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十四話 地産地消
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わーお。
僕の目の前で修羅場が繰り広げられている。
「くっ…!」
山田くんが力で押され、体勢を崩した。
「死…ねっ!」
百八十センチほどの身長もある男が包丁を振りかざす。
山田くんは小柄な体を生かして、とっさにかわす。
でも、二人とも脳内実況中の僕のことは完全に無視らしい。
あ、マイク持ってしゃべってないからか。
疎外感ハンパないし寂しいなあ。
机の上に置いてあった注射器に小瓶の中身をセットし、一度だけ出るか試した。
びゅーっ。
うーん、たぶん大丈夫。
後ろから近づき、男の首に針をぶっ刺す。
「なっ!?」
男は驚いた表情で、声を上げた。
僕はここが正念場と言わんばかりに、全ての液体を男に注入する。
そしてピストンを最後まで押す。
「ああっ!ああっ…あああ!」
男はみるみる力が抜け、へたり込んだ。
山田くんは解放されたみたいだ。
最後に男がでたらめに振り回した包丁は、僕に一ミリも当たらない。
そしてそのまま膝はガクッと折れ、両手を床についた。
「はあ…はあ…はあ…。」
どうやら限界が近いらしい。
早く死ねよ。
注射器の先端部分で男の頭を刺す。
「ああああ!!!」
男は頭を押さえ、絶叫。
あ、痛みがあるのか。
もっとやっちゃおう。
もう一度刺す。
「うわあああ!痛い!!痛い!!」
男は床を這いずり回り、また騒がしい声を部屋に響かせた。
情けない姿を見せて恥ずかしくないのか。
三度目、四度目、五度目。
男が叫ばなくなるまでひたすら刺し続けた。
死ね!死ね!!死ね!!!
「あああああ!!痛いいいい!!!」
部屋中にやかましい男の声が響く。
戦意喪失した山田くんは両手で耳を塞いでいた。
「はあ……。」
やがて、静かな時間が訪れる。
やっと死んだのか。
僕、ドSの才能もあるのかな。
あはは。
「スズキくん…。」
山田くんが僕の名前を呼んだ。
そちらに頭を向ける。
「何?大丈夫?」
「え、あ、ありがとうございました。」
山田くんは僕をまっすぐ見ずに言った。
「べつに。」
僕も目をそらしながら答える。
そして、哀れな死体をもう一度見下ろした。
まさか四人目の訪問者が山田くんの担任だとは思わなかったけど、死んだならもうどうでもいいか。
自殺したがっていたのに、自分の教え子に殺されるって分かった瞬間、逆ギレするなんて本当にみっともないね、大人って。
子供を殴るし、蹴るし、殺そうとするし。
ろくでもない。
ああでも僕も先月、十六歳になったんだから順調に大人になってるんだよなあ。
大変嫌。
「あの、そろそろ運びませんか?」
いつのまにか僕より十センチほど身長の低い山田くんが僕の横に立っていた。
気配のなさはお互いさまなのかもしれない。
「あー、そうだね。」
過去最大級に重い死体を二人でゆっくりと運んでいく。
今回は血が出ないバトルだったから、床掃除しなくて済むなあ。
その代償が運びにくいだけなら全然あり。
殺人部屋に着いた。
頭を持っていた山田くんが片手でドアを開ける。
そして僕たちは奥へ進み、新しく替えたばかりのきれいな新聞紙の上にそれを乗せた。
解体のため、一度リビングに戻って何でも出てくる押し入れから包丁とハンマーを取り出すと、殺人部屋に戻った。
僕はハンマー、山田くんは包丁を装備し、さっそく作業に取りかかる。
