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番外編2
帰省2
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「ようこそお越し下さいました、王妃様」
公爵家の屋敷に到着すると、使用人総出で出迎えてくれた。
「ダニエル、急にごめんなさいね。びっくりしたでしょう?」
「いえ、一同歓迎致します。妻は身重につき体調不良なので失礼しております」
「知ってるから大丈夫よ。妊婦によい滋養薬を持参したから後で届けるわ」
ダニエルも侯爵家の令嬢と結婚して早5年になる。
既に後継である男児が産まれており、来月第二子が産まれる予定だ。
政略結婚だが夫婦仲も悪くなく、私も度々お茶会に夫人を招いていた。
「非公式の里帰りだから、しばらくお世話やになるわ。あといろいろお願いがあるの。後で部屋に来てもらえる?」
「承知致しました。では、お茶の準備が整った頃に伺いましょう」
こうして束の間の里帰りが始まった。
警備の都合上、以前の残念令嬢時代の部屋ではなく貴賓室に案内された。
「シリカ、何だか落ち着かないわね……。以前はこじんまりとした地味な部屋だったから落ち着いたのかな……」
嫁入り前の部屋の4倍はありそうな広さと豪華さを誇る貴賓室に始めて泊まることになる。
「アンドリュー様もお隣のお部屋なのでユンにはアンドリュー様の部屋に待機させてます」
「分かったわ。シリカは部屋も広いからここに泊まったらどう?」
「承知致しました。では、控えの間を利用させて頂きます」
シリカが荷解きをしていると、公爵家の使用人から声がかかった。
お茶の支度が始まる。
しばらくすると、アンドリューとダニエル、ユンも部屋を訪れた。
「では、久しぶりの里帰りを祝してお祝いしましょうか?」
私が笑顔でシャンパンをかざし、乾杯の音頭と共にシャンパンを飲み干した。
「はぁ……。美味しい。ダニエル、本当にありがとう。準備も大変だったでしょう?それでね、いくつかお願いがあって……」
私はかいつまんでいくつか話を持ちかけた。
「つまり、あの噂の真相を王妃自ら行いたいと。市井に行くのと、伯爵家に行きたいのですか……。なかなかの難易度ですね……。警備の都合もありますし。何かあれば陛下から何を言われるか……」
「大丈夫よ。全ての責任は私が取るから」
「母上、やはりここは我々に任せて下さい」
「アンドリューだってまだ10歳よ?私なんかより危険でしょう」
「いや、アンドリューは男だし、少なくても何か危険があっても多少の冒険はできるだろう」
「でも、ほら国を脅かす事態になるかも知れないでしょう?」
「いや、そんな事態だから危ないのですよ、姉様……」
「私自身、物騒なことにならずに、単なる愛人だったらどんなに良いかと思っているわよ……」
「いや、母上、それもそれで問題かと……」
「まあ、とにかく国のために明日から行動よっ!あと、ダニエル?久しぶりにアレクサンダー様を呼んてもらえない?」
まさかの発言に、ダニエルとアンドリューが顔を見合わせたのは言うまでもなかった。
公爵家の屋敷に到着すると、使用人総出で出迎えてくれた。
「ダニエル、急にごめんなさいね。びっくりしたでしょう?」
「いえ、一同歓迎致します。妻は身重につき体調不良なので失礼しております」
「知ってるから大丈夫よ。妊婦によい滋養薬を持参したから後で届けるわ」
ダニエルも侯爵家の令嬢と結婚して早5年になる。
既に後継である男児が産まれており、来月第二子が産まれる予定だ。
政略結婚だが夫婦仲も悪くなく、私も度々お茶会に夫人を招いていた。
「非公式の里帰りだから、しばらくお世話やになるわ。あといろいろお願いがあるの。後で部屋に来てもらえる?」
「承知致しました。では、お茶の準備が整った頃に伺いましょう」
こうして束の間の里帰りが始まった。
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お茶の支度が始まる。
しばらくすると、アンドリューとダニエル、ユンも部屋を訪れた。
「では、久しぶりの里帰りを祝してお祝いしましょうか?」
私が笑顔でシャンパンをかざし、乾杯の音頭と共にシャンパンを飲み干した。
「はぁ……。美味しい。ダニエル、本当にありがとう。準備も大変だったでしょう?それでね、いくつかお願いがあって……」
私はかいつまんでいくつか話を持ちかけた。
「つまり、あの噂の真相を王妃自ら行いたいと。市井に行くのと、伯爵家に行きたいのですか……。なかなかの難易度ですね……。警備の都合もありますし。何かあれば陛下から何を言われるか……」
「大丈夫よ。全ての責任は私が取るから」
「母上、やはりここは我々に任せて下さい」
「アンドリューだってまだ10歳よ?私なんかより危険でしょう」
「いや、アンドリューは男だし、少なくても何か危険があっても多少の冒険はできるだろう」
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「いや、そんな事態だから危ないのですよ、姉様……」
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「いや、母上、それもそれで問題かと……」
「まあ、とにかく国のために明日から行動よっ!あと、ダニエル?久しぶりにアレクサンダー様を呼んてもらえない?」
まさかの発言に、ダニエルとアンドリューが顔を見合わせたのは言うまでもなかった。
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