婚約破棄されたい悪役令嬢は、今日も愛人の子を愛でる

紅位碧子 kurenaiaoko

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13 誰の子か

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師匠のところから戻ると、父親である現伯爵が呼んでいると家令が伝えに来た。

「分かったわ、ありがとう」

恐らくオリーブのことだろう。
面倒だが今は話を合わせるしかない。

(しかし、避妊薬を飲ませていたのに妊娠するなんて……)

もしかしたら、ヘンプリンには避妊薬を無効にする効果があるのだろうか?

いかんせん、もうのだ。
仕方ない。

「お父様、ジョセフィーヌです」

執務室の扉をノックすると、お父様の入れと言う声が微かに聞こえた。

「……お呼びだそうで」

お父様は机の書類に没頭していて入室した私に視線すら向けない。

「……アレから話は聞いたか?」

とは恐らく、オリーブのことだろう。

「……オリーブの妊娠のことでしょうか?」

「ああ、そうだ。お前のとエリオット君の子供として育てたいそうだ」

はぁ……。

「……決定でしょうか」

「一応、意見を聞こう」

一応ね……。
こう聞かれる時はたいがい迷ってる時。

「……では、私の考えを述べさせて頂きます。オリーブには、伯爵家の後継者として丁重に育てる、と伝えた上で実際はとして届けるのが最善かと」

「……理由は?」

「なぜなら、私はいずれこの伯爵家を継ぐ予定ですが、男児が産まれたならば、私を後継者にする必要がないわけです。まあ、中継ぎなら可能ですが……。お父様が健在ですから。ならば、お父様の実子としたほうがいろいろ将来的にはスムーズかと」

「……なるほど」

「私の子供にした場合は、私が伯爵家を継いだ場合に好きにさせて頂きます」

「……分かった」

「いずれにせよ、オリーブにはどこかの領地に引っ込んでもらわないと辻褄が合いません。お父様がきちんと対応下さいませ」

私はそれだけ言うと部屋を後にした。

(オリーブの子供が、私の子供にされるのは五分五分ってところね……)

お父様の表現からはまだ迷いしか伺えなかった。

(……しかし、本当にお父様は未婚の娘が婚約者でもない男に妊娠させられても何もないのね……)

ザ洗脳、恐るべしである。


ーーーーーー
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