無駄

澄川蛍光(すみかわほたる)

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世界は無駄が溢れている。
税金を食いつぶす無能な政治家、利益を生むために一定の期間で壊れるような商品を作る企業、他人の人生を変えてしまうようなビジネスを行う週刊誌、などなど。
実際はそんなに無駄ではないのかもしれない。政治家も実は皆国民のために頑張っていて、企業も最大限の努力をしてよりよい商品を作ることを考えている企業ばかりなのかもしれない。そもそも俺がいろいろなことを無駄だと考えるようになった理由の一つはテレビでそういうことを報じていたからだ。もし俺を情報に振り回された愚か者と呼ぶならそれは偏った報道の仕方をするマスメディア、これに原因があるのではないだろうか。これも俺からすると大きな無駄だ。




俺は中学三年生のとき受験戦争に負けた。だがその時は特別悲しくもなかった。別に第一志望校に思い入れがあったわけではない。なんとなく行こうと思っていただけだ。高校一年の時、クラスメイトに恵まれ友達もそこそこいて楽しい学校生活を送っていた。
俺は小さい頃から親から、中学校、高校、大学に進むに連れて自分と似た人間が集まってきて楽しいから頑張って勉強に励めと教育されてきた。
高校一年のクラスはまさしくそうだった。
だが二学期に入った頃から気づき始める。
隣のクラスに教科書を借りに行った時だ。教室に入ると少し変な雰囲気を感じた。静まりかっているとかいじめが起きているとかそんなことではない。
ただ世界が違うのだ。休み時間をプロレスごっこや鬼ごっこをして潰している。友達とお喋りを楽しんでいるようなやつも不必要なくらいに大きな声で喋っている。
俺の高校は進学校だと聞いていたのにガッカリだった。
俺の親は他の人よりも少し教育熱心だったから校外模試を受けさせられることになった。丸一日使って帰るのは10時過ぎ。電車に乗り最寄り駅で降りるとそこには中学校が同じだった人がいた。仮にMくんと呼ぼう。Mくんは中学時代から俗に言う悪ガキだった。Mくんはその駅で何人かで、たむろして煙草を吸っていた。すぐ隣にはイカついバイクがいくつか並んでいる。そして通る電車帰りの人たちを睨みつけていた。
俺は教室で他人のことを考えずに騒ぎ回るような奴らやMくんを見てこう思った。
こいつらは無駄だな。
だが勘違いしないで欲しいのは無駄だからといって消さなくてはという変な使命感に囚われたわけではない。
こんな無駄な人間たちは多くの人たちを見下している。自分が何か社会のために献身しているわけでもないのに、自分は自分に対して下手に出るほかの人間よりも偉いと勘違いしている。
問題児たちにその事を注意するような人はいない。当たり前だ。
そんなことをすれば何を言っているんだと怒り出し、暴言、暴力に任せてその人間を屈伏させる。
ただ俺は見下されたくなかった。俺がそいつらの上に立ちたかった。
どうしたら上に立てるのか考えた。
身体を鍛える、有効だが不十分だ。


幾度考えた挙句出した答えは権力だった。


だが多くの人はこう考えるだろう。
そんな些細なことを無駄と考えたり安易に権力を得たいと考えるなんて、傲慢で幼稚で、それこそそこら辺にいるクズのような人間と何も変わらないのではないか、と。
確かに俺は傲慢だ。強欲でもある。そして考え方、言動は幼稚かもしれない。
だが俺はクズではない。無駄ではない。
それを今から証明する。
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