【R18】VRMMO 最強を目指す鍛錬記

市村 いっち

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悪役令嬢 リュシエンヌ・デュ・ルロワ

悪役令嬢 パトリシア・デュ・ルロワ(1)

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「パトリシア。
 おまえとの婚約を破棄する!」

 負け戦の後の気の滅入る事後処理をどうにか終わらせ、疲れ切った身体を引きずって婚約者である王子に呼び出された天幕を訪ねたパトリシア・デュ・ルロワは、一方的にそう告げられた。

「は……は……?」

 同じく戦に出ていた諸将のいない、一人で使うには無駄に大きな天幕で唐突に告げられた言葉が理解できず、パトリシアが戸惑った声を漏らすと王子は小馬鹿にするように笑みを浮かべた。

「魔術師であるリュシエンヌを敵の突撃から守りきれなかったのはおまえだ。
 その咎により、おまえとの婚約を破棄する!」
「は……」

 改めてそう告げられるが、パトリシアはやはり理解できずいやともおうとも取れない言葉だけを漏らす。

「だが、私も鬼ではない。おまえに挽回の機会をやろう!
 リュシエンヌの解放交渉にのぞめ。
 自分の身を差し出してでも彼女を取り戻せば、おまえの名誉は回復されるだろう!」

 突然の婚約破棄宣言の驚きに凍りついていた思考が、ゆっくりと動き出す。つまりこの男は婚約者であるパトリシアを売って、リュシエンヌを買い戻したいのだ。

 王子がリュシエンヌに近づいているのはわかっていた。

 よく似た顔立ちであっても無骨な自分にはない華やかな美貌で、女性らしい身体つきをしたリュシエンヌ。強力な火の魔力をその身に宿し、公爵令嬢らしい気品と矜持を持つ妹。女として望まれるのは彼女の方だ。
 姉である自分は半端な風の魔力しか持てず、それならばと剣を身につけたが、剣でも一番にはなれなかった。それでも幼き頃に王家に次代の王妃として認められたのは自分なのだからと、必死に知識を学び、身を粉にして働いてきた。

 だが、すべては無意味だったのだろう。

「わかりました……」

 今回の戦は元々仲の悪かった隣国と頻発していた小競り合いの一つだ。本来なら軽くぶつかり合って終わるだけの戦だったはずが、王子がリュシエンヌを伴って最前線にしゃしゃり出た。どちらの国も本格的に戦う気のない戦で強力な魔法使いであるリュシエンヌに手柄を立てさせ、邪魔者パトリシアに無能のレッテルを貼って婚約者交代を目論んでいたのだろう。

 しかし、戦場で初めてみた大男の働きで予想外の展開となり、リュシエンヌが囚われてしまった。

 貴族が捕虜になってしまった場合、通常であれば身代金を支払って取り戻すのだが、リュシエンヌとの未来のためにパトリシアとリュシエンヌを入れ替えることができれば、身代金を支払うことなくリュシエンヌを取り戻せるだけでなく、うまい具合に今の婚約者パトリシアを処理することができる。

 王子はそう考えたのだろう。

「交渉に行ってまいります……」
「うむ! 良い結果を期待する!」

 満面の笑みを浮かべた王子に見送られ天幕を後にする。自分に対する配慮など一切ない、身勝手極まりない命令だったが、それでも王家からの命令だ。公爵である父ならばともかく、その娘に過ぎない自分がそれを無視することはできない。

 パトリシアは自分の部隊に戻り、ともに戦場に出てくれた騎士たちに王子からの命令を説明して、そのまま公爵領への帰還を命じた。

「お断りします。
 私どももお嬢様とともに参ります」
「妹を買い戻すために売られる姉についてくることはない。
 騎士として、領を守るために剣を振るってほしい」
「王家にいい顔して娘二人を幸せにできない公爵のために剣を振るえと?
 お断りですよ」

 自分についてきてくれる女騎士たちは、その顔に笑みを浮かべていた。

「私たちだって侍女の真似事くらいできます。
 お一人で行かせませんよ」

 パトリシアは騎士たち一人ひとりの目を合わせ、視線で真意を問うていくが、誰一人その視線を避けるものはいない。女騎士たち全員の意志を確認したパトリシアは、戦が終わってから初めての笑みを妹と比べて華やかさにかけても清冽な美しさで負けぬ美貌に浮かべた。

「ありがとう」


  ◯


 剣や鎧を身に着けた騎士をぞろぞろ連れて行くと、襲撃してきたと思われても困る。捕虜返還交渉に臨むのだ。女騎士たちの半分ほどを着替えさせ、侍女として連れて行くことにする。公爵令嬢の自分の護衛として女騎士と侍女を合わせて20人ちょっとなら、なんとか言い訳できるだろう。

