが。
この調子で行けば1、2年後、自分自身の道徳心と引き換えに、凄まじい駿馬とヤバイ馬力のあ軍馬が手に入るだろう。
生産コストが高すぎるので数を揃えるのが厳しいから、輸送部隊には向かないだろうが、騎兵隊くらいは作れるのではなかろうか。
機械科歩兵の影響で消えた兵科が同じ力を持った馬によって再び蘇る。
なかなか熱いシュチュエーションではないだろうか。
成長に合わせて蹄を作り、数百匹の馬を常に養う必要がある…。
加えて、真紅の石で殴り合う音やらエネルギーやらに耐える訓練も必要だな。
コスト面を考えると、アランの胃を圧迫するかもしれないな。
ガラスの売り上げを上げないと叶わない夢である。
「その子たち、本当に量産するの?僕としては避けたいんだけど」
噂をすればなんとやら。
自分たちの兵の準備が大方整って、暇になった守銭奴と吸血女の登場だ。
「兵は拙速を尊ぶ。最良の兵とはよく戦う兵士よりも、むしろ歩く兵である」
「…なんだよ、急に」
「元の世界の素晴らしい将軍たちの言葉だ。戦争において最も重要なのは兵站、次に機動なんだよ。機械科歩兵を見りゃわかるだろ。その倍の速さで動くこいつらは素晴らしいぞ」
「確かにそうだけど…。じゃあ、予算を組むために、新しいガラス製品も考えてね?」
「もちろんだ」
時速は余裕で100キロを超える彼らは、突撃しても良し、遊撃しても良しの化け物だ。
主力は歩兵だが、戦の勝敗を分けるのは、機械科歩兵の使い方であると言っても過言ではないくらいに強力な兵科だ。
それの倍の速さと重量を持つなら『素晴らしい』以外に言葉が見当たらない。
戦争は死ぬほど嫌いだが、どうしてもやらなくてはならないのなら勝つ確率を上げなくてはな。
それらの為なら新しい製品だろうと、喜んで知恵を絞ろうじゃないか。
そんな未来に少し希望と決意を抱いていると、様子がおかしい吸血女が話しかけてきた。
「レン…。ちょっとお願いがあるのよ」
「なんだ。吸血女g———」
「それよ!今回の作戦は私が考えたものよね!?」
「半分な。ジリ貧になるのを避けるために、後方の食料庫を奇襲するってことだけだ。エルフでも機械科歩兵装備があってギリギリ、人間ならまず侵入不可能。そんな後方へ浸透するための具体的な道は俺が考えた」
「それでも、その準備やら物資の手配やらは私がしたわよね?」
吸血女がしつこく問い詰める。
「はぁ…。わかったわかった。作戦が上手くいったら、常に名前で呼べと?」
「そうよ。他の褒美は私はいらないから。それから、名前で呼ばない理由を教えなさいよ」
それは…。
「嫌———」
「レン、この作戦が上手く行けば、君と同じ様にエリザベートは国王陛下から爵位をもらえるかもしれないレベルの大手柄だよ?」
拒否の言葉を発する前に守銭奴が割って入る。
「それを不意にしてまで知りたいって言うのに、『嫌だ』なんて野暮な事言わないよね?」
「…言うつもりだと言ったら?」
アランの目が急に座った。
待て、こんな表情見た事無いぞ。
「…洗いざらい全てここでぶち撒けるよ」
「裏切り者ぉ!」
こいつは、以前、似た様なシュチュエーションが有った時に、クドクドと説教されるのが嫌で俺の事情を全て話した。
脅しでも何でもなく、本気でぶち撒けることがその表情から伺える。
その恐ろしい表情のまま、アランは言葉を繋げた。
「ごめんね。でも裏切った訳ではないんだよ。この件に関しては最初から、全面的にエリザベートの味方なんだ」
「この…!…はぁ、わかった。それで良い。ことが上手く運べば、な。ったく、なんでその程度の事にこだわるんだよ」
「その言葉、そっくりそのまま返すわよ。なんで名前で呼ぶ程度のことをしないのかしら」
「…」
切れ味は元に戻ったらしい。
名前を言わない理由を言えば絶対にこの女は怒る。
