焼き肉ファイター

今居 勇気

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口より頭

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 焼き肉の香りがする。みんな楽しそうに焼き肉してるな。俺たちはこれから戦いが始まるのに……
なんて心の中で思いながら店員さんの食べ放題の説明を聞いていた。
「過度な食べ残しはご遠慮ください、それではごゆっくりお楽しみくださいね」
と言い店員が去っていったと同時に斎藤が、
「じゃあ、これから始めるぞ。焼き肉食べ放題スタートだ!!」
なんて少し大きめな声で言った。
「じゃあ、まず中村と俺どっちが先に注文するかじゃんけんな」と斎藤が言うと
「こっちもじゃんけんしますか」と中島の声が
そう今回は4人で1つのテーブル、いや網だとあまり食べれないんじゃないかと言うことになり2人で1つの網にしたのだ。店員さんの粋なはからいで席は隣同士にしてもらったのだ。
じゃんけんは俺と斎藤のグループは斎藤が勝ち、中島と橋本のグループは中島が勝った。
俺は斎藤にタブレットを渡した。
一体どれくらい頼んだのか非常に気になる。この戦いにおいてまず大事なのは初手である。
初手でどれくらい頼むかにより相手の精神面に攻撃を与えるのだ。そして初手ではまだ空腹感しかなく確実に全てを食べきることができ、後々にこの初めのアドバンテージが効いてくるのだ。
それをちゃんと斎藤は理解しての注文なのだろう。注文履歴を見ると大量の注文が、
まず超大盛りのごはんが目に飛び込んできた。そして、次に肉だ。牛カルビ、ハラミ、タンの3つを合わせて30人前もある。俺は反射的に大きな声で
「さすがに頼み過ぎだろ……」
「こんなもの余裕だぞ」
なんて斎藤が笑って言う。
この初手だけでもう勝ち目がないんじゃないかと俺含め3人が察してしまった。
そうこれだけ初手の注文はこの戦いにおいて大事なのだ。これでもうどれだけ注文したところで効力が無くなってしまう。初手の注文は斎藤の圧勝である。
しかし、人はなぜか他の人がやるとつい真似してしまう生き物で中島も橋本も斎藤に負けじと同じ注文をする。なぜかみんなドヤ顔で俺の方を見てくる。まるで
「お前も同じだけ食べないと奢り決定だぞ」と言わんばかりだ。
一見あたかも俺が不利に見えるがこの状況まさに計算通りの展開だ。思わず計算通りすぎて笑ってしまうほどに、そして俺はみんなにこう言う
「この食べ放題残したらもちろんポイントは無効で失格だよね?」
「もちろんだよ、食べ物は残したらダメだしね」
とすぐさま斎藤が言うと橋本も
「当然でしょ」と言い少し経ってから中島も「当たり前だよ」なんて少し弱気な声で言う。
ここで完全に俺の作戦通りになった。
この食べ放題において本当の食べ比べで勝てるかもしれない、しかしそれは確率としてはほんの少しだ。だからもう1つの勝てる条件を入れた。それが食べ残しだ。
普段だったら食べ残すということはあまりないだろうが今回は全くの別だ。そして大食いである斎藤もいる。みんな負けじと同じ注文をするだろうと予想をし、そしてこの条件を出す。
まさに完璧、そして少なからずみんなには精神的ダメージを与えることができただろう。
「じゃあ俺も早く頼もっかな」
と言い普段と変わらない塩キャベツと牛カルビを5人前を頼んだ。
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