今日。恋をする。

あまみずき

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第1話 本と私と彼。

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「しかし…夏は本当に暑いもんだなぁ…」

夏真っ盛りの8月中旬。私は暇を潰そうと地元の図書館へと向かっていた。
私の名前は綾水 美咲(あやみ みさき)。高校2年。これといって特徴がない女の子だ。
「はぁ…ついた…」
家から徒歩10分ほどでつく甘崎図書館は私が住んでいる町にある唯一の図書館で学生などが多く利用している。夏休みとなると私のように暇つぶしに本を読みに来る人も少なくない。
徒歩10分とは思えないほど遠く感じてしまった…。


私は汗をタオルで拭きながら中へ入る。自動ドアが開いた瞬間、冷気が私を襲う。私はすたすたと1人席がある奥の方へ進んだ。
「やっぱり学生多いなぁ…空いてるのかな…あっ…」
奥に1つだけ席が空いていたので、座って一息ついた。
「うーん…図書館に来たはいいものの、何読もうかな…とりあえず探しに行こうかな。」
荷物を置き、本棚を見る。
私が座った席の近くには法律や行政系の本がずらりと並んでいた。
「わはは…私には難しいや…」
もう少し先に進むと文庫本が置いてある棚についた。
「んー…なんかいいのないかな…」
じーっと本棚を見つめる。するとふと気になる本があった。
でも私には高くて届きもしない。頑張っているとすぐ隣から腕が伸びてきた。
「これ、ですか?」
お目当ての本を私に差し出す。
「あぁっ…ありがとうございます。」
私は本を受け取り相手の顔を確認する。
メガネをかけた背の高い、いかにも文学系の男子といえる感じの男性だった。
「よかったです。困っていたようなので…。その本、僕も読んだことあるんです。とっても面白いですよ。」
そう言って彼は微笑んだ。
私は思わずきゅんとしてしまった。何か電気のようなものが走った気がした。
「そ、そうなんですか…楽しみだなぁ…あははっ…」
そういってにこにこしながらその場を去る。
「あの笑顔は反則だよ!!!」
そう思いながら自分の席へ戻る。
胸の鼓動が止まらない。あの笑顔が忘れられない。
「なんだろう…変なの…」
そう思いながら私は読み始めた…。


「まもなく閉館致します…皆様…お忘れ物のないよう気をつけてお帰りください…」
気づいた頃にはもう閉館時刻ぎりぎりになっていた。
「もうこんな時間か…帰らなきゃ…。本…借りてこうかな」
私は重い腰をあげてカウンターへ向かい貸し出しの手続きをして図書館を出た。
「うわっ暑い…」
外の暑さは相変わらずなようで私は家へと歩き始めた…。


次の日私は読み終わった小説を返しに行くためまた図書館へと向かった。
「意外と面白かったなぁ~続編もあるかな…見てみよう」
そう思いながら本を受付の人に渡した。
「………はい。ありがとうございます。お預かり致します。」
返却の手続きをした後私は昨日の場所へ向かった。
すると昨日会った男性の姿があった。
「あっ、昨日の…」
「あぁ…こんにちは。もう読み終わったんですか?」
彼は私に気づくとにこっと笑って問いかけてきた。
「はい!とっても面白かったです!今日は続編が無いか見に来たんです!」
「あぁ…続編なら僕が今借りてるんですよ。すいません。」
彼は申しわけないとぼそっと言って苦笑いしていた。
「そうですか…じゃあ他の本探してみます。」
私はぺこっと頭を下げて他の本棚を見に行こうとした。
「待って!」
彼は私の手を掴みパッと離した。
「あぁ…ごめんなさい…つい…」
「い、いえ…あの…何か?」
彼は小説の続編がそろそろ読み終わるから明日もここに来て欲しいと私に言った。
「わかりました。じゃあ明日もきますね」
そう言って私は他の本棚へと向かった。 
「心臓のバクバクが止まらない…何なんだろう…昨日から変だな私…彼を見るとどうしても自分が自分でいられなくなる…緊張してしまう…」
顔は平然としているが心の中はめちゃくちゃになっていた。そして私の中に″彼にまた会いたい″と言う思いがあった。


次の日私はまた図書館へ行く。彼がいる文庫本の棚へ。
「あっ…こんにちは」
私の姿に気づくと彼は一礼して私のところへ寄ってくる。
「これ、続編です。どうぞ」
「ありがとうございます!楽しみだなぁ~」
「あの…」
彼は私をじっと見ていた。思わず私は目をそらしてしまった。
「な、なんで…しょうか…?」
顔を真っ赤にしながら彼を見直す。
「その本、中間から読んで欲しいです。3章辺りから。」
とにっこりと微笑んで言った。そして、その方が内容よく理解できると思うのでと続けた。
「わかりました!ありがとうございます。」
そう言って私は行こうとした。緊張がピークまで来ていて胸の鼓動が早くてとても早くなっていた。
「明日も…待ってます。」
そう彼は呟いて奥の方へ言ってしまった。


その日の夜、私は彼の言ったとおり中間から読むことにした。
パラパラとページをめくったその時、あるページに紙が挟まってた。開くとそこには押し花のしおりと一緒に綺麗な字でこんなことが書かれていた。

″僕は本を読むのが好きです。あなたは本を読むのが好きですか?
僕はもともと体が弱くてあまり外には出られません。
でも本が読みたくてお母さんにお願いして図書館まで送ってってもらっていつも本を読んでいます。
今までは本を読む為だけに図書館に行ってました。
でもあなたに会ってからそれは変わりました。
あなたに会いたい。あなたと少しでも話がしたい。そんな思いで図書館に行くようになりました。

一目惚れでした。

こんなか弱い僕ですが僕でよければ付き合って下さい。

どうしても声で伝えるのは無理だったので手紙で伝えてしまいました。
明日、いつもの場所でお返事待ってます。
p.s.
あなたをイメージして栞を作ってみました。よければ使ってください。
                                                                         高瀬 直也″

私の答えは決まっていた。
そして今までなんで変だったのかやっと分かった。この気持ちを早く伝えなきゃ。そう思って明日を待つことにした。


私は足早に図書館へ向かう。
彼に早く会いたい。早く気持ちを伝えたい。
そう思うとどうしても早足になってしまった。
文庫本の棚へ着く。彼がいた。
「おはようございます。本、読みました?」
彼は真剣な目で私を見る。
「はい。見ました。それと、お手紙も。栞も、あなたの気持ちも。」
彼は少し顔を赤らめる。
そして私は背伸びをして彼の耳元でこう呟いた。

「私もあなたが好きです。大好きです。…直也さん。」

彼は背伸びした私をぎゅっと抱きしめた。そして少し涙目でこう言った。
「ありがとう…」


涼しくなってきた8月下旬。文庫本を抱えた彼と一緒に私は図書館を歩き始めた………。
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