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懺悔~アレク視点5
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リリアナの部屋をノックすると医師から入るよう促された。
リリアナの部屋は今だに客間だったことにようやく気がついた。
(……リリアナには何て酷いことを……!)
部屋に踏み入れると、当たり前だが侍女のシリカが睨むようにこちらを見ていた。
「夫のアレクサンダーだ」
医師は事務的にリリアナの説明を始めた。
「……奥様の状態ですが……。飛び降りた時に出来たと思われる裂傷が全身に見られます。左脚が骨折、頭部も打撲しており、裂傷から流血しています。意識はまだありません。精密検査をしないと分かりませんが、頭部を強打した可能性があります。また、背中には古い傷がありますが、こちらは今回の傷ではないでしょう。意識に関してはいつ戻るかなどは全く分かりません」
「……古い傷の状態は?」
「……かなり前の傷のようですが、だいたい12センチほどの傷があります。ケロイドではないですが、まだはっきりとわかる傷ですね。剣かナイフかで切りつけられた傷かと思われます」
あの事件の時の傷に間違いなかった。
(……ああ、リリアナ!済まない!本当にすまなかった……!)
私はすがるような気持ちでベッドに近づくとリリアナの手を自分の手で包み込む。
大切にすべきは、ミリアーヌではなく、リリアナだった……!
今更気がついても遅い、とシリカが無言の圧力をかける。
そこへここにいるはずのない人物が家令に案内され現れた。
「……シ、シリウス殿下……!」
私の言葉に医師は私はこれで、と早々に部屋を後にした。
シリカも私たち二人だけにしたほうがいいだろう、との判断からか部屋から出て行った。
残されたのは、眠るリリアナと、私。
そしてシリウス殿下ーー。
「……私がリリアナ嬢の見舞いに来るのは問題があるのか?」
シリウスの冷たい視線が私をい抜く。
(……ああ、これはすべてを知る瞳だ……!)
「こんなことになるなら、あの時に無理やりにでもリリアナ嬢を婚約者にすべきだった…」
シリウス殿下は膝をつき、リリアナの髪を撫でる。
「……リリアナと婚約?」
「……知らなかったのか?もともと王家から公爵家にはリリアナ嬢を婚約者にしたいと打診したんだよ。それが、公爵家側からは、リリアナは容姿も能力も姉に劣り王太子妃は務まらない。あの事件でアレクを庇って酷い傷を負ったため王家には嫁げない、と。代わりに姉のミリアーヌを婚約者にしてほしい、とね……」
「……う、嘘だ…!そんな話、初めて聞いた!私には、ミリアーヌが傷を負ったが、王家から婚約の打診があり嫁がせる、と。だから、リリアナと婚約してほしいと言われてしぶしぶ同意したんだ……」
「……そうか、しぶしぶ同意したのか。私はリリアナと婚約したかったのに。アレク、今回の騒動でリリアナ嬢こそやはり妃にふさわしい存在だと改めて気がついたよ。とにかく、リリアナ嬢が目覚めることを祈っている。それとね……。アレク?」
「……」
「……君と私は幼い頃からの仲にも関わらず、私の婚約者と関係を持つとはどういったつもりなんだ?まあ、どのみちあの女とは結婚できないが……」
「……すまなかった、シリウス……。いつしかミリアーヌとの関係に溺れていたんだ……」
「……リリアナ嬢はさぞかし辛かっただろう。彼女は、自分の命を賭けて私に君たちの関係を伝えようとしてくれた。その勇気が本当に素晴らしいと思わないかい? 公爵家を敵に回すかも知れないのに、未来の国母に殿下の血が流れない世継ぎが生まれるかも知れないから……と。私はリリアナ嬢の優しさと、公爵令嬢として国を思う気持ちに感動した」
「……リリアナ……!!」
「実はね、私も影から彼女が不貞をしている、とかなり前から報告をもらってはいた。詳しく調べたら、君以外にも5人もいた。私は彼女とはまだそういう関係ではないがね……」
ミリアーヌが初めてではなかったのは、殿下と行為に及んだのではなく、たくさんの男と関係があったからーー。
信じたくなかった。
「母上がね、言ったんだよ。王妃にふさわしいのは、見映えが良く、頭がいいだけではダメだと。例え愛せなくてもお互いを信頼できる相手を選びなさい、とね。だから、私はリリアナ嬢を選んだ。なぜなら、ミリアーヌ嬢は権力欲が強く、平気で人を裏切るからだ。おまけに……病的な男好きなようだしな」
私にはもう殿下の声すら入って来なかった。
リリアナの部屋は今だに客間だったことにようやく気がついた。
(……リリアナには何て酷いことを……!)