作戦が上手くいけばエリザベートの怒りを買い、失敗したら、それ即ち死。
最高だ。
前にも後ろにも退路がない。
どうやら、やはり神は死んでいるらしい。
運命も俺の敵だ。
名前を適当に考えた自業自得とも言えなくないが…。
馬鹿話をしていると、商人のメイナードが少し呆れた様子でやって来た。
まぁ、ケモナーからすれば不倶戴天な上にかなりの強敵との戦いの前に何やってんだ、と思うだろう。
「賑やかな会話の途中に申し訳ありません。『我々』の準備もまもなく整います。もう、出発されても構いません」
「わかった。吸血…エリザベート、アランそれぞれの軍を連れて来てくれ」
「「了解」」
それぞれの軍に向かう二人の背を見ながらメイナードが口を開く。
「お二人のこと、随分と信頼されている様ですね」
「俺が直接指揮するのには向いていないだけだ。それならしっかりと指揮できる二人に四万ずつ配分した方がいいだろ」
別に嫌味でも皮肉でもなく、本心を言ったつもりだったのだが、またしても呆れる様な表情を浮かべる。
「指揮官として、と言う意味ではありませんよ。人として、と言う意味です」
「…確かにそうだが。なぜ急にそんな事を言う?さっきの会話、少しは聞いていただろ。別に気の効いた言葉を言ってる訳でもなければ、労っている訳でもなかっただろ」
「いえ、先ほどの会話をしている時に随分と楽しそうでしたから」
「…楽しい会話では無かったぞ」
「そうですか?私には若者がからかいあっている様に見受けられましたが…」
釈然としない様子のメイナードを睨め付ける。
何が楽しいものか。
俺が一方的に死刑宣告されただけじゃないか。
確かに遠巻きに見たら大学生の馬鹿話に近いかもしれないが、俺にとっては死活問題だからな?
このケモナーは色々と考え違いをしてるようだ。
軽い溜息を吐いた後、この変わった性癖を持つ商人に告げる。
「そろそろ、お前も行け。俺たちは進軍する」
「承知しました。ご武運を。また、御三方と生きてお会いできます様に」
そう一言だけ述べると、メイナードは練兵所を去っていった。
その最後の何気ない言葉が、喉に引っかかる小骨の様に心に残る。
嫌に刺さって抜けないのだ。
「『生きてお会いできます様に』、か」
…そうだ。そうだった。
ここから先は戦場だ。
三人揃って帰還する保証が何処にある?
そりゃ、俺は貴族で国家の支柱の義息子だ。
相当まずい事をしなければ生き残れるだろう。
周りは必死になって逃すし、敗戦の責任も義父上の手前、命を持って償うことはないだろう。
だが吸血女とアランはどうだ?レイやダニエールは?
…生きて帰る保証は何もない。
それが戦争だ。
にも関わらず、命のやりとりを俺の代わりにするであろうエリザベートの願いを足蹴にした俺は相当なクズなのではないか?
そんな事を平気で言えるほどゴミにいつの間に成り下がった?
…違う。
そもそも、あの時はそんな重たい話だとは考えていなかった。
漠然と二人が生きて帰る事を当然の様に考えているんだ。
消えることなど全く考えて居なかった。
完全に失念している。
だから、平時と同じ対応をしたんだ。
いつものノリで(鬱陶しいな吸血女)とあしらったんだ。
なんて身勝手だ。
兵が死ぬことはわかっているのに自分の周りの人間は無事だろう、と思っているのはなぜだ。
一度圧勝したからか?
前回上手くいったから今回もいけると考えているのか?
今日ある事が明日あるとは限らない。
それは、あの異世界転生装置にやられた日に身をもって理解したはずだ。
天を見上げて異世界の空を見る。
あの日の事を思い出す。
音楽を爆音で聞いて歩くなんぞ危険で無いわけが無い。
今、振り返ればそうだ。
昨日が大丈夫だったから今日も大丈夫。
前回もいけたから今回もいける。
その安易な考えで失ったものは何だ?