 全員で紅茶を淹れて、マシな紅茶を淹れられたほうから順に侍女に扮するつもりだったが、全員が満遍なく不味い。同じ戦場で肩を並べ、今また新たなそれまでと違う戦場に挑む戦友としての気安くなったパトリシアは遠慮なく罵ってやった。

「じゃあ、お嬢様がお手本を見せてくださいよ!」

 仕方がないのでパトリシアが茶を振る舞ってやると、全員が遠慮なく吹き出した。

「そんなはずないだろう!」

 パトリシアも自分の茶を飲んで吹き出した。

「リュシエンヌはお茶を淹れるのも、お菓子を作るのも、上手いんだがなぁ」

 「リュシー」「パティ」とお互いを愛称で呼びあった幼いころは、作りたてのお菓子と紅茶を得意げな顔をして振る舞ってくれた。リュシエンヌが自分をどう思っているかは知らないが、パトリシアはリュシエンヌを嫌いではなかった。貴族らしい価値観で下のものへの当たりはきついが、それだけに他人に見られない場所での努力を厭わない少女だった。魔法の技術はもちろんだが、美味い茶の淹れ方や菓子の作り方、流行の話題の提供などを基盤にした相手が好む場を作り情報を引き出す広い意味での社交などは、自分には身に着けられなかったものだ。

 王妃には剣と実務しかできない自分より、リュシエンヌのほういいのだろうなと、客観的に思う。

「誰がやっても変わらんなら、くじ引きにでもするか」

 仕方がないので運任せで騎士と侍女を分けて衣装を着替えさせ、隣国の部隊がいる陣地に向かって出発する。普段なら馬に乗って行くところを、リュシエンヌの代わりの令嬢として行くためにドレスを着たパトリシアは馬車に乗って移動する。

 パトリシアは純白のドレスを身にまとったその腰に、剣を佩いていた。

 未練だと思った。
 だが、手放せなかった。
 妹と比べて何も持たない自分が、自分で選んで身につけた唯一のものだったからだ。

 道中は何事もなく隣国の陣地までたどり着き、軍の指揮官に謁見すると妙なことを言い出された。

「リュシエンヌを捕縛した部隊に留め置かれている?」

 リュシエンヌは貴族身分の捕虜だ。いや、リュシエンヌだけでなく、リュシエンヌとともにいた学友たちも男爵や伯爵など下位のとは言え貴族令嬢たちだ。彼女らも含めて貴族牢に入れられるのが妥当のはず。指揮官が陣を構える大きな砦には貴族牢はあるだろうが、前線部隊が拠り所とする最前線の砦にそんなものがあるとは思えない。

「相応の扱いをせず通常の牢獄などに拘束しているなら、
 こちらの捕虜も相応の扱いとなることを心得られよ」

 リュシエンヌがひどい扱いを受けているなら、まずはそれをなんとかしないと。
 パトリシアは軍の指揮官に釘を差し、急いで部隊に戻ると騎士と侍女に扮した騎士たちに移動の指示を出した。普通の侍女たちなら時間のかかる出発準備も、侍女姿でも実戦を知る騎士たちばかりだ。あっという間に準備を終わらせて移動を始め、夕闇が迫る時間にどうにか最前線の砦にたどり着くことができた。

 普通なら騎士の一人を先触れに出すところだが、リュシエンヌがひどい扱いを受けているかもしれないのに無駄に時間をかけたくない。全員で砦に近づくと、誰何すいかの声がとんできた。

「そちらに捕らえられた令嬢の返還交渉に来た!
 彼女たちは無事なのだろうな!?」

 声に応じてパトリシアが叫ぶと、砦の門が開いた。

「お嬢サマたちなら、
 地下牢でくつろいでもらってるぜ」

 低く嘲りを含んだ笑いとともに返ってきた声に、パトリシアは馬車のドアを蹴破るようにして開けて飛び降りつつ怒号を発する。

「貴族牢どころか、地下牢だと!?」

 公爵令嬢であるリュシエンヌだけではない。
 他の貴族令嬢たちに対してもあまりの対応に、目が眩むような怒りを覚える。

 パトリシアが少しでも相手に気に入られようと着てきた純白のドレスの裾を掴んで砦の中に駆け出すと、同じように怒りで顔を赤くした騎士や侍女が後に続く。

 どこの砦も奥へ続く道は曲がりくねってわかりにくく、防衛しやすいようになっているが、地下牢は砦の中ではそう重要な施設でもない。パトリシアたちはすぐに地下に続く階段を見つけてそこに飛び込んだ。

「……ひどい」

 地下牢の中を目にして言葉も出なかったパトリシアに変わって、後に続いた騎士の一人が思わずといった様子でそう零した。

 階段に一番近い牢獄に囚われていたのはパトリシアも見覚えのある男爵の次女だった。家格こそ低いが魔法に秀でた少女で、リュシエンヌが目をかけていたのを覚えている。赤い髪と笑顔で場を明るくするような少女だったのに、男たちに犯され尽くし牢獄に打ち捨てられていた。

