【本編完結】残念令嬢が初恋の人と結婚したら愛人がいたので死んで復讐してみたいと思います

紅位碧子 kurenaiaoko

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心の声

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(……ああ!生きてる……!)

私が窓から飛び降りた後、しばらくするとユンがマットの回収に現れ、私はひんやりした地面に横たわり再び回収されることを待つ。

「あとはお願いね、ユン……」

ユンは頷き、私の手を握ってくれた。

薬の影響で五分と経たずに意識が遠退いた。

気づいたら自室のベッドにいた。

(……助かった!意識回復までの間はここで人間観察しなくちゃっ……!)

頼みの綱である王太子殿下に手紙が渡ったか心配だが、今はどうすることも出来ない。

しばらくすると、慌ただしく医師が訪れた。

(何だか不思議な感覚だ……。肉体の感覚はないけど、意識はしっかりあるし。まるで幽体離脱みたいだ……!)

医師が私の全身を診察する。

切り傷などは助手が手早く消毒し、処置をしていく。

(……肉体が動くまで1ヶ月くらい。みんなの裏の顔、拝見させてもらいますよー!)

目は開かないけれど、耳を頼りに楽しみますっ。

程無くして憔悴したシリカが入ってきた。

「……ああ、お嬢様……!」

シリカの嗚咽が聞こえてきた。

『……シリカ、私は大丈夫!計画は成功したから!』

私は心の声で伝えた。

医師が診察を終えると、シリカにアレクを呼びに行くよう伝えた。

『…アレクは手紙に気がついたかな?』

例え見てくれたとしても、現実は何ら変わらないかも知れない。

でも、ずっと好きだったこと。
結婚出来て嬉しかったことを伝えたかった。

しばらくすると、シリカの声とアレクの声が聞こえてきた。

アレクは夫であると伝え、医師の話しを聞いていた。
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自分の体が見えないだけに傷の状態が気になっていた。

『……骨折かあ。まあ1ヶ月あれば治るかな?あまり外傷なくて良かった!』

そして、アレクは私の例の傷が気になったようで医師に説明を受けていた。

『……手紙、読んでくれたのかな?私がだってようやく伝わったかなあ?』

思い返せば、アレクは既に傷のことは知っている、と思っていたし、あの事件のことは私たちの中ではタブーだった。

(……もっともっと交流すれば良かったのかなあ?)

望まれていない婚約者の私。
デートもなければ、贈り物もなし。

話を切り出すきっかけがなかった。

おまけに、望まれていないのに話をしたいなんて厚かましいしね……。

しばらく一人の世界に入っていたら、突然アレクがベッドに近づいてきたようだった。

『……声が近い……!』

アレクはしきりに私の名前を呼んでいた。

それが懺悔ななか何なのかは分からないが、少なくても私の存在はまだ彼のなかにはいたのだ。

程無くして、家令と……シリウス殿下が部屋を訪れた。

『ユン、手紙を届けてくれたのね!ありがとう……!』

そして、シリウス殿下とアレクの会話は、私が知らないことばかりの驚きの内容だった。
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