部屋に踏み入れると、当たり前だが侍女のシリカが睨むようにこちらを見ていた。
「夫のアレクサンダーだ」
医師は事務的にリリアナの説明を始めた。
「……奥様の状態ですが……。飛び降りた時に出来たと思われる裂傷が全身に見られます。左脚が骨折、頭部も打撲しており、裂傷から流血しています。意識はまだありません。精密検査をしないと分かりませんが、頭部を強打した可能性があります。また、背中には古い傷がありますが、こちらは今回の傷ではないでしょう。意識に関してはいつ戻るかなどは全く分かりません」
「……古い傷の状態は?」
「……かなり前の傷のようですが、だいたい12センチほどの傷があります。ケロイドではないですが、まだはっきりとわかる傷ですね。剣かナイフかで切りつけられた傷かと思われます」
あの事件の時の傷に間違いなかった。
(……ああ、リリアナ!済まない!本当にすまなかった……!)
私はすがるような気持ちでベッドに近づくとリリアナの手を自分の手で包み込む。
大切にすべきは、ミリアーヌではなく、リリアナだった……!
今更気がついても遅い、とシリカが無言の圧力をかける。
そこへここにいるはずのない人物が家令に案内され現れた。
「……シ、シリウス殿下……!」
私の言葉に医師は私はこれで、と早々に部屋を後にした。
シリカも私たち二人だけにしたほうがいいだろう、との判断からか部屋から出て行った。
残されたのは、眠るリリアナと、私。
そしてシリウス殿下ーー。
「……私がリリアナ嬢の見舞いに来るのは問題があるのか?」
シリウスの冷たい視線が私をい抜く。
(……ああ、これはすべてを知る瞳だ……!)
「こんなことになるなら、あの時に無理やりにでもリリアナ嬢を婚約者にすべきだった…」
シリウス殿下は膝をつき、リリアナの髪を撫でる。
「……リリアナと婚約?」
「……知らなかったのか?もともと王家から公爵家にはリリアナ嬢を婚約者にしたいと打診したんだよ。それが、公爵家側からは、リリアナは容姿も能力も姉に劣り王太子妃は務まらない。あの事件でアレクを庇って酷い傷を負ったため王家には嫁げない、と。代わりに姉のミリアーヌを婚約者にしてほしい、とね……」
「……う、嘘だ…!そんな話、初めて聞いた!私には、ミリアーヌが傷を負ったが、王家から婚約の打診があり嫁がせる、と。だから、リリアナと婚約してほしいと言われてしぶしぶ同意したんだ……」
「……そうか、しぶしぶ同意したのか。私はリリアナと婚約したかったのに。アレク、今回の騒動でリリアナ嬢こそやはり妃にふさわしい存在だと改めて気がついたよ。とにかく、リリアナ嬢が目覚めることを祈っている。それとね……。アレク?」
「……」
「……君と私は幼い頃からの仲にも関わらず、私の婚約者と関係を持つとはどういったつもりなんだ?まあ、どのみちあの女とは結婚できないが……」
「……すまなかった、シリウス……。いつしかミリアーヌとの関係に溺れていたんだ……」
「……リリアナ嬢はさぞかし辛かっただろう。彼女は、自分の命を賭けて私に君たちの関係を伝えようとしてくれた。その勇気が本当に素晴らしいと思わないかい? 公爵家を敵に回すかも知れないのに、未来の国母に殿下の血が流れない世継ぎが生まれるかも知れないから……と。私はリリアナ嬢の優しさと、公爵令嬢として国を思う気持ちに感動した」
「……リリアナ……!!」
「実はね、私も影から彼女が不貞をしている、とかなり前から報告をもらってはいた。詳しく調べたら、君以外にも5人もいた。私は彼女とはまだそういう関係ではないがね……」
ミリアーヌが初めてではなかったのは、殿下と行為に及んだのではなく、たくさんの男と関係があったからーー。
信じたくなかった。
「母上がね、言ったんだよ。王妃にふさわしいのは、見映えが良く、頭がいいだけではダメだと。例え愛せなくてもお互いを信頼できる相手を選びなさい、とね。だから、私はリリアナ嬢を選んだ。なぜなら、ミリアーヌ嬢は権力欲が強く、平気で人を裏切るからだ。おまけに……病的な男好きなようだしな」
私にはもう殿下の声すら入って来なかった。
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