平穏なる日常。
それが壊れる瞬間にやっと、俺自身がそれを好きだった事に気がついた。
俺の戦争に対する考えも同じじゃないか?
前回の戦争は圧勝だった。
今回も作戦はある。
まぁ、いけるだろう。
そんな軽い思いがあるから、身内は死なないと勝手に思い込んでるだけなのではないか?
そうやって俺は大切なものを失ったのではないか?
今回も同じであるとどうして断定できようか。
普段、雑な扱いをしているとはいえ、エリザベートやアランが消えた時、自分が正気でいられるだろうか?
改めて考えてみる必要も無い。
生き物がミンチになることへのトラウマばかりを気にしていて、もっと大切なことを見落としている。
自嘲気味のため息が漏れる。
「結局、あの時から何も俺は成長していない訳だ」
「あんたは戦争の前に空を見上げてカッコつける癖でもあるのかしら?」
…この女郎。
もう少し大切にしようとした気持ちが一気になくなる様なセリフを吐くんじゃねぇ。
イラつきながら振り会えると八万の軍が目の前に整列していた。
こいつらの歩く音が聞こえないとか、相当ナーバスになっていたんだな。
嫌な気分を払う様に短く息を吐く。
「準備が出来たってことでいいんだな?…仕方がない、行きますか」
…そうだ、グチャグチャ考えて仕方ない。
勝てば良いだけだ、勝てば。
それで全ては解決だ。
あの会議から約二ヶ月、練兵所にて、兵が出立する準備をしている指揮官たちを軍馬の子供と一緒に眺めながら呟く。
獣人用に作ってみた籠手。
あれを蹄として作れば馬が劇的に早く力強くなるのではないか?と考え作ってみた。
食料庫に食料があるとはいえ、補給能力を底上げしておいて困ることはない
そんな訳で、最初に成長した馬につけてみたのだが、まぁ、酷い事酷い事。
上手く自身の力をコントロールできず、足は折れるし吹き飛ぶし、壁に突っ込むしで、大騒ぎだった。
そりゃ、そうか。
理性ある人間ですらまともに扱うのに2年、その状態で戦闘できる様になるのに更に2年かかる。
とてもじゃないが、馬がコントロールできる代物ではない。
そんな訳だが、生まれたての奴らに付ければ、異常な脚力がそいつらにとって正常な状態になるから、上手くいくのではないか、と考え実践したのがこの子たちだ。
動物愛護団体がこの世になくてよかった。間違いなく目をつけられる。
仔馬に人体を破壊するレベルの代物とか、愛護団体じゃなくてもドン引き物だろうからな。
この子たちが生きている時点でお察しの様に、実験自体は上手く行ってる。
まぁ、今回の戦いで表に出すのは時期尚早なのだが。
この調子で行けば1、2年後、自分自身の道徳心と引き換えに、凄まじい駿馬とヤバイ馬力のあ軍馬が手に入るだろう。
生産コストが高すぎるので数を揃えるのが厳しいから、輸送部隊には向かないだろうが、騎兵隊くらいは作れるのではなかろうか。
機械科歩兵の影響で消えた兵科が同じ力を持った馬によって再び蘇る。
なかなか熱いシュチュエーションではないだろうか。
成長に合わせて蹄を作り、数百匹の馬を常に養う必要がある…。
加えて、真紅の石で殴り合う音やらエネルギーやらに耐える訓練も必要だな。
コスト面を考えると、アランの胃を圧迫するかもしれないな。
ガラスの売り上げを上げないと叶わない夢である。
「その子たち、本当に量産するの?僕としては避けたいんだけど」
噂をすればなんとやら。
自分たちの兵の準備が大方整って、暇になった守銭奴と吸血女の登場だ。
「兵は拙速を尊ぶ。最良の兵とはよく戦う兵士よりも、むしろ歩く兵である」
「…なんだよ、急に」
「元の世界の素晴らしい将軍たちの言葉だ。戦争において最も重要なのは兵站、次に機動なんだよ。機械科歩兵を見りゃわかるだろ。その倍の速さで動くこいつらは素晴らしいぞ」
「確かにそうだけど…。じゃあ、予算を組むために、新しいガラス製品も考えてね?」
「もちろんだ」
時速は余裕で100キロを超える彼らは、突撃しても良し、遊撃しても良しの化け物だ。
主力は歩兵だが、戦の勝敗を分けるのは、機械科歩兵の使い方であると言っても過言ではないくらいに強力な兵科だ。
