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1.婚約破棄
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「スカーレット・オルタナ公爵令嬢!神託により聖女の力を持つミアラを王太子妃にすることになった!国のために婚約破棄する!が、悦びたまえ。寛大なる聖女ミアラは、そなたを側妃として迎えることを承諾した。公務を引き続き行うとよい」
この国ーースピカネルの王太子であるマリオット殿下が高らかに大勢の観衆の前で宣言した。
ーー婚約破棄?(解消でなくて?)
ーー側妃?
ーー公務?
絶賛私の頭の中は情報整理中だ。
ここは王宮の一番広い大ホール。
今宵は、殿下の20歳の誕生日パーティーが開かれていた。
殿下の隣には聖女ミアラ様がにっこり微笑んで佇んでいる。
小柄で儚げな印象を与える聖女ミアラ様。
一瞬、私を見ながら口角が上がったように見えたが単なる見間違いだろう。
もちろん一応(いやいやながら)婚約者である私も殿下にエスコートすらされなかったが、会には参加していた。
神殿での神託が出てから覚悟していたものの、こんな衆人環視の中で婚約破棄されるとはーーっ!
私は見えないように拳を握りしめながら、殿下に淑女の笑みで切り返す。
(私の5年以上に渡る妃教育の時間を返せっ!こんな人前で婚約破棄するなっ!そもそも、婚約してること自体がイヤイヤなんだからーー!勘違いすんなーー!)
ーーいつもクールに見えると言うから、今日は雰囲気を優しく出来ないかなと思って、黒髪のストレートヘアーを巻き髪にしてもらったのよ?
ーー自前で殿下の瞳の色のアイスブルーのドレスを仕立てたのよ?
(みっちり慰謝料貰うよう、お父様に言わなくては……!)
筆頭公爵家の長女に生まれ、早くから王太子の婚約者になり、自由も夢も諦めて生きてきた。
昔から兄と一緒に身体を動かすのが好きで、本当は冒険者になりたかった。
(ダンジョンで過ごした日々は楽しかったなー!)
こんな場所で婚約破棄された私は、一瞬で『傷モノ令嬢』になってしまった。
(そもそも公爵家に生まれ、自由な結婚をするとは思わなかったけど、こんなのはあんまりだ……!)
残念ながら、お父様は会場には姿がなかった。
はぁ……。
……仕方ない。
私は、容姿だけは淡麗(中身はポンコツ!)なマリオット殿下の瞳を見ながらゆっくりと応えた。
「……殿下、婚約破棄了承致しました。ミアラ様と国を繁栄させて下さいませ。ただ……」
私は深呼吸をする。
「……側妃は謹んで辞退させて頂きますっ……!」
今出来る最大限の抵抗だった。
そう言い終わると、私は殿下とミアラ様の前から踵を返し出口へと向かった。
「……スカーレット?君に拒否権はないよ?」
背後から殿下の低く冷たい声が私の心を射抜く。
「近衛っ!スカーレット嬢を丁重に部屋まで案内するように」
私は忽ち近衛兵に取り囲まれ否応なく王宮に監禁されることになってしまった。
この国ーースピカネルの王太子であるマリオット殿下が高らかに大勢の観衆の前で宣言した。
ーー婚約破棄?(解消でなくて?)
ーー側妃?
ーー公務?
絶賛私の頭の中は情報整理中だ。
ここは王宮の一番広い大ホール。
今宵は、殿下の20歳の誕生日パーティーが開かれていた。
殿下の隣には聖女ミアラ様がにっこり微笑んで佇んでいる。
小柄で儚げな印象を与える聖女ミアラ様。
一瞬、私を見ながら口角が上がったように見えたが単なる見間違いだろう。
もちろん一応(いやいやながら)婚約者である私も殿下にエスコートすらされなかったが、会には参加していた。
神殿での神託が出てから覚悟していたものの、こんな衆人環視の中で婚約破棄されるとはーーっ!
私は見えないように拳を握りしめながら、殿下に淑女の笑みで切り返す。
(私の5年以上に渡る妃教育の時間を返せっ!こんな人前で婚約破棄するなっ!そもそも、婚約してること自体がイヤイヤなんだからーー!勘違いすんなーー!)
ーーいつもクールに見えると言うから、今日は雰囲気を優しく出来ないかなと思って、黒髪のストレートヘアーを巻き髪にしてもらったのよ?
ーー自前で殿下の瞳の色のアイスブルーのドレスを仕立てたのよ?
(みっちり慰謝料貰うよう、お父様に言わなくては……!)
筆頭公爵家の長女に生まれ、早くから王太子の婚約者になり、自由も夢も諦めて生きてきた。
昔から兄と一緒に身体を動かすのが好きで、本当は冒険者になりたかった。
(ダンジョンで過ごした日々は楽しかったなー!)
こんな場所で婚約破棄された私は、一瞬で『傷モノ令嬢』になってしまった。
(そもそも公爵家に生まれ、自由な結婚をするとは思わなかったけど、こんなのはあんまりだ……!)
残念ながら、お父様は会場には姿がなかった。
はぁ……。
……仕方ない。
私は、容姿だけは淡麗(中身はポンコツ!)なマリオット殿下の瞳を見ながらゆっくりと応えた。
「……殿下、婚約破棄了承致しました。ミアラ様と国を繁栄させて下さいませ。ただ……」
私は深呼吸をする。
「……側妃は謹んで辞退させて頂きますっ……!」
今出来る最大限の抵抗だった。
そう言い終わると、私は殿下とミアラ様の前から踵を返し出口へと向かった。
「……スカーレット?君に拒否権はないよ?」
背後から殿下の低く冷たい声が私の心を射抜く。
「近衛っ!スカーレット嬢を丁重に部屋まで案内するように」
私は忽ち近衛兵に取り囲まれ否応なく王宮に監禁されることになってしまった。
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