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番外編2
市井へ
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「ダニエル、アレク様には連絡してくれた?」
おはようより早く飛び出したアレク様の話に、ダニエルも観念した様子だった。
「……はい、姉様。早馬を出しましたから今日には連絡があるかと……」
私は満足して朝食をとり始めた。
「食べ終わったら、まずは噂の市井に行かないとね。ダニエル、護衛はどれくらいなの?」
「さすがに複数名では目立つため、ユン以外は少し距離を置いて警護にあたります」
「……分かったわ。私も町娘スタイルになるし危険なことはしないから。万が一何かあったら、ダニエルだけは守って頂戴」
「それは……承知しました」
「あー、楽しみね?アンドリューも一緒だし。ワクワクするわ」
「……母上、はしゃぎ過ぎです」
あらそう?といいながら、公爵家のベテランシェフの味を堪能する。
(……シリウスと一緒になって10年。今まで平穏すぎたからね……。めんどくさい愛人だとちょっと嫌だけど、まあこれも運命よね……)
「リリアナ様?そろそろお召替えを……」
「あ、シリカ、ごめんなさい、ぼーっとしていて。さぁ、支度しましょっ!」
誰よりも張り切る私に、一同呆れながらも朝食はお開きとなった。
一時間後、シリカの抜群のセンスで町娘に仕上がった私。
「パン屋の女主人ってところかなあ?町娘じゃなくて残念だ……あ、でもアンドリューがいるから丁度よい?」
鏡ごしにシリカに話かけるもシリカに問いかけても苦笑いしかしないため、馬車の前で待ち構えていたアンドリューに、パン屋の女主人と息子って設定よ!と言ったらこれまた苦笑いされてしまった。
「行ってくるね、ダニエル。楽しんでくるわ」
私たちは公爵家の馬車に乗り込み、街を目指した。
「リリアナ様、馬車は公爵領を出るあたりで手配した辻馬車に乗り換えて頂きます」
「シリカ?私は何でも大丈夫だから、気にしないでね。元残念令嬢よ?大抵のことは経験してるし。それにアンドリューにとっても良い経験になるしね」
アンドリューはパン屋の息子にしては品が良すぎるが、普段は見ることが出来ない崩れた服装も似合っていた。
4人で他愛もない話をしていたらあっと言う間に馬車を乗換え、目的地に到着していた。
「あそこの人が並んでいる場所は何?」
「あれは最近流行のチョコレート屋さんです。あと、その隣のカフェも大人気だそうです」
公爵領から少し行った先の隣の公爵領……つまり、アレクサンダー様の領地にあるお店だった。
(しかし、アレク様とは何らかのご縁があるのよね……)
「あとでカフェに行きたいわ。あと、チョコレートもお土産にしましょう」
とりあえずは目指すは、シリウスが目撃された場所である。
「ここから徒歩で数分ですから、歩いていきましょう」
辻馬車の御者が道案内してくれていた。
実は辻馬車の御者は、アルク様の部下で、護衛も兼ねているらしい。
(……知らなかった。ありがとう、アレク様)
しばらく歩くと噂の場所にたどり着いた。
そこには、一軒のこじんまりとした可愛いお店があった。
「……雑貨屋さんみたいね?」
ここでシリウスがよく目撃されていたらしい。
「……リリアナ様、まずは私シリカが店内に入りますので、しばらくお待ちください」
「……分かったわ。シリカ、よろしくね」
シリカは私たちをあとに、店内に入って行った。
おはようより早く飛び出したアレク様の話に、ダニエルも観念した様子だった。
「……はい、姉様。早馬を出しましたから今日には連絡があるかと……」
私は満足して朝食をとり始めた。
「食べ終わったら、まずは噂の市井に行かないとね。ダニエル、護衛はどれくらいなの?」
「さすがに複数名では目立つため、ユン以外は少し距離を置いて警護にあたります」
「……分かったわ。私も町娘スタイルになるし危険なことはしないから。万が一何かあったら、ダニエルだけは守って頂戴」
「それは……承知しました」
「あー、楽しみね?アンドリューも一緒だし。ワクワクするわ」
「……母上、はしゃぎ過ぎです」
あらそう?といいながら、公爵家のベテランシェフの味を堪能する。
(……シリウスと一緒になって10年。今まで平穏すぎたからね……。めんどくさい愛人だとちょっと嫌だけど、まあこれも運命よね……)
「リリアナ様?そろそろお召替えを……」
「あ、シリカ、ごめんなさい、ぼーっとしていて。さぁ、支度しましょっ!」
誰よりも張り切る私に、一同呆れながらも朝食はお開きとなった。
一時間後、シリカの抜群のセンスで町娘に仕上がった私。
「パン屋の女主人ってところかなあ?町娘じゃなくて残念だ……あ、でもアンドリューがいるから丁度よい?」
鏡ごしにシリカに話かけるもシリカに問いかけても苦笑いしかしないため、馬車の前で待ち構えていたアンドリューに、パン屋の女主人と息子って設定よ!と言ったらこれまた苦笑いされてしまった。
「行ってくるね、ダニエル。楽しんでくるわ」
私たちは公爵家の馬車に乗り込み、街を目指した。
「リリアナ様、馬車は公爵領を出るあたりで手配した辻馬車に乗り換えて頂きます」
「シリカ?私は何でも大丈夫だから、気にしないでね。元残念令嬢よ?大抵のことは経験してるし。それにアンドリューにとっても良い経験になるしね」
アンドリューはパン屋の息子にしては品が良すぎるが、普段は見ることが出来ない崩れた服装も似合っていた。
4人で他愛もない話をしていたらあっと言う間に馬車を乗換え、目的地に到着していた。
「あそこの人が並んでいる場所は何?」
「あれは最近流行のチョコレート屋さんです。あと、その隣のカフェも大人気だそうです」
公爵領から少し行った先の隣の公爵領……つまり、アレクサンダー様の領地にあるお店だった。
(しかし、アレク様とは何らかのご縁があるのよね……)
「あとでカフェに行きたいわ。あと、チョコレートもお土産にしましょう」
とりあえずは目指すは、シリウスが目撃された場所である。
「ここから徒歩で数分ですから、歩いていきましょう」
辻馬車の御者が道案内してくれていた。
実は辻馬車の御者は、アルク様の部下で、護衛も兼ねているらしい。
(……知らなかった。ありがとう、アレク様)
しばらく歩くと噂の場所にたどり着いた。
そこには、一軒のこじんまりとした可愛いお店があった。
「……雑貨屋さんみたいね?」
ここでシリウスがよく目撃されていたらしい。
「……リリアナ様、まずは私シリカが店内に入りますので、しばらくお待ちください」
「……分かったわ。シリカ、よろしくね」
シリカは私たちをあとに、店内に入って行った。
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