それの倍の速さと重量を持つなら『素晴らしい』以外に言葉が見当たらない。
戦争は死ぬほど嫌いだが、どうしてもやらなくてはならないのなら勝つ確率を上げなくてはな。
それらの為なら新しい製品だろうと、喜んで知恵を絞ろうじゃないか。
そんな未来に少し希望と決意を抱いていると、様子がおかしい吸血女が話しかけてきた。
「レン…。ちょっとお願いがあるのよ」
「なんだ。吸血女g———」
「それよ!今回の作戦は私が考えたものよね!?」
「半分な。ジリ貧になるのを避けるために、後方の食料庫を奇襲するってことだけだ。エルフでも機械科歩兵装備があってギリギリ、人間ならまず侵入不可能。そんな後方へ浸透するための具体的な道は俺が考えた」
「それでも、その準備やら物資の手配やらは私がしたわよね?」
吸血女がしつこく問い詰める。
「はぁ…。わかったわかった。作戦が上手くいったら、常に名前で呼べと?」
「そうよ。他の褒美は私はいらないから。それから、名前で呼ばない理由を教えなさいよ」
それは…。
「嫌———」
「レン、この作戦が上手く行けば、君と同じ様にエリザベートは国王陛下から爵位をもらえるかもしれないレベルの大手柄だよ?」
拒否の言葉を発する前に守銭奴が割って入る。
「それを不意にしてまで知りたいって言うのに、『嫌だ』なんて野暮な事言わないよね?」
「…言うつもりだと言ったら?」
アランの目が急に座った。
待て、こんな表情見た事無いぞ。
「…洗いざらい全てここでぶち撒けるよ」
「裏切り者ぉ!」
こいつは、以前、似た様なシュチュエーションが有った時に、クドクドと説教されるのが嫌で俺の事情を全て話した。
脅しでも何でもなく、本気でぶち撒けることがその表情から伺える。
その恐ろしい表情のまま、アランは言葉を繋げた。
「ごめんね。でも裏切った訳ではないんだよ。この件に関しては最初から、全面的にエリザベートの味方なんだ」
「この…!…はぁ、わかった。それで良い。ことが上手く運べば、な。ったく、なんでその程度の事にこだわるんだよ」
「その言葉、そっくりそのまま返すわよ。なんで名前で呼ぶ程度のことをしないのかしら」
「…」
切れ味は元に戻ったらしい。
名前を言わない理由を言えば絶対にこの女は怒る。
作戦が上手くいけばエリザベートの怒りを買い、失敗したら、それ即ち死。
最高だ。
前にも後ろにも退路がない。
どうやら、やはり神は死んでいるらしい。
運命も俺の敵だ。
名前を適当に考えた自業自得とも言えなくないが…。
馬鹿話をしていると、商人のメイナードが少し呆れた様子でやって来た。
まぁ、ケモナーからすれば不倶戴天な上にかなりの強敵との戦いの前に何やってんだ、と思うだろう。
「賑やかな会話の途中に申し訳ありません。『我々』の準備もまもなく整います。もう、出発されても構いません」
「わかった。吸血…エリザベート、アランそれぞれの軍を連れて来てくれ」
「「了解」」
それぞれの軍に向かう二人の背を見ながらメイナードが口を開く。
「お二人のこと、随分と信頼されている様ですね」
「俺が直接指揮するのには向いていないだけだ。それならしっかりと指揮できる二人に四万ずつ配分した方がいいだろ」
別に嫌味でも皮肉でもなく、本心を言ったつもりだったのだが、またしても呆れる様な表情を浮かべる。
「指揮官として、と言う意味ではありませんよ。人として、と言う意味です」
「…確かにそうだが。なぜ急にそんな事を言う?さっきの会話、少しは聞いていただろ。別に気の効いた言葉を言ってる訳でもなければ、労っている訳でもなかっただろ」
「いえ、先ほどの会話をしている時に随分と楽しそうでしたから」
「…楽しい会話では無かったぞ」
「そうですか?私には若者がからかいあっている様に見受けられましたが…」
釈然としない様子のメイナードを睨め付ける。
何が楽しいものか。
俺が一方的に死刑宣告されただけじゃないか。
確かに遠巻きに見たら大学生の馬鹿話に近いかもしれないが、俺にとっては死活問題だからな?