「…俺、本当に先生まで殺しちゃってよかったんですかね。」
山田くんが右の目玉につながった神経を切りながら、僕に質問を投げかける。
山田くん、今日はやけに弱気だな。
いつもは死にたがってる人間なんて殺せ!殺せ~!って感じなのに。
違うか。
僕はやっぱり男性器をいじって「はえ~、すっごい大きい」ごっこをしながら口を開く。
「元々そのつもりだったんだし、大丈夫でしょ。」
「そうですね…。」
煮え切らない表情で、今度は左の目玉の神経を切り落とした。
小さな音を立てて、僕の側にころころ転がってくる。
今回の訪問者、山田くんの担任。
そいつが何を抱えて死にたいと思っていたのかは知らないけど、今日の午後五時頃、僕と山田くんが住むこの部屋を訪れた。
そして、殺される相手が山田くんだと分かると、わななきながら胸元のポケットに隠し持っていた包丁で襲ってきた。
幸い僕はリビングにいたので、注射器をばっちり準備して殺してやったわけだけど。
べつに年下に殺されたって、教え子に殺されたっていいじゃないか。
僕は両膝を床につき、そいつの腹部をハンマーで思いっきり殴る。
大量の血が飛び散る。
うえい。
だんだんこの作業で返り血がかかるのにも抵抗がなくなってきた気がする。
今、顔にかかったものを無意識に拭っちゃったから、たぶんアフリカ地域の民族っぽくなったかな。
皮膚は器官を覆うという機能を放棄し、というか僕が放棄させ、腸とか胃がとびだせ!どうぶつの森状態。
それらを手づかみにし、山田くんに渡す。
「さばいてちょ。」
とか言うと、
「ばっちこい。」
と返し、捌いてくれる。
ありがたや~。
「こんなに体が大きいと、魚たちにあげても余りそうだよね。」
「そう、ですね。」
山田くんはするすると切りながら口を開いた。
「…じゃあ俺たちが食べます?太陽からまだ食料届いてないし、煮れば毒とかもなくなると思うんですけど…。」
何だ、全然弱気じゃないじゃん。
前衛的。素敵。
「そうしようか。」
控えめな空腹音が鳴る。
いつも夜ご飯は食べないのに、なぜか久しぶりに食欲が湧いた。
僕の目の前で修羅場が繰り広げられている。
「くっ…!」
山田くんが力で押され、体勢を崩した。
「死…ねっ!」
百八十センチほどの身長もある男が包丁を振りかざす。
山田くんは小柄な体を生かして、とっさにかわす。
でも、二人とも脳内実況中の僕のことは完全に無視らしい。
あ、マイク持ってしゃべってないからか。
疎外感ハンパないし寂しいなあ。
机の上に置いてあった注射器に小瓶の中身をセットし、一度だけ出るか試した。
びゅーっ。
うーん、たぶん大丈夫。
後ろから近づき、男の首に針をぶっ刺す。
「なっ!?」
男は驚いた表情で、声を上げた。
僕はここが正念場と言わんばかりに、全ての液体を男に注入する。
そしてピストンを最後まで押す。
「ああっ!ああっ…あああ!」
男はみるみる力が抜け、へたり込んだ。
山田くんは解放されたみたいだ。
最後に男がでたらめに振り回した包丁は、僕に一ミリも当たらない。
そしてそのまま膝はガクッと折れ、両手を床についた。
「はあ…はあ…はあ…。」
どうやら限界が近いらしい。
早く死ねよ。
注射器の先端部分で男の頭を刺す。
「ああああ!!!」
男は頭を押さえ、絶叫。
あ、痛みがあるのか。
もっとやっちゃおう。
もう一度刺す。
「うわあああ!痛い!!痛い!!」
男は床を這いずり回り、また騒がしい声を部屋に響かせた。
情けない姿を見せて恥ずかしくないのか。
三度目、四度目、五度目。
男が叫ばなくなるまでひたすら刺し続けた。
死ね!死ね!!死ね!!!