 牢獄の床に転がって、意志の光も知性の輝きも消え失せた虚ろな目で天井を見上げている少女の股ぐらからは、精液が垂れ流しになっている。女陰だけでなく菊門からも精液があふれ、少女の尻を汚していた。顔も精液で汚され、涙の跡さえわからない。加減を知らない男どもに揉みしだかれた身体は至る所に痣ができている。

 騎士たちがマントで痛々しい彼女の身体を包み、侍女たちが少しでもきれいにしてやろうとハンカチで顔の精液を拭ってやるが、少女は何一つ反応を返さない。

 他の牢に囚われていた令嬢たちも同じように犯しぬかれてひどい有り様だ。下品な傭兵たちに将来の伴侶に捧げるはずだった清らかな所を残さらず汚し尽くされてすすり泣く令嬢はまだなほうで、助けに来た同性の騎士たちの手すら恐怖を感じて狂ったように許しを請う令嬢や、壊れたようにケタケタと笑い続ける令嬢、太いものを受け入れすぎて閉じなくなった割れ目に指を突っ込んでかき回しながらさらなる陵辱を自分から臨む令嬢までいる。

 パトリシアはそんな令嬢たちの中に妹がいないのを見て取って、近くにいた騎士に声をかけた。

「私は奥へ」

 騎士は頷きながら令嬢たちを介抱する仲間を手伝いに牢獄の中へ入っていった。

 パトリシアはあまりに痛々しい令嬢たちの姿に、やりきれない悲しみとそれを上回る怒り、そして妹がそこにいなかったことに対する利己的な安堵とそれをいだいてしまった自分への苛立ちを抱えながら奥へと足を進めていく。

「リュシエンヌ!
 いないか!? 聞こえたら返事をしてくれ!」

 履き慣れない高いヒールの靴ででこぼことした石の廊下に靴音を刻みながら進んでいく。散々に貪られた令嬢たちがいた場所より、さらに光が届きにくい闇の深い場所になっていく。こんな場所に妹がいたらと思うと、やるせない。

 はやる気持ちを押さえつけながら呼びかけつつ足を進めていくと、聞き覚えのある声が聞いたこともないような弱々しい色を帯びて聞こえてきた。

「お姉様……?」
「っリュシー!?」

 思わず幼い頃の愛称で呼びかけてしまいつつ、長くふわりと広がるスカートを邪魔に思い裾をつまんで駆け出す。高いヒールの靴は焦ると石の廊下で足を取られそうになるが、どうにか一番奥の牢獄までたどり着くと鉄格子ごしに呼びかけた。

「リュシー!」

 リュシエンヌはそこにいた。

 だが、パトリシアの知る華やかで、傲慢なほど自信に満ち溢れたリュシエンヌの姿ではなかった。牢獄の汚い床の上にへたり込むようにして力なく座っているリュシエンヌはドレスだけでなく下着まで剥ぎ取られ、その身を牢につなぐ足枷以外は隠すものを何一つ許されずその輝くような豊満な身体を闇の中でさらしている。
 涙の跡が残る顔は何度も張られたのか頬にうっすらと痣ができている。全てのものを下に見るようだった目には怯えと、やってきたパトリシアに縋る光が見えて、普段のリュシエンヌとの差に心が痛む。どれだけの暴力と陵辱で心を折られてしまったのか。

「リュシー!」
「おねえさまぁ……」

 パトリシアが開けっ放しの牢の扉から牢に入ると、リュシエンヌは新たな涙を零してパトリシアにすがりつこうとしたが、パトリシアのドレスを見て瞳に怒りを燃え上がらせすがりつこうとする自分の身体をぐっと押し留めた。

「どうして?」

 妹の突然の怒りと問いかけに戸惑うパトリシアに、リュシエンヌが言葉を募らせる。

「どうして、わたくしがこんな目に!?
 痛い思いをするのはお姉様の役割でしょう!?
 なのにお姉様はどうしてドレスを着て綺麗なままの身体なの!?」

 そうだった。
 ルロワ家では常に魔法に長け、華やかな美貌のリュシエンヌが主役で、いつもパトリシアは地味な役割だった。地味だけならまだしも、時には侍女や下女がするようなことまで押し付けられていた。

「私が純潔を奪われてしまうまえに代わりに来るのがお姉様の役目でしょう!?
 もう遅い! 遅いのよ!!」

 ハッとなったパトリシアが妹の身体に目を向ける。リュシエンヌの女性らしい豊満な身体には吐き出された欲望がこびり着き、大きすぎるものを受け入れさせられた股ぐらからはとめどなく精が溢れ続けている。

「すまない、リュシエンヌ……」

 リュシエンヌの言葉は言いがかりで、パトリシアのことを一切配慮しない身勝手な言葉だった。

 だが、理不尽にその身を穢されてしまった妹に、かけてやれる言葉がないパトリシアはただ謝ることしかできなかった。
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