このケモナーは色々と考え違いをしてるようだ。
軽い溜息を吐いた後、この変わった性癖を持つ商人に告げる。
「そろそろ、お前も行け。俺たちは進軍する」
「承知しました。ご武運を。また、御三方と生きてお会いできます様に」
そう一言だけ述べると、メイナードは練兵所を去っていった。
その最後の何気ない言葉が、喉に引っかかる小骨の様に心に残る。
嫌に刺さって抜けないのだ。
「『生きてお会いできます様に』、か」
…そうだ。そうだった。
ここから先は戦場だ。
三人揃って帰還する保証が何処にある?
そりゃ、俺は貴族で国家の支柱の義息子だ。
相当まずい事をしなければ生き残れるだろう。
周りは必死になって逃すし、敗戦の責任も義父上の手前、命を持って償うことはないだろう。
だが吸血女とアランはどうだ?レイやダニエールは?
…生きて帰る保証は何もない。
それが戦争だ。
にも関わらず、命のやりとりを俺の代わりにするであろうエリザベートの願いを足蹴にした俺は相当なクズなのではないか?
そんな事を平気で言えるほどゴミにいつの間に成り下がった?
…違う。
そもそも、あの時はそんな重たい話だとは考えていなかった。
漠然と二人が生きて帰る事を当然の様に考えているんだ。
消えることなど全く考えて居なかった。
完全に失念している。
だから、平時と同じ対応をしたんだ。
いつものノリで(鬱陶しいな吸血女)とあしらったんだ。
なんて身勝手だ。
兵が死ぬことはわかっているのに自分の周りの人間は無事だろう、と思っているのはなぜだ。
一度圧勝したからか?
前回上手くいったから今回もいけると考えているのか?
今日ある事が明日あるとは限らない。
それは、あの異世界転生装置にやられた日に身をもって理解したはずだ。
天を見上げて異世界の空を見る。
あの日の事を思い出す。
音楽を爆音で聞いて歩くなんぞ危険で無いわけが無い。
今、振り返ればそうだ。
昨日が大丈夫だったから今日も大丈夫。
前回もいけたから今回もいける。
その安易な考えで失ったものは何だ?
平穏なる日常。
それが壊れる瞬間にやっと、俺自身がそれを好きだった事に気がついた。
俺の戦争に対する考えも同じじゃないか?
前回の戦争は圧勝だった。
今回も作戦はある。
まぁ、いけるだろう。
そんな軽い思いがあるから、身内は死なないと勝手に思い込んでるだけなのではないか?
そうやって俺は大切なものを失ったのではないか?
今回も同じであるとどうして断定できようか。
普段、雑な扱いをしているとはいえ、エリザベートやアランが消えた時、自分が正気でいられるだろうか?
改めて考えてみる必要も無い。
生き物がミンチになることへのトラウマばかりを気にしていて、もっと大切なことを見落としている。
自嘲気味のため息が漏れる。
「結局、あの時から何も俺は成長していない訳だ」
「あんたは戦争の前に空を見上げてカッコつける癖でもあるのかしら?」
…この女郎。
もう少し大切にしようとした気持ちが一気になくなる様なセリフを吐くんじゃねぇ。
イラつきながら振り会えると八万の軍が目の前に整列していた。
こいつらの歩く音が聞こえないとか、相当ナーバスになっていたんだな。
嫌な気分を払う様に短く息を吐く。
「準備が出来たってことでいいんだな?…仕方がない、行きますか」
…そうだ、グチャグチャ考えて仕方ない。
勝てば良いだけだ、勝てば。
それで全ては解決だ。
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