「あああああ!!痛いいいい!!!」
部屋中にやかましい男の声が響く。
戦意喪失した山田くんは両手で耳を塞いでいた。
「はあ……。」
やがて、静かな時間が訪れる。
やっと死んだのか。
僕、ドSの才能もあるのかな。
あはは。
「スズキくん…。」
山田くんが僕の名前を呼んだ。
そちらに頭を向ける。
「何?大丈夫?」
「え、あ、ありがとうございました。」
山田くんは僕をまっすぐ見ずに言った。
「べつに。」
僕も目をそらしながら答える。
そして、哀れな死体をもう一度見下ろした。
まさか四人目の訪問者が山田くんの担任だとは思わなかったけど、死んだならもうどうでもいいか。
自殺したがっていたのに、自分の教え子に殺されるって分かった瞬間、逆ギレするなんて本当にみっともないね、大人って。
子供を殴るし、蹴るし、殺そうとするし。
ろくでもない。
ああでも僕も先月、十六歳になったんだから順調に大人になってるんだよなあ。
大変嫌。
「あの、そろそろ運びませんか?」
いつのまにか僕より十センチほど身長の低い山田くんが僕の横に立っていた。
気配のなさはお互いさまなのかもしれない。
「あー、そうだね。」
過去最大級に重い死体を二人でゆっくりと運んでいく。
今回は血が出ないバトルだったから、床掃除しなくて済むなあ。
その代償が運びにくいだけなら全然あり。
殺人部屋に着いた。
頭を持っていた山田くんが片手でドアを開ける。
そして僕たちは奥へ進み、新しく替えたばかりのきれいな新聞紙の上にそれを乗せた。
解体のため、一度リビングに戻って何でも出てくる押し入れから包丁とハンマーを取り出すと、殺人部屋に戻った。
僕はハンマー、山田くんは包丁を装備し、さっそく作業に取りかかる。
「…俺、本当に先生まで殺しちゃってよかったんですかね。」
山田くんが右の目玉につながった神経を切りながら、僕に質問を投げかける。
山田くん、今日はやけに弱気だな。
いつもは死にたがってる人間なんて殺せ!殺せ~!って感じなのに。
違うか。
僕はやっぱり男性器をいじって「はえ~、すっごい大きい」ごっこをしながら口を開く。
「元々そのつもりだったんだし、大丈夫でしょ。」
「そうですね…。」
煮え切らない表情で、今度は左の目玉の神経を切り落とした。
小さな音を立てて、僕の側にころころ転がってくる。
今回の訪問者、山田くんの担任。
そいつが何を抱えて死にたいと思っていたのかは知らないけど、今日の午後五時頃、僕と山田くんが住むこの部屋を訪れた。
そして、殺される相手が山田くんだと分かると、わななきながら胸元のポケットに隠し持っていた包丁で襲ってきた。
幸い僕はリビングにいたので、注射器をばっちり準備して殺してやったわけだけど。
べつに年下に殺されたって、教え子に殺されたっていいじゃないか。
僕は両膝を床につき、そいつの腹部をハンマーで思いっきり殴る。
大量の血が飛び散る。
うえい。
だんだんこの作業で返り血がかかるのにも抵抗がなくなってきた気がする。
今、顔にかかったものを無意識に拭っちゃったから、たぶんアフリカ地域の民族っぽくなったかな。
皮膚は器官を覆うという機能を放棄し、というか僕が放棄させ、腸とか胃がとびだせ!どうぶつの森状態。
それらを手づかみにし、山田くんに渡す。
「さばいてちょ。」
とか言うと、
「ばっちこい。」
と返し、捌いてくれる。
ありがたや~。
「こんなに体が大きいと、魚たちにあげても余りそうだよね。」
「そう、ですね。」
山田くんはするすると切りながら口を開いた。
「…じゃあ俺たちが食べます?太陽からまだ食料届いてないし、煮れば毒とかもなくなると思うんですけど…。」
何だ、全然弱気じゃないじゃん。
前衛的。素敵。
「そうしようか。」
控えめな空腹音が鳴る。
いつも夜ご飯は食べないのに、なぜか久しぶりに食欲が湧いた。
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