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賭け(システィーナ目線)
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偶然を装おって四阿でアレク殿下と隣国の泥棒猫を待っていた。
(持つべきものは協力者ねーー)
隣国で大きな商会を取り仕切る次期商会長であり、公爵家のあの男。
小さな頃から交流があり、アレク殿下をお慕いしていることも包み隠さず話していたのが良かったわーー。
今回、その彼が結婚したい女と、アレク殿下が懸想している女が同じだったこともあり、協力者からいろいろ情報提供してもらった。
アレク殿下と歩く泥棒猫を見たら、頭に血が上って思わず泥棒猫を引っ叩くところだった。
(あんな殿下の顔、見たことない!)
アレク殿下の視線、表情ーー。
全てがあの泥棒猫に向けられていた。
いまだかつて見たこともない穏やかで、熱を含んだその眼差しを向けられているのが、この私ではなく、あの女だなんて。
家柄、美貌どれを見ても、私の勝ちではなくて?
あの泥棒猫のどこが良いのかしら?
王妃様まであの女を歓迎しているようで、今晩晩餐会に招待されているなんて!
(私ですら、そのような身内の晩餐に招待されたことはなかったわ!)
私はそれを聞き、王家の本気度を知ったの。
だから、王太子妃であるお姉様にもお願いしてみたわ。
私も参加したいと。
でも姉からは良い返事は貰えなかった。
仕方ないから、王妃様に直談判にも行ったわ。
王妃様は昔から私達姉妹を可愛がって下さっていたから、きっと私の気持ちが分かるはず……!
(アレク様の未来の妻なら、王妃様の娘だしね?)
けれど、直談判も玉砕してしまった……。
なぜ? 何がいけないの?
もしかしたら、アレク様が今夜あの泥棒猫と結ばれてしまったら、私にチャンスがなくなるじゃない……!
私は焦ってしまった。
(どうしましょう……?)
とにかく時間がなかったので、短絡的だけど、既成事実作成を決行することにしたわ。
上手くいけば数ヶ月後にはアレク様の妻に。
失敗しても多少のお咎め程度でしょう?
(きっと、お父様もお姉様も味方して下さるはず……!)
その時は焦りすぎていた上に、楽観的すぎたかも知れない。
蓋を開けてみれば、公爵家の息のかかったメイドに紅茶を細工させることや、夜アレク様の寝室に忍び込む手助けをしてもらうことも容易だった。
けれどーー。
アレク様を眠らせることは出来たけど、既成事実までは無理で、羞恥心を捨てて生まれたままの姿で衣服を脱がせたアレク様に抱きついた。
裸のアレク様はそれはそれは逞しくて……。
さすが、私の想い人……!
本当は媚薬も使いたかったけれど、以前アレク様が耐性があると言っていたので止めておいたわ。
何だか慌ただしい夜だったから、全ての計画を終えた私は急に気が抜け手しまったのかしら?
アレク様を抱きしめたまま、眠りに落ちたわ。
そうした翌朝。
殿下を起こしに来たメイドが悲鳴を上げたのでようやく目覚めた私。
殿下は裸の私を見ても無表情で固まったまま。
私はシーツで体を覆い、殿下に言ってやったわ。
「これでアレク殿下は私のものです」って。
殿下はそれでも無言で……。
私が何だかとても惨めな気持ちになってしまったわ。
ここまでしたのに、私には無関心なのか、と。
その後は、お姉様が血相変えて飛んできたわ。
お姉様の部屋に監禁され、調査が始まってしまった。
ええ?
どうして?
私はもう殿下の女なのに。
調査なんて必要かしら?
(持つべきものは協力者ねーー)
隣国で大きな商会を取り仕切る次期商会長であり、公爵家のあの男。
小さな頃から交流があり、アレク殿下をお慕いしていることも包み隠さず話していたのが良かったわーー。
今回、その彼が結婚したい女と、アレク殿下が懸想している女が同じだったこともあり、協力者からいろいろ情報提供してもらった。
アレク殿下と歩く泥棒猫を見たら、頭に血が上って思わず泥棒猫を引っ叩くところだった。
(あんな殿下の顔、見たことない!)
アレク殿下の視線、表情ーー。
全てがあの泥棒猫に向けられていた。
いまだかつて見たこともない穏やかで、熱を含んだその眼差しを向けられているのが、この私ではなく、あの女だなんて。
家柄、美貌どれを見ても、私の勝ちではなくて?
あの泥棒猫のどこが良いのかしら?
王妃様まであの女を歓迎しているようで、今晩晩餐会に招待されているなんて!
(私ですら、そのような身内の晩餐に招待されたことはなかったわ!)
私はそれを聞き、王家の本気度を知ったの。
だから、王太子妃であるお姉様にもお願いしてみたわ。
私も参加したいと。
でも姉からは良い返事は貰えなかった。
仕方ないから、王妃様に直談判にも行ったわ。
王妃様は昔から私達姉妹を可愛がって下さっていたから、きっと私の気持ちが分かるはず……!
(アレク様の未来の妻なら、王妃様の娘だしね?)
けれど、直談判も玉砕してしまった……。
なぜ? 何がいけないの?
もしかしたら、アレク様が今夜あの泥棒猫と結ばれてしまったら、私にチャンスがなくなるじゃない……!
私は焦ってしまった。
(どうしましょう……?)
とにかく時間がなかったので、短絡的だけど、既成事実作成を決行することにしたわ。
上手くいけば数ヶ月後にはアレク様の妻に。
失敗しても多少のお咎め程度でしょう?
(きっと、お父様もお姉様も味方して下さるはず……!)
その時は焦りすぎていた上に、楽観的すぎたかも知れない。
蓋を開けてみれば、公爵家の息のかかったメイドに紅茶を細工させることや、夜アレク様の寝室に忍び込む手助けをしてもらうことも容易だった。
けれどーー。
アレク様を眠らせることは出来たけど、既成事実までは無理で、羞恥心を捨てて生まれたままの姿で衣服を脱がせたアレク様に抱きついた。
裸のアレク様はそれはそれは逞しくて……。
さすが、私の想い人……!
本当は媚薬も使いたかったけれど、以前アレク様が耐性があると言っていたので止めておいたわ。
何だか慌ただしい夜だったから、全ての計画を終えた私は急に気が抜け手しまったのかしら?
アレク様を抱きしめたまま、眠りに落ちたわ。
そうした翌朝。
殿下を起こしに来たメイドが悲鳴を上げたのでようやく目覚めた私。
殿下は裸の私を見ても無表情で固まったまま。
私はシーツで体を覆い、殿下に言ってやったわ。
「これでアレク殿下は私のものです」って。
殿下はそれでも無言で……。
私が何だかとても惨めな気持ちになってしまったわ。
ここまでしたのに、私には無関心なのか、と。
その後は、お姉様が血相変えて飛んできたわ。
お姉様の部屋に監禁され、調査が始まってしまった。
ええ?
どうして?
私はもう殿下の女なのに。
調査なんて必要かしら?
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